2026(令和8)年 4月 29日国立大学法人岡山大学

•パーキンソン病は、脳内のドーパミン作動性ニューロンの機能低下によって運動障害を引き起こす進行性の神経変性疾患であり、いまだ根本的な治療法は確立されていません。•本研究では、「死んだふり(擬死)」を長く続ける甲虫の系統を人為的に作り出し、その生理的・遺伝的特徴を解析しました。擬死行動が長い系統では、脳内ドーパミン量の低下、運動活動の異常、ドーパミン合成やチロシン代謝に関わる遺伝子の発現変化が確認され、これらはヒトのパーキンソン病にみられる特徴と共通していました。•さらに、ヒトのドーパミン作動性経路に関与する遺伝子とのDNA配列比較により、擬死行動が長い系統に多数の変異が見つかり、行動進化と神経変性疾患を結びつける分子基盤の存在が示唆されました。本研究成果は、昆虫というシンプルなモデルを用いてパーキンソン病の発症メカニズムを理解し、新たな治療戦略の基盤を築く可能性を示しています。

パーキンソン病は、脳内のドーパミン作動性ニューロンの機能低下によって運動障害を引き起こす進行性の神経変性疾患であり、いまだ根本的な治療法は確立されていません。

本研究では、「死んだふり(擬死)」を長く続ける甲虫の系統を人為的に作り出し、その生理的・遺伝的特徴を解析しました。擬死行動が長い系統では、脳内ドーパミン量の低下、運動活動の異常、ドーパミン合成やチロシン代謝に関わる遺伝子の発現変化が確認され、これらはヒトのパーキンソン病にみられる特徴と共通していました。

さらに、ヒトのドーパミン作動性経路に関与する遺伝子とのDNA配列比較により、擬死行動が長い系統に多数の変異が見つかり、行動進化と神経変性疾患を結びつける分子基盤の存在が示唆されました。本研究成果は、昆虫というシンプルなモデルを用いてパーキンソン病の発症メカニズムを理解し、新たな治療戦略の基盤を築く可能性を示しています。

国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の学術研究院環境生命自然科学学域の宮竹貴久教授は、東京情報大学の田中啓介准教授、玉川大学農学部の佐々木謙教授と東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの矢嶋俊介教授と、育種の結果として「死んだふり(擬死)」を長く続けるコクヌストモドキ(Tribolium castaneum)の系統と、ヒトのパーキンソン病に関連するドーパミン作動性経路に関与する遺伝子とのDNA配列比較を行いました。

これまで、死んだふりを長く続ける系統では、脳内ドーパミン発現量が低く、歩行活動異常が認められ、ドーパミンを注射することで運動能力が回復するというパーキンソン症候群との類似性が認められていました。

今回のヒトのドーパミン作動性経路に関与する遺伝子とのDNA配列比較により、擬死時間の長い系統に多数の変異が見つかり、行動進化と神経変性疾患を結びつける分子基盤の存在が示唆されました。

この研究成果は、2026年3月17日午後7時(日本時間)、Springer Natureの刊行する「Scientific Reports」にオンライン掲載されました。

本件は、2026年4月29日に公開されました。

1997年以来、死んだふり行動の謎について調べ続けました。長い時間死んだふりをする系統は普段からあまり動かないことに気づき、それが脳内に発現するドーパミン欠乏によることを共同研究者とともに突き止めて、研究を進めるうちパーキンソン症候群とのつながりが見えてきました。人の暮らしに何の役にも立ちそうにない「死んだふり」の研究がヒトの疾患との関係にまで発展しました。基礎研究の大切さを示しています。

◆論文情報論文名:Tribolium castaneum with longer duration of tonic immobility have more variations corresponding to the human Parkinson's disease genomic region邦題名「死んだふり持続時間が長いコクヌストモドキ系統では、ヒトのパーキンソン病関連ゲノム領域に対応する変異が多く検出された」掲載誌:Scientific Reports著者:Keisuke Tanaka, Ken Sasaki, Shunsuke Yajima, Takahisa MiyatakeDOI:10.1038/s41598-026-40050-3

◆研究資金本研究は科研費基盤研究B「ゲノム行動生態学:「生物の動き」を制御する遺伝子と個体の適応度及び集団への影響:課題番号23K21343」および基盤研究C「「動く・動かない」という生物の行動変異をもたらす選択圧の生態学的解明:課題番号25K09771」、東京農業大学生物資源ゲノム解析センターの「生物資源ゲノム解析拠点」の支援を受けて実施しました。

◆詳しい研究内容について“動かない”進化の代償?~死んだふりをする甲虫が示すパーキンソン病との共通点~

◆参考情報1・【岡山大学】生き急ぐか? ゆっくり生きるか?~特殊害虫ミバエで実証した生物の分布を変える生き方の速さ~

・昆虫の細菌感染密度に季節性 世界に先駆けて発見https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id459.html・“逃げるは恥”ではない!? 戦闘で負けた後に4日間逃げ続ける昆虫について動物の行動様式の進化を数理モデルで解析https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id437.html・LEDと性フェロモンを用いた環境・生産に負荷の少ない新型の害虫誘殺トラップを開発https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id419.html・ウォーキング・ブームが少子化を招く?~昆虫からの示唆~https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id561.html・死んだふりを制御する遺伝子群を世界に先駆けて発見!~ファーブルも注目した死にまねの仕組みを解明~https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id669.html・歩かない虫のオスは、より多くの子の父となる!~より歩かないオスのほうがメスをめぐる競争に勝つ~https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id638.html・大きな大顎を持つオスは死んだふりをしやすい?甲虫を用いた検証により世界で初めて明らかにhttps://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id802.html・コーヒーは虫のオスにとって精力剤なのか~カフェインを飲んだオスは、求愛にせっかちになる!~https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id774.html・体内時計のリズムの振幅は北に行くほど小さくなる!昆虫を使った実証で発見https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id806.html・世界初! 天敵から逃れる戦略を制御するゲノムの特徴を解明 ~死んだふりを操る遺伝子の全貌を突き止めた~https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000072793.html

・食われる側も工夫する:異なる天敵には違う捕食回避戦略を使う甲虫~フリーズか、それとも死を装うのか?~

・虫の求愛にもご当地の流儀があった!~婚姻贈呈に見られた地域差~

・いつ、死んだふりから目覚めるべきか ~覚醒を早める集合フェロモンの存在を世界に先駆けて発見!~

・サツマイモの大害虫イモゾウムシはイモ苗のある場所に固執する ~環境にやさしい害虫根絶に役立つ世界初の発見!~

・死んだふりしている場合じゃない!~オスは異性のフェロモンにより死んだふりから覚醒する事を世界で初めて発見!~〔琉球大学、岡山大学〕https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002262.000072793.html

・雄間闘争で脚を噛まれて負けた甲虫のオスは、交尾のときに踏ん張れない~ライバルに脚を噛まれたオスは残せる子の数が減る!~

・【岡山大学】宮竹貴久教授が「2025年度日本農学賞・読売農学賞」を受賞

岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(農) 教授 宮竹貴久〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパスTEL:086-251-8339

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•岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html

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