株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年5月5日、自社ウェブサイトに小林製薬紅麹事件 「青カビが工場に混入した」という説の矛盾を検証する(後編)
─ メーカーは調査前から当該菌株を保有していた ─
─ 千葉大保存株との一致・DNA同一性・株の出所という三重の疑問 ─
を公開した。

 

▼対象記事URL

 

https://kunsei.com/archives/816

 

令和8年5月 株式会社薫製倶楽部

「我々紅麹業界に何が起こったか」

㊾ 「青カビが工場に混入した」という説の矛盾を検証する(後編)

─ メーカーは調査前から当該菌株を保有していた ─

─ 千葉大保存株との一致・DNA同一性・株の出所という三重の疑問 ─

 

【概要】

 前編では工場環境・季節条件・調査時期・酸性条件という四つの観点から「青カビ汚染説」の矛盾を検討した。後編では、カビ株の出所に関する決定的な問題を取り上げる。

 吉成文献(Yoshinari et al., Proc. Jpn. Acad. Ser. B 101, 2025)に記載された事実を精査すると、工場採取のP. adametzioidesの同定・産生能確認・系統解析のすべてに、小林製薬が提供した菌株が使用されていたことが判明する。さらに、千葉大学が2022年にヒト肺から採取・登録した保存株(IM62222)が工場採取株と系統的に一致するという事実は、「環境への偶発的混入」という説明と著しく矛盾する。

 

 

1 前編の振り返り

 前編(㊽)では、NIHS吉成文献の記述に基づき以下の四つの矛盾を示した。

•    矛盾①(環境):P. adametzioidesは果実腐敗菌であり、乾燥した食品工場環境への大量混入は不自然。

•    矛盾②(実験):吉成文献自身のコカルチャー実験が、実際の製造条件(酸性)では同菌は増殖できないと示している。

•    矛盾③(調査時期):大阪工場は閉鎖から4か月以上経過した後にしか調査できておらず、稼働時の状態を反映しない。

•    矛盾④(季節):問題製造期間(2023年2〜8月)のうち冬季の大量増殖は、果実腐敗菌の生態として微生物学的に説明困難。

 

 後編では、これらに加えてさらに根本的な疑問、すなわち「そもそもその青カビはどこから来たのか」を検討する。

 

2 矛盾⑤:参照株は小林製薬が提供した──「調査された者が検証材料を提供した」

 吉成文献のMaterials and Methods(p.303〜304)には、以下の事実が記載されている。

菌株

出所(吉成文献の記載)

本件調査における役割

M. pilosus NBRC 4520 小林製薬より受領(p.304) コカルチャー実験で使用した紅麹菌(モナスカス菌)本体
E-6-2 小林製薬より受領(p.304) 大阪工場で単離(Fig.5) 工場採取菌株の種同定に使用した参照株。Table 2では拭き取り検体由来として分類
11-1 小林製薬より提供(p.304、Table 2脚注*) 和歌山工場 培養タンクで単離(Fig.5) Table 2脚注:「This strain was provided by the RYR manufacturer」と明記。コカルチャー実験・代謝産物分析に使用
IFM 68223 千葉大学医真菌研究センターから購入(p.304) Fig.5では「lung specimen in Japan」と記載 系統解析で工場採取株と同一クレードに属することが示された保存株

 

 

【Chain of Custodyの欠落】

 吉成文献p.304(2.1 Chemicals and strains)には次のように明記されている。「M. pilosus NBRC 4520, Penicillium adametzioides (strains 11-1, and E-6-2) and RYR supplement tablets were received from Kobayashi Pharmaceutical Co., Ltd.」

 すなわち、コカルチャー実験に使用した紅麹菌(M. pilosus NBRC 4520)本体も、青カビの参照株(E-6-2・11-1)も、紅麹サプリメントタブレットも、すべて小林製薬から提供を受けたものである。さらにTable 2の脚注には、11-1株について「This strain was provided by the RYR manufacturer」と明示されている。

 工場採取株がP. adametzioidesであるという種の同定は、小林製薬が自ら単離・提供した参照株(E-6-2)との比較で行われた。プベルル酸産生能の確認実験も同社提供の11-1株を使用した。「調査対象者が提供した素材で、調査対象者の工場の菌を同定した」という論理的循環が生じており、調査の独立性・客観性が根本的に問われる。

 

 

3 矛盾⑥:千葉大学保存株(IM62222)との一致が意味すること

 吉成文献の系統解析(Figure 5)では、大阪工場・和歌山工場から採取された株と、千葉大学医真菌研究センターの保存株IFM 68223が同一クレードに属することが示されている。IFM 68223はFig.5の系統樹に「lung specimen in Japan」と記載されたヒト肺由来の研究株であり、吉成文献p.304に「purchased from Medical Mycology Research Center of Chiba University」と明記されている。

【IFM 68223の登録情報(吉成文献p.304・Fig.5より)】

•    購入先:千葉大学医真菌研究センター(Medical Mycology Research Center of Chiba University)

•    株番号:IFM 68223

•    採取源:Fig.5の系統樹に「lung specimen in Japan」と記載(本邦のヒト肺由来検体)

•    代謝産物:PA、aspergillusol A、lapatin A、glyantrypineを産生することが確認されている(p.313)

 

 

【食品製造の常識から見た疑問】

 食品・発酵の世界では、使用する菌株の出所管理は製造管理の根幹である。味噌・日本酒の麹菌も、全国に数社しかない「種麹屋」から毎年購入し、自社での無限継代は行わない。変異・劣化・コンタミのリスクを排除するためである。

 ところが、千葉大学の研究用株IFM 68223(ヒト肺由来)が、食品工場の設備に「環境菌」として偶発的に存在したとは、微生物学的に極めて考えにくい。環境中に広く存在する「環境菌」が、医真菌研究機関でヒト肺から分離・登録された特定の研究株と系統的に同一クレードに属するためには、何らかの経路でその株が工場に持ち込まれたと考える方が自然である。

 小林製薬がプベルル酸の研究を事前に実施していたことは、同社の内部資料・動物実験記録から明らかになっている(㊽以前のシリーズ参照)。千葉大学からIFM 68223を購入し、自社で培養維持していた可能性を否定できない。一度入手した菌株は適切な培地と温度管理があれば継代培養・長期保存が可能であり、「在庫なし」という登録情報は既購入者の保有を排除しない。

 

 

4 矛盾⑦:「二工場同時発見」の非説明

【吉成文献が示す事実】

•    大阪工場(E-6-2株):閉鎖後4か月以上経過した時点で1株のみ発見

•    和歌山工場(A・B・C株):2024年4月15日の拭き取り調査で複数株発見

•    両工場の採取株は系統解析において同一クレードに属する(吉成文献 Figure 3)

 

 

 「偶発的な環境汚染」であれば、離れた二つの工場に同じ特定株が独立して混入したことを説明しなければならない。吉成文献はこの点について「汚染経路の特定は困難(it is difficult to determine the contamination route)」と述べるにとどまり、説明を回避している。

 しかし、大阪工場から和歌山工場への製造設備移転(2023年12月)という事実を考慮すれば、移転した設備に菌株が付着していた可能性も一つの仮説として考えられる。いずれにせよ、「それぞれの工場に独立して環境から偶発的に混入した」という説明は、系統的同一性という事実と両立しない。

 

5 構造的利益相反──調査・論文・資金・菌株の全てが集中している

【本件調査における利益相反の構造】

項目 内容
調査機関 NIHS(国立医薬品食品衛生研究所)
研究助成 厚労省科研費(JPMH22KA2001)
論文掲載誌 日本学士院紀要(2025年)
参照株・菌株提供者 小林製薬(E-6-2・11-1)
プベルル酸標準品提供者 小林製薬(㊽以前シリーズ参照)
論文の利益相反申告 「なし」と記載(None to declare)

 

 

 

 調査・論文執筆・資金提供・菌株・標準品の提供が、調査対象企業(小林製薬)と規制当局(厚労省・NIHS)に集中している。これは科学的独立性の根幹に関わる問題であり、国際的な科学論文倫理の観点からも申告すべき利益相反が存在したと言わざるを得ない。

 

6 前編・後編のまとめ──七つの矛盾

【七つの矛盾(前編①〜④、後編⑤〜⑦)】

•    矛盾①(環境):P. adametzioidesは高水分・果実腐敗菌。乾燥食品工場への偶発大量混入は不自然。

•    矛盾②(実験):吉成文献自身が、実製造条件(酸性)では増殖不能と示している。

•    矛盾③(調査時期):大阪工場は閉鎖から4か月以上後の状態しか調査できず、稼働時の状態を証明しない。

•    矛盾④(季節):冬季(2〜3月)の大量増殖は微生物学的に説明困難。

•    矛盾⑤(菌株出所):紅麹菌(M. pilosus NBRC 4520)本体・青カビ参照株(E-6-2・11-1)・サプリタブレットの全てが小林製薬から提供。Table 2脚注も11-1について明示。Chain of custodyが欠落。

•    矛盾⑥(千葉大一致):ヒト肺由来研究株IFM 68223(千葉大学医真菌研究センター)との系統的同一クレードは、環境からの偶発混入では説明困難。

•    矛盾⑦(二工場同時):離れた二工場から同一系統株が発見された事実の説明が回避されている。

 これらを総合すると、当社代表は食品製造現場の経験と薬剤師としての科学的知見から、この「青カビ汚染」が単純な偶発的環境汚染ではなく、何らかの人為的関与があった可能性を否定できないと判断する。プベルル酸が原因物質でないことがほぼ確実な現在、「青カビ+プベルル酸」というシナリオ全体の再検証が公益上不可欠である。

 

 

7 当社の立場

 当社(株式会社薫製倶楽部)は、プベルル酸陰性であった自社製品(品番5P-D全37ロット)にもかかわらず、2024年3月28日に厚労省により225社の一斉実名公表に含まれた。「青カビがプベルル酸を産生した」という説は、この公表の科学的根拠とされてきた。

 本プレスリリースは、吉成文献を一次資料とした科学的・論理的な疑義の提示であり、当社の見解である。

 

【薫製倶楽部プレスリリース・シリーズ一覧】

① 東京科学大学のプベルル酸研究に科学的疑義申立(2026/3/10)

② 2024年紅麹事件、大阪市保健所が収去していないことを確認(2026/3/12)

③〜⑤ プベルル酸の根拠不明 研究解説1〜3(2026/3/13〜17)

⑥ プベルル酸の使用根拠について主要報道機関10社へ疑義照会(2026/3/18)

⑦ 刑事告発状の提出について(2026/3/19)

⑧〜⑩ 動物実験を実施したのは小林製薬だった(前編・後編)(2026/3/19〜23)

⑪ 小林製薬公表資料に基づくPK試験データの整理(2026/3/24)

⑫ 国立医薬品食品衛生研究所長を刑事告発(2026/3/25)

⑬ コカ・コーラが示す食薬区分の本質(2026/3/27)

⑭ 厚労省健康・生活衛生局長を刑事告発(2026/3/30)

⑮ 決定的証拠 小林製薬の標準品で小林製薬の検体を試験した(2026/3/31)

⑯〜⑳ (2026/4/1〜4/3)

㉑〜㉝ (2026/4/6〜4/20)

㉞〜㊵ (2026/4/21〜4/27)

㊶ プベルル酸の行政記録なし 5機関文書不存在(2026/4/28)

㊷ 衆参両院議長ほか国会議員5名に陳情書を送付(2026/4/28)

㊸ 朝日新聞報道への見解─モナコリンK曝露量を測定すべき(2026/4/29)

㊹ 「モナコリンK=スタチン」と書いたのは小林製薬自身である(2026/5/1)

㊺ 厚労省が公文書で自らの公表行為を否定した(2026/5/1)

㊻ 主要報道機関10社に疑義照会を送付(2026/5/1)

㊼ 動物実験施設の開示を求めた行政不服審査請求が却下された(2026/5/1)

㊽ 「青カビが工場に混入した」という説の矛盾を検証する(前編)(2026/5/)

㊽ 「青カビが工場に混入した」という説の矛盾を検証する(前編)(2026/5/)

【㊾】 「青カビが工場に混入した」という説の矛盾を検証する(後編)(2026/5/)

 

【会社概要】

会社名 株式会社薫製倶楽部(倉敷花桜ハム)
代表者 代表取締役・薬剤師 森 雅昭
所在地 〒701-0303 岡山県都窪郡早島町前潟611-1
TEL 086-483-0602
事業内容 薫製食品の製造・販売(倉敷ソーセージ等)
ウェブサイト https://kunsei.com
お問い合わせ sales@kunsei.co.jp