AKIDSラボが協力する調査データをもとに、ASD (Autism Spectrum Disorder:自閉スペクトラム症)児の行動上の問題への運動介入効果を2025ACSMで発表しました
AKIDSラボおよび関係機関の協力のもと、2025年5月に米国で開催されたAmerican College of Sports Medicine Annual Meeting(2025 ACSM)において、ASD児に対するサーキットトレーニングの効果をテーマにした研究を発表しました(ePoster形式)。本発表はスポーツ医学・運動科学の世界最大級の学術団体であるACSMに採択されたもので、ASD児における運動介入研究を日本から発信する重要な機会となりました。
 
発表演題 
“Effects Of Circuit Training On Externalizing Behaviors In Children With Autism Spectrum Disorder”
(自閉スペクトラム症児におけるサーキットトレーニングが外在化行動に及ぼす影響)
発表者:村上 友香理(関西医科大学健康科学センター/AKIDSラボ)
共同研究者:
・谷田 光希(AKIDSラボ)
・棟近 孝之(医療法人和合会 和合病院)
・黒瀬 聖司(関西医科大学)
・木村 穣(関西医科大学)
研究背景 
ASD児は、 
攻撃的行動
かんしゃく
いらだち
など、いわゆる外在化行動(Externalizing Behaviors)を示すことが多く、日常生活や社会参加に困難が生じる場合があります。
また、ASD児は不安や抑うつなど複数の併存状態を抱えやすいことも知られており、より包括的な支援方法の開発が求められています。
研究目的 
本研究では、週1回・45分のサーキットトレーニングを6か月間継続することで、ASD児の外在化行動が改善するかどうかを検証しました。
 
研究方法 
対象:4~10歳の男児28名
 ・ASD群:14名
 ・非ASD群:14名
 
介入内容:
 平均台、ミニハードル、トランポリンなどを組み合わせたサーキットトレーニング
 → 子ども一人ひとりの好みや特性に合わせて調整
 
測定:Strengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)を介入前後に保護者が回答し、外在化行動を評価
 
主な結果 
● ASD児で「行動上の問題」が有意に改善 
ASD群では、外在化行動ののスコアが
中央値 4.0 → 2.5(p = 0.012)へと有意に低下。
 
また、非ASD群に比べて、ASD群の改善幅が明確に大きいことが示されました
(-1.0 ± 1.2 vs. 0.0 ± 1.2、p = 0.017)。
 
 ● 改善の要因として考えられる点 
個別特性に合わせた運動選択 
成功体験が得られる構造化された運動内容 
ポジティブな声掛けや成功経験 
適度な身体活動による心身の調整
 
さらに、サーキットトレーニングの多様で動的な運動要素が、
行動抑制やプランニングなどの実行機能の発達を促す可能性も示唆されました。
 
研究の意義 
本研究は、 
ASD児の外在化行動に対して運動介入が寄与する可能性 
個別最適化された運動プログラムの重要性 
運動と行動・実行機能を結びつけた新たな支援モデルの可能性 
を示すもので、運動療育の科学的根拠づくりに寄与する成果となりました。
 
今後の展望 
介入頻度や内容のさらなる最適化 
他の行動指標や社会性との関連検証 
長期追跡研究の実施 
・教育機関・医療機関との共同研究強化 
など、子どもたちのより豊かな発達とQOL向上を目指した研究を進めてまいります。