アフリカや中東など世界各地で紛争解決に取り組むアクセプト・インターナショナルが、非国家武装組織に関与した若者の実態に迫る調査報告をまとめました。調査からはさまざまな課題と可能性が浮かび上がりました。
 
連日、世界各地で武力紛争についてのニュースや情報が流れてきていますが、現代の武力紛争では「非国家武装組織」と呼ばれる国に属していない武装組織が関与していることが多くあります。これらの非国家武装組織が関わると紛争が複雑化し、その根本解決が非常に難しいという実態があります。
 
アフリカや中東などで紛争解決と平和構築に取り組む認定NPO法人アクセプト・インターナショナル(東京都中央区、代表理事:永井陽右)および同組織が運営するGlobal Taskforce for Youth Combatants(GTY)は非国家武装組織に関わる若者に目を向け、15ヶ国(ソマリア、イエメン、ケニア、インドネシア、コロンビア、マリ、スーダン、エチオピア、モザンビーク、ウガンダ、ハイチ、パキスタン、フィリピン、スリランカ、ネパール)において、計450人の紛争当事者の若者(YANSAG/ヤンサグ※)を対象に調査を実施しました。その調査結果からは、報道では見えてこない紛争当事者の実態が浮き彫りになりました。以下では9つの主要な発見についてお伝えします。
 
※YANSAG/ヤンサグとは
YANSAG(Youth Associated with Non-State Armed Groups)とは、いわゆるテロ組織を含む非国家武装組織に関わっている/関わった18~35歳の若者のことを指します。
 
調査報告全文はこちら(英文)
9つの主要な発見
今回の調査は、多くのYANSAG/ヤンサグが様々な課題に直面しつつも、彼らが秘めるポテンシャルの豊かさ、そして独自性を浮き彫りにしました。そしてそれは、武力紛争下での複雑かつ過酷な経験を経て形作られたものです。
1. 多くのYANSAGは子ども時代に非国家武装組織に加入している
今回の調査対象者450名が非国家武装組織に加入した平均年齢は20.3歳でした。しかし、全15ヶ国において子ども時代に非国家武装組織に加入した事例が多くあることがわかりました。例えば、全調査国における組織加入時の平均最小年齢は11.4歳で、スリランカ、ソマリア、コロンビア、ウガンダ、マリでは10歳未満での加入も報告されています。
2.非国家武装組織のメンバーの70%以上が18歳から35歳である
非国家武装組織のメンバーの71.8%が18~35歳の若者世代であることがわかりました。さらに多くの回答者が、自分たちが所属していた武装組織には18歳未満の子どもも多く含まれていると述べていたことから、非国家武装組織のメンバーのほとんどは子ども~若者世代で占められていると考えられます。
 
しかし、18歳に達すると子どもの権利条約を中心とした包括的な国際法による保護は一般的に適用外になるため、若者としてのニーズに対応するための法的枠組みが今まさに求められています。
3. 非国家武装組織への加入理由は複雑かつ多様である
武装組織への加入には、複雑な要因が重なり合うことが多くあります。例えば、武装組織による脅迫や誘拐、あるいは社会的圧力などの強制的な加入はもちろん、一部の国ではより良い社会の実現を求めて自発的に非国家武装組織に加入した例などです。YANSAGの保護を考える際には、個々の経験や背景を考慮することが重要であることが調査より明らかになりました。
4. 非国家武装組織からの離脱の意向は様々であり、柔軟なアプローチが不可欠
非国家武装組織からの離脱願望については、武装組織に加入した経緯や組織内での経験、加入期間中の心理状態などによって回答も多岐にわたりました。YANSAGへの支援では、多様で複雑な背景を考慮し、個々のニーズや実体験に合わせて調整されることが重要となります。
 
例えば、ソマリア、イエメンなど現在進行中の武力紛争下では離脱願望が多いため、彼らの社会復帰や離脱のための支援の検討が極めて重要です。離脱願望が低いスリランカやネパールなどでは、YANSAGの視点や加入した際の動機を受け止め、暴力以外の方法で目標を達成する道筋を共に探ることが必要です。強制的徴兵が多いモザンビークやウガンダなどでは、救出に焦点を当てた措置がより適切と考えられます。
5. すべてのYANSAGは、離脱と社会復帰において複数の課題に直面している
武装組織によって離脱が禁止されるなどその難易度が極めて高いソマリアやイエメンにおいては、恩赦や離脱のための具体的支援へのニーズが特に高くなっています。一方で、組織への加入と離脱がそれぞれが所属する民族コミュニティと密接に結びついているパキスタンやスーダンなどでは、恩赦や離脱支援へのニーズはあまり見られませんでした。
社会復帰においてYANSAGが直面する課題としては、武装組織からの攻撃、また武力紛争の終結から10年以上が経過しても、多くのYANSAGが厳しい経済状況や、差別やスティグマ(社会的なレッテル)、そして法的地位の不安定さに直面していることが明らかになりました。
 
以上のように武装組織からの離脱・社会復帰の際の課題も多様であることが判明しました。
6. 多くのYANSAGは自分たちの声が政府や国際社会に届いていないと感じている
開発途上国において、若者の視点を政策や開発課題に積極的に取り入れようとする世界的な機運が高まる一方で、武装組織に関与した経験を持つ若者が発言の場を与えられることは稀です。
 
こうした疎外感が怒りや絶望といった感情を煽り、彼らが当初武装組織に加入した根本的な理由の一つとなり、場合によっては組織の離脱後も再び暴力に加担してしまうリスクを高めることもあります。そのため、YANSAGの声に耳を傾け、それを広めるための積極的な努力が求められています。
7. 大多数のYANSAGは、平和の担い手になることを熱望し、その能力があると信じている
大多数のYANSAGが「平和の担い手」になりたいという強い願望があることもわかりました。
 
そのようなYANSAGの志に国際社会がどう向き合い、それをいかに活かしていくかが、紛争解決を前進させ、平和を持続させるための鍵を握っています。
 
また、平和の担い手として達成したいことへの回答からは、彼らが共有する普遍的な願いと、それぞれの経験から生まれた独自の視点の両方が映し出されています。いずれの国でも一貫して非暴力による解決や弱者への支援、そして平和への寄与の大切さが訴えられました。
 
彼らが平和の担い手になるというビジョンには大きな可能性があり、YANSAGは単なる「脅威」ではなく、紛争解決に向けた力強い希望の源泉として捉えられるべきなのです。
 
8. 平和の担い手になるために必要なスキルは多様であり、単なる収入創出だけではない
すべての調査対象国で、収入創出のためのスキルが重要な要素として浮上しました。紛争の影響が残る不安定な社会では、安定した仕事を持つことが偏見や差別、法的な不安定さや身の危険から自分を守る力になり、また地域社会の信頼を取り戻すことにつながるからです。
 
読み書きなどの基礎教育、問題解決の進め方や平和構築の具体的な手法、対話の技術、リーダーシップ、さらにはストレスや感情をコントロールする能力も社会貢献や平和構築の活動に長く携わり続けるために重要だという指摘、社会を良くする活動を立ち上げるための資金調達のスキルが必要だと訴える声もあります。
9. 多くのYANSAGは、政府、国際社会、そして現役戦闘員に向けたメッセージを持っている
本調査により、大多数の若者が社会に伝えたいメッセージを持っていることが明らかになりました。それらのメッセージは、紛争解決と平和構築を前進させる大きな可能性を秘めています。紛争を経験していない若者の意見とは異なり、その視点は当事者としての過酷な実体験に裏打ちされたものです。
 
この声をどう受け止め、いかに平和への取り組みに活かしていくか。それは今、私たちに突きつけられている極めて重要な問いなのです。
 
調査報告全文はこちら(英文)
アクセプト・インターナショナルはその15年近くに及ぶ活動から、武装組織に関わる若者に適切な支援に取り組んできました。彼らのユニークな可能性を引き出すことができれば、長期化・複雑化する現代の紛争解決において大きなインパクトを生み出すことできると考えています。
 
そこで2021年より、いわゆるテロ組織を含む非国家武装組織に関わっている/関わった18~35歳の若者のことを指すYANSAG(Youth Associated with Non-State Armed Goupsの略称)という言葉を提唱し、彼ら彼女らの権利やエンパワーメントに関する国際規範の制定に向けた取り組みを開始し、さまざまなアドボカシー活動や交渉、研究活動を行ってきました。
 
武装組織に関わったYANSAGの体験や声に耳を傾けることで、それぞれの国や地域コミュニティ特有の課題やニーズを分析し、実際の紛争地や刑務所・社会復帰キャンプなどで紛争解決を前進させるためのプログラムを各国の教育機関・専門機関と連携して開発・実施しています。
 
先月行われた国連人権理事会でも、アクセプト・インターナショナルの代表・永井陽右が国連やNGO、政府機関などの多様な関係者を巻き込み、若者のニーズや可能性を丁寧に国際政策へ反映させることの重要性を訴えました。
 
https://www.youtube.com/watch?v=36I9MV7obLQ
 
 
個々のYANSAGに対しても、武装組織に参加することになった背景、そして離脱や社会復帰について実際に彼らが思うことを把握したうえで、彼らが必要とする支援を行うとともに、彼らの可能性に光を当てています。
 
彼らを単に「社会への脅威」や「紛争の原因」と見なすのではなく、適切な支援によって彼らの可能性を引き出すことができれば、彼らは社会を変えるユニークな「平和の担い手」へと生まれ変わることができることを私たちは知っています。
 
 
彼らには暴力の連鎖を断ち切り、和解と再生の象徴となるポテンシャルがあります。今こそ、世界で長期化する武力紛争の根本原因に対処するために、彼らを深く理解し、直接対話することが求められているのです。
 
テロや紛争といった暴力に加担してしまった経験を持つ彼ら彼女らだからこそ、今なお武装組織にいる若者、そして国際社会に伝えることのできる力強い想いやメッセージを、アクセプト・インターナショナルは発信していきます。
 
当法人への取材について
私たちは、ソマリアイエメンパレスチナなど、世界のテロ・紛争の現状などについて、日本の報道機関向けの取材に加え、メディアの方を含む一般の方々に対して国内で定期的にオンライン・オフラインのイベント(直近のイベント一覧はこちら)を開催しております。また、現場での活動の画像・動画のご提供、スタッフへのインタビューなどもご相談いただけます。お気軽にお問い合わせください。
 
ご寄付のお願い
私たち独自の取り組みは、皆様からの温かいご寄付で成り立っています。毎月1,500円からのご寄付をいただくアクセプト・アンバサダー(詳細はこちら)はもちろん、単発でのご寄付(詳細はこちら)やふるさと納税を通じたご寄付(詳細はこちら)も受け付けております。日本発で前例を創るため、ぜひ皆様のご協力をお願いいたします。また、2026年3月25日より東京都の認定NPO法人として認定を受けたため、寄付者の皆様は寄附金控除などの税制優遇を受けていただけます。
 
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認定NPO法人アクセプト・インターナショナル
国内外で憎しみの連鎖といった負の連鎖をほどくことを目指して、2011年の創設以来、ニーズが非常に高いにも関わらず見捨てられてきた地域・分野・対象者に対して取り組みを実施してきました。海外では、紛争に加担した若者が平和の担い手となるための支援や、世界中の紛争当事者が暴力から離脱するための国際規範の制定に向けた働きかけを行っています。また、日本国内においては特に取り残されがちなイスラム教徒を中心とした在日外国人への相談支援や、犯罪に巻き込まれた特に深刻な少年・少女への包括的な支援を展開しています。

組織概要
名称:認定NPO法人アクセプト・インターナショナル(NGO Accept International)
住所:東京都中央区日本橋堀留町1丁目、5-7 YOUビル 6A
設立:2017年4月(前身団体・日本ソマリア青年機構は2011年9月設立)
代表理事:永井 陽右
主な活動国:ソマリア、イエメン、ケニア、インドネシア、コロンビア、パレスチナ、日本
公式サイト:https://accept-int.org/
代表メールアドレス:info@accept-int.org
代表電話:03-4500-8161

国に属していない武装組織が関与していることが多くあります。

YANSAGの声に耳を傾け、それを広めるための積極的な努力が求められています。

そのようなYANSAGの志に国際社会がどう向き合い、それをいかに活かしていくかが、紛争解決を前進させ、平和を持続させるための鍵を握っています。

、安定した仕事を持つことが偏見や差別、法的な不安定さや身の危険から自分を守る力になり、また地域社会の信頼を取り戻すことにつながるからです。

紛争を経験していない若者の意見とは異なり、その視点は当事者としての過酷な実体験に裏打ちされたものです。

この声をどう受け止め、いかに平和への取り組みに活かしていくか。それは今、私たちに突きつけられている極めて重要な問い

武装組織に関わる若者に適切な支援に取り組んできました。彼らのユニークな可能性を引き出すことができれば、長期化・複雑化する現代の紛争解決において大きなインパクトを生み出すことできると考えています。

彼らを単に「社会への脅威」や「紛争の原因」と見なすのではなく、適切な支援によって彼らの可能性を引き出すことができれば、彼らは社会を変えるユニークな「平和の担い手」へと生まれ変わることができることを私たちは知っています。

世界で長期化する武力紛争の根本原因に対処するために、彼らを深く理解し、直接対話することが求められているのです。

寄付者の皆様は寄附金控除などの税制優遇を受けていただけます。