会計・税務知識を備えたAIによる経理承認業務の自動化で年1万時間の効果期待
味の素株式会社の完全子会社で国内グループ会社の財務経理業務を担う味の素フィナンシャル・ソリューションズ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:高木 泰、以下 AFS)と、経理シンギュラリティを実現するファーストアカウンティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:森 啓太郎、以下 ファーストアカウンティング)は、会計・税務の専門知識を備えた経理AIエージェントの共同開発を進めてきました。
このたび、同AIエージェントがAFSで先行して本番稼働を開始したことをお知らせします。
本プロジェクトでは、従来人手で行われてきた経費精算における経理承認業務を対象に、AIが自律的にログインから申請内容の確認・承認・差し戻し判断までを行う仕組みを構築しました。その結果、品質を維持したまま業務効率を大きく向上できることを確認しました。
本取り組みは、AIによる経理業務改革に向けた重要な一歩と位置づけています。
■本プロジェクトの背景
AFSでは、味の素グループの国内財務経理業務を集約する中で、以下の課題を抱えていました。
経費精算・請求書処理にかかる年数万時間規模のチェック工数
会計・税務知識を要する判断業務の属人化
ノウハウ継承の難しさ
BPO*を活用しても、限界のある品質維持と持続可能性
*BPO(Business Process Outsourcing):企業活動における業務プロセスの一部について、専門業者に外部委託すること。
 
こうした課題に対し、ファーストアカウンティングではかねてより自社で設計・開発を行い、経理特化型AI言語モデルの研究を重ねてまいりました。
この両社が協力し、AI技術を取り入れた経理AIエージェントを活用し、仕事の品質を維持しながら、スピーディかつ持続可能な経理判定を行う体制を構築すること、そして単なるRPAや既存の生成AIの活用にとどまらない「会計判断そのものを担うAI」を目指して、本プロジェクトを開始しました。
■経理AIエージェントの構築
具体的には、AFSが受託する複数社分の経理承認業務を、AI活用を前提とした形で再構築し、ファーストアカウンティングが提供する経理特化型AIの技術に、同社が長年培ってきたAI OCRや証憑処理、業務自動化の技術(Remota/Robota等)を組み合わせ、味の素グループの業務ルールやナレッジを実装しました。この結果、経理承認に必要な一連の工程(ログイン~判断・承認)を自動化し、単純なルールではなく、会計知識に基づく柔軟な判断ができます。
またRPAのように画面項目や条件に依存せず、汎用性も備えており、他社・他業務への横展開も可能です。これにより、確認コストを抑えながら、再現性と実効性を備えた自動化を実現しています。
これにより、これまで1件あたり4~5分を要していた経費精算の経理判断を、申請データと画像の照合によって自動化できます。月10,000件規模の証憑処理を行う経理現場であれば、年間約1万時間の削減効果が期待されます。今回、AFS社内の経費精算業務で本番化したのち、他の受託会社の承認業務にも拡大します。
また、将来的に請求書処理業務でも、申請データと画像の照合、前払費用判定、資本的支出の判定、源泉徴収税対応、リース取引判定などの経理判断の自動化を目指します。
 
AFSにて先行稼働を開始したAIエージェントのフローイメージ
AIによる判定を行い、人間は事後サンプルチェックなど内部統制上の担保に注力する
 
■生成AIの限界を補完する独自技術
大規模言語モデル(LLM)は高い生成能力を持つ一方、事実と異なる内容をもっともらしく出力する「ハルシネーション」の課題があります。経理業務では、この点がAI活用定着の障壁となる場合があります。LLM自体の精度がいかに向上しても、この問題を完全に排除することは困難とも言われています。
ファーストアカウンティングでは、これまで経理に特化してAIを自社開発してきたからこそ、この問題に正面から取り組みました。その結果、LLMの出力を増やすこと自体ではなく、業務を信用できる形で完了させることを重視し、業務の前提条件・手順・確認ポイント(受入条件)を設計したうえで、AIを活用するという形のAIエージェントを構築しました。これまでに積み上げてきた様々な技術を取り入れることで、経理承認の一連の工程を丸ごと自動化できる経理AIエージェントが実現しました。
■正答率93.3%
ファーストアカウンティングが培ってきた経理・財務領域の業務ロジックとLLMを組み合わせた「経理AIエージェント」の有効性を検証するため、「領収書必須項目の確認」「インボイス制度への準拠チェック」「税務上の交際費判定」の3つの項目について、同一のデータを用い、LLM単体とAIエージェントによる判定結果を比較しました。
その結果、AIエージェントは93.3%の正答率を記録し、LLM単体(53.3%)を大きく上回る結果となりました。
この結果から、専門領域においては単なるLLM活用にとどまらず、業務特有の業務知識とルールベースを組み合わせたAI設計が、高精度と実用性の両立に有効であることが示されました。
【主な特徴】
自社開発の経理特化型AIが、会計基準・税務知識・社内規程を理解し判断
各社ごとに異なる運用ルールを参照・学習
起票内容と証憑(領収書・請求書画像)を総合的に判断
経理特化で積み上げてきたノウハウの蓄積による高い精度と品質維持
繁忙期でもAIエージェントによる安定した承認処理を実現
■本プロジェクトの意義と展望
本プロジェクトは、単なる業務効率化や自動化にとどまらず、人が判断してきた会計・税務領域をAIに委ねること、属人化しがちな経理判断を、再現性のある仕組みに転換すること、「人中心」から「AI前提」の業務フローへと再設計することであり、それは「経理業務そのものの変革」とも言える取り組みです。
ファーストアカウンティングにとっても本プロジェクトは、会計AI技術を実際の企業業務に深く適用し、その有効性と拡張性を実証する重要な機会となりました。
両社は今後も、本プロジェクトで得られた知見をもとに、経理承認以外の業務領域への適用拡大や、複数の専門AIエージェントが連携する「組織型AI」への発展、そして企業やグループの垣根を超えて活用可能な「会計AIエコシステム」の構築などを目指します。
■味の素フィナンシャル・ソリューションズ 代表取締役社長 高木 泰 コメント
本プロジェクトを推進してくださったファーストアカウンティングの皆様に心より御礼申し上げます。
これまでBPOが手作業で担っていた承認業務を、AIエージェントによる承認・差し戻しへと置き換えます。これにより、同業務での標準化をいっそう進めるとともに、BPO負荷を軽減し、更なる業務委託、高度化を目指します。
また、本プロジェクトにあたり、業務委託先であるトランスコスモス(株) 長崎BPOセンター、味の素グループの関係会社でシステム開発保守を担うNRIシステムテクノ(株)の皆様にも参画いただき、ご尽力いただきました。両社に加え、弊社社員もOE活動を通じた業務フロー作成やチェック項目の整理に取り組んでまいりました。その成果が、今回の本番稼働につながったと考えています。この場を借りて、関係各位のご協力とご尽力に深く感謝申し上げます。
■ファーストアカウンティング代表取締役社長 森 啓太郎 コメント
本プロジェクトをともに推進してくださった、味の素フィナンシャル・ソリューションズの皆様に、心より御礼申し上げます。
会計・税務は極めて高度な専門性を要する領域であり、AIの有用性は明らかでした。一方で、その活用は単なるツール導入ではなく、業務の前提そのものを再構築する取り組みでもあります。本番稼働に至った本プロジェクトは、そうした変革を実現できることを示す大きな一歩となりました。
私たちは本プロジェクトを通じ、会計・経理領域におけるAI活用が、企業や業界を越えて価値を生み出す「会計AIのエコシステム」へと発展し得る段階に入ったと考えています。
ファーストアカウンティングは、この経理AIエージェントを中核に会計特化型AIの進化と社会実装を加速させ、日本企業の国際競争力の向上に貢献してまいります。
■味の素フィナンシャル・ソリューションズについて
AFSは、味の素グループの志(パーパス)である「アミノサイエンス(R)で、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」を実現するために、経理財務領域でのプロフェッショナルな仕事を通じて、顧客に高い価値を提供し、顧客から信頼されるビジネスパートナーであり続けます。
社員一人ひとりの個性を大切にし、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを基盤として、経理財務領域でワクワクするイノベーションを創造し、個人と会社の共成長を目指します。
 
社名 :味の素フィナンシャル・ソリューションズ株式会社 (味の素株式会社の完全子会社)
所在地:東京都中央区京橋一丁目15番1号
設立 :2020年4月
代表 :代表取締役社長 高木 泰
URL :https://www.afs.ajinomoto.co.jp/
事業内容:
味の素(株)およびグループ会社の財務・経理に関する業務
前項に附帯関連する一切の業務
■ファーストアカウンティングについて
【経理シンギュラリティで、制約を取り払い、自信と勇気を与える】
ファーストアカウンティングは、経理シンギュラリティを実現することで、経理業務の自動化・効率化を推進する企業です。生成AIやコンピュータービジョンを駆使した自社開発サービスを、多くの大企業の経理部門や会計ベンダーに向けて展開。「経理のシンギュラリティ」を実現し、経理部門の人手不足の解消と、経理パーソンが企業価値の向上に資する戦略経理に注力できる環境を創出します。
 
社名 :ファーストアカウンティング株式会社(東証グロース:5588)
所在地:東京都港区芝公園2-4-1 芝パークビルA館 3階
設立 :2016年6月
代表 :代表取締役社長 森 啓太郎
URL :https://www.fastaccounting.jp/
事業内容:経理AI事業(会計分野に特化したAIソリューション)
経理業務のAIモジュール『Robotaシリーズ』
請求書処理のプラットフォーム『Remota』
デジタルインボイス送受信サービス『Peppolアクセスポイント』