東京大学大学院農学生命科学研究科と八ヶ岳農業大学校が連携協定を締結 ~データ駆動型農業の実証と次世代農業人材の育成を推進~
「テクノロジー」「サイエンス」「マーケティング」を基軸に農業の課題解決に貢献
東京大学大学院農学生命科学研究科(所在地:東京都文京区/研究科長・学部長:東原 和成)と八ヶ岳農業大学校(所在地:長野県諏訪郡原村/理事長:南 壮一郎)は、日本における農業の発展および次世代を担う農業者の育成への寄与を目的として、2026年4月8日に連携協定を締結しました。日本の農業は、気候変動、資材価格の高騰、サプライチェーンの変化など、さまざまな環境変化の中にあります。こうした状況を踏まえ、従来の枠組みにとらわれない新たな生産・経営のあり方や人材育成のあり方を模索する必要性が高まっています。本協定は、そのような背景のもとで締結されたものです。
■「データ駆動型」を軸に、農業における知の創造と社会実装の両立を目指す
東京大学大学院農学生命科学研究科では、統計遺伝学、データ科学、フェノミクスの融合を基盤として、ゲノム情報、AI、環境データ等を統合的に活用したデータ駆動型の農業および品種改良に関する研究を進めています(注1)。特に、圃場における作物の生育を高精度に計測・解析するフィールドフェノミクスとデータ科学を活用したモデル化の取り組みを通じて、栽培と品種改良の高度化を目指しています。
 
一方、八ヶ岳農業大学校では、広大なキャンパスを活用し、生産から商品企画、流通に至るまでの実践的な農業教育を展開しています。昨年4月に就任した丸山侑佑校長の下、AIやセンシングデータを活用して生産管理や意思決定をするなど、テクノロジーとサイエンス、マーケティングを基軸とした農業の高度化に取り組んでいます。
 
本連携により、八ヶ岳農業大学校の実践の場と東京大学の学術的知見を結びつけ、知の創造と社会実装の両立を図ります。両者は、データ駆動型農業の実証的な取り組みを進めるとともに、次世代を担う農業人材の育成に取り組みます。
 
(注1)データ駆動型システム:工程の高度化に向けて、1.データの収集、2.蓄積、3.解析およびモデル化、4.解析結果に基づく意思決定、という一連のプロセスを循環的に実行する方法。
 
連携協定概要             
両者は、日本における農業の発展及び次世代を担う農業者の育成への寄与を目的に、以下の事項について連携・協力します。
1.
農業生産及び農業経営の高度化・持続的発展に資する共同研究に関すること
2.
フィールドワーク、実習、調査等を通じた学生・研修生の教育及び相互協力に関すること
3.
農業の高付加価値化、農産物・農業技術の価値創出及び社会実装に関する手法の検討に関すること
4.
前各号に関連する人材育成、情報交換及び成果発信に関すること
5.
その他、両者が協議し、必要と認める事項
■想定される具体的な連携例
本連携協定に基づき、以下のような取り組みを進める予定です。
 
・スマート農業に関する共同研究(例:バレイショ栽培のスマート化)
データ活用やセンシング技術等を用いた農業生産の高度化に向け、八ヶ岳地域の圃場を活用した共同研究を検討します。
 
・八ヶ岳農業大学校をフィールドとした全学体験ゼミナールの実施
東京大学大学院農学生命科学研究科の学生(希望者)を対象に、八ヶ岳農業大学校をフィールドとした全学体験ゼミナールを実施し、学生は圃場視察や農業体験、実践者との対話などを通じて、農業の現場と課題を学びます。本年7月に初回(2泊3日)を実施。
 
・農業アントレプレナーシップに関する講演・サロンの開催
事業開発や経営の知見を有する八ヶ岳農業大学校の丸山校長を講師とし、東京大学大学院農学生命科学研究科の学生(学部生・大学院生)を対象に、農業アントレプレナーに関する講演及びサロン形式の意見交換を行います。
コメント                 
東京大学 大学院農学生命科学研究科 教授(生物測定学)
岩田 洋佳(いわた ひろよし)コメント
「本連携は、教育と研究の双方において、理論と実践を往還する取り組みを進める上で重要な機会になると考えています。農業分野における社会実装や新たな価値創出を担う人材の育成には、現場に根ざした課題認識と、それを支える学術的知見の双方が不可欠です。本研究科では、データ駆動型農業および品種改良の研究を進めていますが、その成果を社会に実装していくためには、生産現場に近い環境での実証が重要となります。八ヶ岳農業大学校との連携により、実践の場と学術の知見を結びつけることで、教育と研究を一体的に発展させ、次世代の農業を担う人材の育成と持続的な農業の実現に資する取り組みへとつなげていきたいと考えています。」
プロフィール:1995年 東京大学農学部卒業。2000年 同大学院農学生命科学研究科博士課程修了。同年、農林水産省農業研究センター(現:農研機構)研究員を経て、2012年 東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授に着任。2023年 同教授に就任。専門は生物統計学、植物育種学。ゲノム情報やAI、環境データを活用し、作物の育種や栽培を効率化する「データ駆動型システム」の構築において、多角的な研究・開発を牽引している。
 
八ヶ岳農業大学校 校長 兼 専務理事 丸山 侑佑(まるやま ゆうすけ) コメント
「日本の農業は現在、従事者の高齢化や食料自給率の低下など深刻な課題に直面しています。さらに気候変動や資材価格の高騰、サプライチェーンの多様化といった環境変化も重なる中、伝統や文化を継承しつつも経験や勘に頼りがちであったこれまでの農業の実践を新たな手法へとアップデートしていく必要があります。当校では、私の上場IT企業現役経営者としての経験を活かし、本協定の基盤となる『テクノロジー』『サイエンス』『マーケティング』を重視した農業の高度化に挑戦しています。 本協定により、東京大学の高度な学術的知見と優秀な学生の頭脳や柔軟な発想が実践の場に活かされることで、未経験でも収益を上げられる仕組みを構築し、自らの手で農業を変えられると実感する若き農業従事者やアントレプレナーが数多く誕生することを期待します。」
プロフィール:2009年、組織人事コンサルティング会社で外資系企業等への人材開発支援に従事した後、KLab株式会社での人事部門の立ち上げに従事。2013 年、ポート株式会社創業期に取締役 COO として参画。2016 年より取締役副社長に就任し、2018 年に 32 歳で財務責任者として東証マザーズと福証 Q-Board に上場。現在は CGO(Chief Governance Officer)、及び、取締役会議長、指名・報酬委員長等に就任し、コーポレートガバナンスや内部統制の強化を担う。著書は『AI 時代のベンチャーガバナンス』。2024年 6 月、八ヶ岳農業大学校(公益財団法人農村更生協会が運営)理事、同年 10 月、専務理事に就任。2025 年4 月、八ヶ岳農業大学校校長に就任。
 
【東京大学農学部について】https://www.a.u-tokyo.ac.jp/
東京大学農学部は、150年前に、農学校の前身となる農事修学場として設置され、イギリスの農学教育をモデルに、農学・獣医学・農藝化学でスタートさせました。それ以降、林学、水産、土木といった自然科学の研究を取り込み、さらに食糧生産・消費システムをめぐる人文社会科学の研究を融合させて、私たちの生命、生活、そして社会を支える総合学問へと発展させてきました。近年は、国際、生態、健康、情報といった基軸をいち早く取り込み、人類社会が直面する地球規模の課題に取り組む学問分野として拡充展開しました。 この農学の新潮流に追従呼応するかのように、SDGs、One Health、Nature positive、Well-being、DX/GXなどの社会課題が提案され、日本では150年前に生まれて一次産業を支える役割を担ってきた農学が、現在、その単なる延長ではない重要なミッションを課せられています。
【八ヶ岳農業大学校について】 https://yatsunou.jp/
1938年開校。八ヶ岳の麓、標高1,300mに位置する、総面積267ヘクタール(東京ドームの敷地面積の60倍以上)の広大な農場のキャンパスで、実習生が実践的な農業を学ぶ(畑作、花卉、酪農、養鶏など耕畜両面)。また毎年1万人近い小中高生に農業体験学習を提供。人気のプログラムを一般向けにも提供。2025年、10ヘクタール100万株の広大な花畑「八ヶ岳ガーデンプロジェクト」を開始。校内には直売所も設置され、当校の生乳100%の牛乳やその牛乳を使用したソフトクリーム、アイスクリームなどの乳製品、平飼いの鶏が産んだ卵、当校の実習生が育てた高原野菜や花々、地元の特産品などを販売。
当校の最新情報:https://www.instagram.com/yatsunou.since1938/