スリア州にある病院で、予防接種を受ける5歳のホセちゃん。電力の確保が難しい地域でも予防接種を可能にするため、ユニセフは太陽光発電を活用した冷蔵設備の導入を支援している(ベネズエラ、2025年10月7日撮影) (C) UNICEF/UNI886970/Pocaterra
【2026年4月24日 ジュネーブ/ニューヨーク発】
 
<本信のハイライト>
2023年の世界予防接種週間に開始された、予防接種の遅れを取り戻す取り組み「The Big Catch-Up」では、36カ国で推計約1,830万人の子どもに、1億回分を超えるワクチンを届けてきました。
そのうち約1,230万人は、これまで一度も予防接種を受けたことのない「ゼロ投与」の子どもであり、1,500万人ははしかワクチンを一度も接種したことがない子どもでした。
この取り組みは2026年3月に終了、2,100万人の子どもに遅れを取り戻す予防接種を行うという目標は達成される見込みです。しかしながら、依然として多くの乳幼児が毎年の定期予防接種を通じた命を守るワクチンの接種機会を逃している、とユニセフ(国連児童基金)などは警鐘を鳴らしています。
 
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新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)を主な要因とする子どもの予防接種率の低下に対処するため、複数年・多国間にわたって展開されてきた歴史的な取り組み「The Big Catch-Up」(ビッグ・キャッチアップ、BCU)により、36カ国の1~5歳の子ども推計約1,830万人に、1億回分を超える命を守るワクチンが届けられ、深刻な免疫格差の縮小につながったと、世界予防接種週間の開始にあたり、ユニセフ、Gaviワクチンアライアンス (Gavi)、世界保健機関(WHO)が発表しました。
生まれて初めての予防接種を受ける1歳のエルビスちゃん。ユニセフは、戸別訪問による予防接種を支援している(ウガンダ、2025年11月27日撮影) (C) UNICEF/UNI913005/Watsemba
2023年から2025年にかけてBCUの支援対象となった1,830万人の子どものうち、推定1,230万人は一度もワクチンを接種したことがない「ゼロ投与(未接種)」の子どもであり、1,500万人ははしかワクチンを一度も受けたことがありませんでした。また、BCUは、ポリオ根絶に向けた不可欠な取り組みとして、未接種および接種未完了の子どもたちに2,300万回分の不活化ポリオワクチン(IPV)を届けました。BCUの実施は2026年3月31日に終了しました。最終的なデータはまだ集計中ですが、この世界的な取り組みは、少なくとも2,100万人の未接種および接種未完了の子どもたちに予防接種を行うという目標を達成する見込みです。
しかし3機関は、キャッチアップ(遅れを取り戻す)接種が予防接種の格差を埋めるための重要な戦略である一方で、定期予防接種プログラムの適用範囲の拡大こそが、子どもたちを保護し、ワクチンで予防可能な疾病の集団感染を防ぐための最も効果的かつ持続可能な方法であり続ける、と警鐘を鳴らしています。
 
ワクチン公平性のギャップを埋める
パンデミックからの回復にとどまらず、BCUは予防接種における公平性の格差を縮小することに重点を置いてきました。毎年、何百万人もの子どもが、1歳までに受けるべき必須の予防接種を受けられていません。その大半は、脆弱な状況にある地域、紛争の影響を受けている地域、あるいは保健医療サービスが行き届いていない地域に住んでおり、その後成長の過程で、接種の遅れが取り戻されることはありません。
ガザで行われた予防接種キャンペーンで、経口ポリオワクチン接種を受ける赤ちゃん(パレスチナ、2025年2月23日撮影) (C) UNICEF/UNI751080/Nateel
現在、アフリカとアジアの36のBCU参加国には世界全体の未接種の子どもの60%が集中しています。パンデミックに伴う予防接種プログラムの中断はこの問題をさらに深刻化させ、もともと慢性的に接種機会を逃していた子どもたちに加え、何百万人もの新たなゼロ投与の子どもを生み出しました。この問題に対処するため、BCUでは乳児期の予防接種にとどまらず、予防接種機会を逃して脆弱な状態にある1歳から5歳までの年長の子どもたちの集団にも、初めて体系的に定期予防接種システムを活用し、本格的に取り組みました。
 
BCUは、年齢資格に関する政策の見直しを含め、こうした年長児を特定し、検査し、彼らに接種を行い、そして接種率のモニタリングを行うための持続的な仕組みづくりをしました。各国はまた、定期的な保健医療ケアの一環として、接種を受け損ねた子どもの特定、検査、接種を行えるよう保健スタッフを指導・訓練するとともに、コミュニティや市民社会と連携し、キャッチアップ接種の取り組みを支援しました。これまで接種を受け損ねていた何百万人もの子どもとそのコミュニティへ予防接種の対象を拡大し、制度面での改善に投資することで、BCUは、こうした人々や同様の状況にある人々が、将来にわたってきわめて重要な保健・予防接種サービスを継続して受けられるよう、各国が取り組みやすい環境を整えました。
MR(はしか・風疹混合)ワクチンの接種を受ける子どもたち(ナイジェリア、2026年2月4日撮影) (C) UNICEF/UNI962655/Tiamiyu
参加国のうち、12カ国(ブルキナファソ、朝鮮民主主義人民共和国、エチオピア、ケニア、マダガスカル、モーリタニア、ニジェール、パキスタン、ソマリア、トーゴ、タンザニア、ザンビア)は、これまでジフテリア、破傷風、百日咳の3種混合ワクチンの1回目(DTP1)の接種を受け損ねていた5歳未満のゼロ投与の子どもたちのうち、60%以上に接種を行ったと報告しました。エチオピアでは、250万人以上のゼロ投与の子どもがDTP1の接種を受けました。 同国ではまた、未接種または接種未完了の子どもに対し、約500万回分のIPVと、400万回分以上のはしかワクチンをはじめとする、主要なワクチンを届けました。この12カ国以外の国々でも、多くの子どもたちに接種が行われました。例えばナイジェリアでは、これまで一度も接種を受けていなかった200万人の子どもにDTP1が接種され、IPV340万回分が、他のワクチン数百万回分とともに投与されました。
これら36カ国は、BCUを通じてGaviからの資金援助およびユニセフやWHOからの技術支援を受けましたが、同じ期間に、他の多くの国々でも未接種の子どもたちへのキャッチアップ接種を加速させ、パンデミックによって後退した予防接種サービスを立て直すための取り組みが実施されました。
 
ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは次のように述べています。「予防接種は命を守ります。BCUは、各国が必要なリソース、手段、そして政治的意志を持てば、命を守るワクチンを子どもたちに届けるために何ができるのかを示しています。パンデミックの最中に定期予防接種を受けられなかった子どもたちの一部にはキャッチアップ接種をすることができましたが、依然として接種ができていない子どもが多数います。BCUを通じて得られた成果は、特にはしかが再流行している今、強固で信頼性の高い予防接種システムへの投資を通じて維持されなければなりません」。
 
今後の課題
BCUの取り組みを通じて、各国および国際パートナーたちは、1歳から5歳までの年長の未接種児1,230万人に対し、史上初めて予防接種を行うことに成功しました。しかし、2024年には、世界中で推計1,430万人の1歳未満児が、定期予防接種プログラムの対象となるワクチンを1回も受けられませんでした。BCUは、リーダーシップと的を絞った投資や支援によって前進が可能であることを示しました。しかし、出生数の増加、紛争や避難民の発生、資金削減、保健医療システムの逼迫といった背景の中で、予防接種を逃す乳幼児の年間数を減らすには、最も支援が届きにくいコミュニティにも継続して予防接種を届ける体制を構築することが不可欠です。
予防接種を行うために、保冷箱にワクチンを保管して遠隔地へ向かう保健センターの職員。アクセスの難しい地域でも、オートバイや徒歩で移動している(アフガニスタン、2025年3月18日撮影) (C) UNICEF/UNI777833/Azizi
定期予防接種における慢性的なギャップがもたらす結果は、明らかです。例えば、はしかの集団感染はあらゆる地域で増加しており、2024年には約1,100万件の症例が報告されています。また、大規模な集団感染に直面している国の数は、2021年以降ほぼ3倍に増加しています。この急増の背景には、定期予防接種プログラムで実施されるはしかのワクチン接種が十分に行き届いていない状況が続いていることに加え、以前は高い接種率を誇っていた一部のコミュニティにおけるワクチンへの信頼低下があります。
 
大規模なキャッチアップ接種の取り組みは多大なリソースを要するため、定期予防接種を補完する「不足分の埋め合わせ」としてのみ行われるべきです。各国の予防接種スケジュールに基づいた適時の接種こそが最適な保護をもたらし、子どもたちや地域社会を守るための最も持続可能な方法であり続けるのです。
 
 あらゆる世代に、ワクチンは有効
ユニセフ、WHO、Gaviは、各国や地域社会と共に、2026年の世界予防接種週間(4月24日~30日)を記念し、「For every generation, vaccines work(仮訳:あらゆる世代に、ワクチンは有効)」という共同キャンペーンを展開しています。このキャンペーンは、各国に対し、あらゆる年齢層における予防接種率の維持と向上を呼び掛けるものです。予防接種アジェンダ2030(IA2030)の中間地点にあたり、Gaviの2026年~2030年戦略(Gavi 6.0)の核心となるこの取り組みにおいて、優先課題は変わりません。それは、ゼロ投与(未接種)の子どもたちにワクチンを届けること、そして、特に紛争や不安定な状況下にある、あるいは保健医療体制が脆弱な国々において、最も支援が届きにくいコミュニティでのワクチン公平性を推進することです。この勢いを維持するためには、予防接種プログラムへの長期的な国内投資の拡大と、パートナーやドナーからの確かな支援が欠かせません。
 
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■注記
 
The Big Catch-upの活動に関するGaviのメディア向けファクトシート(英語)はこちら。
https://www.gavi.org/news/document-library/media-factsheet-world-immunization-week-2026-big-catch
 
WHOのキャッチアップ予防接種に関するウェブページ(英語)はこちら。
https://www.who.int/teams/immunization-vaccines-and-biologicals/essential-programme-on-immunization/implementation/catch-up-vaccination
 
WHOの「The Big Catch-up: 2023年以降の重要な予防接種回復計画」(英語)はこちら。
https://www.who.int/publications/i/item/9789240075511
 
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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念をさまざまな形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています。(https://www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する32の国と地域を含みます
 
■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、32の先進国・地域にあるユニセフ国内委員会の一つで、日本国内において民間で唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、アドボカシーを担っています。(https://www.unicef.or.jp )