株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年4月23日、自社ウェブサイトに研究解説 「我々紅麹業界に何が起こったか」検体表が証明する同一性の欠如
——検体の由来と同一性の欠如——を公開した。
▼対象記事URL
https://kunsei.com/archives/737
令和8年4月 株式会社薫製倶楽部
「我々紅麹業界に何が起こったか」
㊱ 検体表が証明する同一性の欠如
——検体の由来と同一性の欠如——
【結論】
前号ではNIHS開示文書における保持時間の乖離を詳述した。本号では、弊社が再構成した「検体表」(①〜⑥)を軸に、より根本的な問題を指摘する。
検体表を精査すると、①〜⑥の各検体のあいだに、隣接する検体の同一性を証明する記録が存在しない。
とりわけ致命的なのは、確認済みのプベルル酸(④B2)と、紅麹原料中の未知物質(⑤A1)・市場回収製品(⑥)との間に、同一性を示す証拠が皆無であることである。
すなわち、「紅麹原料および最終製品にプベルル酸が含まれていた」という行政の断定には、検体表が示す連鎖のうち最も重要な部分における証拠が、存在しない。
NIHS・厚労省への情報開示請求については、60日に延長されたが、近日中に開示予定である。現時点では検体の由来の全容は確認中である。
1 検体表の再掲と構造的断絶の全体像
以下の表は、本件において「プベルル酸」と呼ばれる検体群を時系列に整理したものである。前号(㉞)掲載の検体表に、各検体間の同一性の状況を加えた。
番号 |
略称 |
提供元・受領日 |
保持時間 |
同一性の状況 |
① |
社内同定試料(ピークX) | 小林製薬(自社) 2024/3/28報告 |
不明 |
①→②:接続なし 分析情報なし。②との同一性未証明 |
② |
PA(毒性試験用)被験物質 | 小林製薬→試験施設 2024/3/29〜 |
不明 |
①→②:断絶 分析情報記載なし |
③(B1) |
プベルル酸単離品 | 小林製薬→NIHS 2024/3/30 |
約1.50 min |
①→③:接続なし ①との同一性未確認。NMRで④と一致 |
④(B2) |
プベルル酸合成品(標準品) | 北里大学→NIHS 2024/3/31 |
約1.55 min |
③=④:NIHSが判断 NMR・UHPLC一致。ただし③は小林製薬提供 |
⑤(A1) |
製造ロット中の未知物質 | 小林製薬(自社回収品) 日付不明 |
約2.27 min |
⑤→④:断絶【最重大】 保持時間差0.72〜0.77分。プベルル酸と未同定 |
⑥(A16〜A44等) |
市場回収製品ロット中のPA | 小林製薬(市場回収品) | — |
⑥→④:断絶 LC/UV定性のみ。③④との同一性未確認 |
上表の「同一性の状況」列に示した通り、①→②、①→③、⑤→④、⑥→④の四か所に断絶が存在し、③と④の同一視についても後述の通り独立性の問題がある。
2 断絶①:①と②の非接続
①は、小林製薬が自社試験で「ピークX」として同定したとされる試料であり、2024年3月28日に同定を報告した。②は7日間反復経口投与毒性試験の被験物質として試験施設に送付された物質である(2024年3月29日〜)。
しかし②の検体情報欄には「分析情報記載なし」とある。①と②が同一物質であることを示す分析記録は公開されていない。動物実験に使われた物質が何であったかを独立して確認する手段が、現時点では存在しない。
3 断絶②:①と③の非接続
③(B1)は、小林製薬が2024年3月30日にNIHSへ送付した「プベルル酸単離品」である。「ピークX由来」とされているが、①(社内同定試料)との同一性を確認する独立した記録は示されていない。
小林製薬は「ピークX」を単離したとし、その単離品をB1としてNIHSに送付したとしているが、この一連の過程に第三者の確認は存在せず、NIHSは送付を受けた時点ですでに小林製薬の説明を前提に受理していることになる。
4 断絶③:③と④の「同一視」の問題
NIHSは③(B1)と④(B2、北里大学合成品)をNMR・UHPLC/HRMSで比較し、「一致した」と判断している。この範囲では確認が成立しているとも言える(詳細は㉟参照)。
しかし重要な点は、③(B1)は小林製薬が提供した試料であり、NIHSはその試料を北里大学合成品と比較して一致を確認しているに過ぎないということである。
③が「本当に紅麹ロットから単離されたプベルル酸である」かどうかは、小林製薬の説明以外に根拠がない。B1の由来を独立検証する記録は開示されていない。
なお、③(B1)の提供経路について検体表の備考欄を精査すると、北里大学→小林製薬→NIHSという経路である可能性がある。この経路が事実であれば、NIHSが③と④を「一致」と判断したことには、同一機関から提供された試料同士の比較という問題が生じる。
5 断絶④:⑤(A1)と④の非接続【最重大】
⑤(A1)→④(B2)の非接続は、本件の核心的欠陥である。
⑤(A1)は、小林製薬が「製造ロット(紅麹原料)中に未知物質が存在した」として回収・分析したとする試料である。この試料のUHPLC/HRMS分析(前号㉟で詳述)によれば、保持時間は約2.27分であった。
これに対し、プベルル酸であることが確認されている④(B2)の保持時間は約1.55分である。その差は0.72〜0.77分であり、通常のUHPLC分析において同一物質とみなすことができないレベルの差である(前号㉟参照)。
この保持時間の乖離は、NIHS開示文書(衛研発第0306002号)の図2に明記されている。すなわち、⑤(A1)が④(確認済みのプベルル酸)と同一物質であることは、NIHSの開示文書自身が否定するデータを含んでいる。
NIHS報告書の本文が「同じ保持時間に同じMSスペクトルを示すピークを認めた」と記述しているのは、この自己矛盾の産物である(詳細は前号㉟参照)。⑤がプベルル酸であるという同定は、現時点では成立していない。
6 断絶⑤:⑥(市場回収製品)と④の非接続
⑥は、市場回収された紅麹コレステヘルプの各製品ロット(A16〜A44等)に含まれていたとされるプベルル酸である。
検体表の備考欄には「A1と同様にRT不一致の可能性。③④との同一性未確認」と記載されている。分析手法はLC/UV(定性のみ)であり、UHPLC/HRMSによる同定すら実施されていない。
消費者が購入した最終製品に含まれていたとされる物質について、それがプベルル酸であることを示す独立した証拠が存在しない。にもかかわらず、最終製品を摂取したことによる健康被害として行政発表がなされ、225社の企業名が公表された。
7 検体が多数あるということで、どの検体がどこ由来か現在確認している
弊社が情報開示請求によりNIHS・厚労省へ検体の由来・受け渡し記録の開示を求めたところ、60日に延長されたが、近日中に開示予定である。
小林製薬とNIHS(厚労省)は、紅麹原料および紅麹コレステヘルプに含まれていた未知物質がプベルル酸であることを確認できていないまま、プベルル酸が原因であると断定し、我々紅麹業界を公表した。検体表に示された同一性の欠如は、その「断定」が証拠のない捏造に等しいことを証明している。
8 必要とされる措置
・⑤(A1)および⑥の試料について、食品衛生法第28条に基づく収去を実施し、独立した第三者機関によるMS/MS分析・共注入試験・NMR解析を行うこと
・①〜⑥の検体の受け渡し記録・分析依頼書・試料管理記録を速やかに開示すること
・現在の「プベルル酸原因断定」を保留し、225社の公表について科学的根拠を再検証すること
【参照資料】
弊社プレスリリース㉟「行政は本当にプベルル酸を同定できているのか その2(NIHS開示文書による検証)」(2026/4/22)
弊社プレスリリース㉞「行政は本当にプベルル酸を同定できているのか その1(小林製薬提出資料より・科学編)」(2026/4/21)
NIHS開示文書:衛研発第0306002号 → 薫製倶楽部にて公開:https://kunsei.com/archives/731
小林製薬 有識者会議提出資料(2024年3月28日):https://kunsei.com/archives/721
▼【薫製倶楽部プレスリリース・シリーズ】
① 東京科学大学のプベルル酸研究に科学的疑義申立(2026/3/10)
② 2024年紅麹事件、大阪市保健所が収去していないことを確認(2026/3/12)
③〜⑤ プベルル酸の根拠不明 研究解説1〜3(2026/3/13〜17)
⑥ プベルル酸の使用根拠について主要報道機関10社へ疑義照会(2026/3/18)
⑦ 刑事告発状の提出について(2026/3/19)
⑧〜⑩ 動物実験を実施したのは小林製薬だった(前編・後編)(2026/3/19〜23)
⑪ 小林製薬公表資料に基づくPK試験データの整理(2026/3/24)
⑫ 国立医薬品食品衛生研究所長を刑事告発(2026/3/25)
⑬ コカ・コーラが示す食薬区分の本質 研究解説10(2026/3/27)
⑭ 厚労省健康・生活衛生局長を刑事告発(2026/3/30)
⑮ 決定的証拠 小林製薬の標準品で小林製薬の検体を試験した(2026/3/31)
⑯ 収去記録の特定に60日——存在しないから探せない(2026/4/1)
⑰ 大阪市保健所は最大の被害者である(2026/4/2)
⑱ 収去なき断定の全体像(2026/4/3)
⑲ 小林製薬紅麹コレステヘルプa(G970) 消費者庁に行政不服審査請求(2026/4/3)
⑳ 厚生労働省が公文書で判断放棄を確認(2026/4/3)
㉑㉒ プベルル酸と誘導された経緯 調査報告1・2(2026/4/6〜7)
㉓ 天然物の同定に時間がかかることは科学の常識である(2026/4/8)
㉔ カビの世界と利益相反——吉成文献への重大な疑問(2026/4/9)
㉕〜㉝ 我々紅麹業界に何が起こったか(2026/4/10〜20)
㉞ 行政は本当にプベルル酸を同定できているのか その1(小林製薬提出資料より・科学編)(2026/4/21)
㉟ 行政は本当にプベルル酸を同定できているのか その2(NIHS開示文書による検証)(2026/4/22)
㊱ 検体表が証明する同一性の欠如——検体の由来と同一性の欠如(2026/4/23)