強力な紫外線や極低温などの成層圏の極限環境に対応し、HAPSの長期運用を可能に
  ソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川 潤一、以下 ソフトバンク)とTOPPANホールディングス株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長COO:大矢 諭、以下 TOPPANホールディングス)は、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下 HAPS)の機体に使用される超軽量・高耐久性の翼用膜材と、成層圏環境を再現した評価手法を共同開発しました。今後、今回開発した翼用膜材の試験製造を進め、ソフトバンクが2029年以降に商用サービスでの活用を予定しているHTA型(※1)のHAPSで使用する予定です。
 
  今回2社が共同開発したHAPS向けの翼用膜材と、成層圏環境の再現評価手法は、ソフトバンクのHAPSにおける知見と、TOPPANホールディングスがこれまで培ってきた包装材向けフィルムの高機能化技術や、建装材のオリジナル耐候評価技術などを融合させて実現したものです。従来の翼用膜材で課題となっていた、成層圏における強い紫外線の照射や-100℃近くにも達する極低温環境での強度の低下を抑制し、HAPSの長期運用を可能にします。
翼用膜材の構造イメージ
 
■開発の背景
  HAPSは「空飛ぶ基地局」と呼ばれる、成層圏を滞空する無人航空機などの機体から通信サービスを提供する技術です。通信基地局を搭載した機体を長期間飛行させることで、大規模災害時における通信の復旧や、山岳部や離島といった既存の通信ネットワークの電波が届きにくい地域でのサービス提供が予定されています。HAPSは高度約20kmの成層圏から通信サービスを提供するため、地上の基地局よりもカバーエリアが広く、衛星通信よりも高速・大容量、低遅延の通信を提供できるという特長があります。 しかし、成層圏は地上と比較にならないほどの強い紫外線や高濃度オゾン、-100℃近くにも達する極低温にさらされる極限環境であり、従来の汎用フィルムなどでは強度が低下してしまうことが大きな課題でした。そこで、ソフトバンクとTOPPANホールディングスは、過酷な成層圏の環境にも対応した超軽量・高耐久性の翼用膜材と、その評価手法を新たに共同開発しました。
 
 
■翼用膜材と評価手法の特長
1. 耐衝撃性の高い特殊樹脂と独自構造により軽量化と安全性を両立
  TOPPANホールディングスが包装材で培ってきたコンバーティング技術(※2)を活用し、極低温環境での衝撃に強い特殊樹脂に独自素材を緻密に積層することで、膜材の構造を最適化しました。重量を従来の汎用フィルムの同等以下に抑えながら、万が一膜材に傷が生じても荷重下で裂けが広がらない機能性を実現し、HAPSの機体の軽量化と安全性を両立します。
 
2. 成層圏の過酷な環境に対応する高い耐久性
  ソフトバンクは、成層圏でのHAPSの飛行から得られた、温度や短波長紫外線(UV-C)の曝露条件といった実環境のデータを提供するとともに、軽量化をはじめとする翼用膜材の性能要件を定義しました。TOPPANホールディングスは、こうした実環境データを基に、建装材の技術を応用することで、成層圏の過酷な環境に対応する高耐久設計を実現しました。成層圏特有の極低温(-50~-95℃程度)から直射日光による高温(100℃前後)までの幅広い温度変化においても性質が変わらず、地上よりも強力な短波長紫外線や高濃度オゾン(10~20ppm、1ppm=100万分の1)に対する耐候性も備えています。これにより、長期にわたるHAPSの運用が可能です。
 
3. 成層圏環境を再現した評価手法による信頼性の担保
  TOPPANホールディングスは、包装材のフィルム評価技術と建装材の耐候加速試験に関する知見を生かし、成層圏環境を再現した極低温環境での膜材評価や、短波長紫外線とオゾンの同時暴露が可能な試験環境を新たに構築しました。この環境を活用することで、成層圏特有の劣化メカニズムを事前に詳細に把握し、製品設計に反映させることが可能となります。その結果、従来の試験では難しかった、より高度で信頼性の高い評価を実現しています。
 
 
■各社の役割
・ソフトバンク
  膜材の適性評価やHAPSの運用に関する知見の提供、HAPSの機体での活用推進および実用化
・TOPPANホールディングス
  機体要件に適合する膜材の開発・提供、成層圏環境を想定した評価手法の提案
 
 
■今後の展開
  今後両社は、2027年度までに今回開発した翼用膜材のさらなる軽量化と強度の向上を進め、成層圏での耐久性能を検証するとともに、2028年度までに安定した品質と十分な供給量を確保できる量産技術の確立を目指します。その後、性能試験の結果を踏まえてさらに必要な機能を付加し、ソフトバンクが2029年以降に商用サービスでの活用を予定しているHTA型のHAPSで使用する予定です。将来的には、高い耐久性が求められる他の分野にも応用していく計画です。
 
 
※1 HTA(Heavier Than Air)型とは、飛行機などのように揚力を持って滞空するHAPSのこと。
※2 コンバーティング技術とは、フィルムなどの素材を、印刷や貼り合わせなどの加工によって高度な機能を付加し、最終製品に仕立てる技術のこと。
 
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以  上