~変容する世界秩序と人道主義のこれから~ 5月25日~27日
国境なき医師団(MSF)は、人道援助をめぐる諸問題を共に考える「人道援助コングレス東京2026」を、5月25日(月)から27日(水)の3日間、「変容する世界秩序と人道主義のこれから」をテーマに開催します。不確実性を増す国際秩序の中で人道主義が直面する課題を見つめ、人道援助を将来に向けてどのように継続・発展させていくべきかを、参加者の皆さまと共に考えます。 
医療機材の不足が続くガザ地区の病院では、1台の保育器を複数の新生児で使っている=2025年7月16日
開催の背景
国際秩序は現在、急速かつ深刻な転換期にあります。USAIDの事実上の解体など米国の援助政策の大きな転換に伴い、世界の援助体制の枠組みは揺らぎ、資金の縮小や中断により数百万人規模の生命に影響が及ぶ可能性が指摘されています。同時に、国際協調や国際法よりも国益や安全保障を優先する動きが拡大。こうした状況の中、人道原則に基づく支援活動を維持することが困難になっています。 
  
第7回目の開催となる今回は、現場の事情を知る識者らが、パレスチナや南スーダン、医療への攻撃、災害・紛争下におけるメンタルヘルスといった議題について意見を交わします。変容する世界秩序における人道主義のこれからについて、議論が深まる場となることを期待します。 
  
MSFは、日本において人道援助をめぐる諸問題を共に考える場をつくりたいと考え、2020年より「人道援助コングレス東京」というプラットフォームを開設し、毎年開催しています。国際協力分野の関係者(実務者、政策立案者、研究者等)間の対話促進を目的とする場ですが、人道危機を取材するジャーナリスト、民間企業の方々や国際協力を学ぶ学生など、人道援助に関心を持つすべての人がご参加いただけます。 
開催概要
日時: 
5月25日(月)17:00~20:30 オンライン配信 
5月26日(火)17:00~20:30 オンライン配信 
5月27日(水)16:30~18:20 オンライン配信と会場のハイブリッド開催 
 
会場(5月27日):ベルサール高田馬場 会議室1 
新宿区大久保3-8-2 住友不動産新宿ガーデンタワー1F map  
 
申込締切・定員:
オンライン配信 5月27日開催終了時まで 定員1000人 
会場参加 5月26日23:59まで 定員100人 
※いずれの場合も定員に達した場合には、開催日前に申し込みを締め切る場合があります。 
 
言語:オンライン配信は日英同時通訳あり。5月27日の会場内は同時通訳なし、日本語で開催。 
参加費: 無料 
主催: 国境なき医師団(MSF) 
詳細・申込: https://www.msf.or.jp/congress/ 
問い合わせ: jindo@tokyo.msf.org 
プログラム(登壇者敬称略)
セッション一覧
5月25日(月) 
17:00~18:35 
【オープニング&オンラインセッション1】
パレスチナ─人道主義が岐路に立つ時 
5月25日(月) 
19:00~20:30  
【オンラインセッション2】
国連安保理決議2286号採択から10年─止まない医療への攻撃 
5月26日(火) 
17:00~18:30 
【オンラインセッション3】
災害・紛争下におけるメンタルヘルス─見えない傷にむきあう
5月26日(火)
19:00~20:30 
【オンラインセッション4】
南スーダン─縮小する国際援助と増大する人道ニーズ 
5月27日(水)
16:30~18:20 
【ハイブリッドセッション&クロージング】
変容する世界秩序と人道主義のこれから 
 
5月25日(月)17:00~18:35
【オープニング&オンラインセッション1】 パレスチナ─人道主義が岐路に立つ時
 
2025年10月に停戦が発効したにもかかわらず、ガザ地区の人道危機は依然として解消されていない。停戦後もガザ保健省によると600人以上が殺害され、断続的な攻撃・暴力が続いている。2023年10月以降の累計死者数は7万2000人を超え、水、医療、住居、生活必需品といった援助物資の搬入に対する厳しい制限が続いており、住民たちは厳しい環境下での生活を引き続き余儀なくなされている。また、ガザを東西に分断するいわゆる「イエローライン」によって、東側の広範な地域が事実上、民間人が戻ることのできない「帰還不能地域」となっている。ヨルダン川西岸地区でも状況は悪化しており、住宅破壊、入植者による暴力、入植地の急速な拡大が進み、事実上の併合への深刻な懸念が高まっている。 
 
本セッションではガザ地区およびヨルダン川西岸地区における人道状況を把握し、変化し続ける国際秩序や緊張が高まる地域情勢を踏まえ、パレスチナに対する人道支援の今後について考える機会としたい。
 
パネリスト:
清田明宏(国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) 保健局長 兼 世界保健機関(WHO)特別代表)
酒井啓子(特任教授 / グローバル関係融合研究センター長, 千葉大学 国際高等研究基幹 / 大学院社会科学研究院) 
国境なき医師団 他
モデレーター:
高久潤(朝日新聞 デジタル編成本部 / 元エルサレム支局長)
5月25日(月)19:00~20:30
【オンラインセッション2】 国連安保理決議2286号採択から10年─止まない医療への攻撃
 
紛争下での医療活動の保護を各国に求める国連安全保障理事会決議2286号の採択から、今年5月で10年を迎える。しかし現在、武力紛争における医療への攻撃は前例のない水準にまで激化している。世界保健機関(WHO)によると、2025年には医療施設に対する攻撃が1370件以上記録され、その内訳はウクライナが581件、パレスチナが460件、続いてミャンマー、スーダンとなっている。死者数で見ると、最も被害が深刻なのはスーダンで、1620人が死亡している(2026年4月6日時点、WHO)。医療への攻撃を止めるために、いま国際社会がなすべきことは──本セッションでは、現在の実態を把握するとともに、決議10周年の節目に発信されるイニシアチブなどの取り組み、説明責任のメカニズム、不処罰の現実など、多角的な視点から議論する。 
 
パネリスト:
スリム・スラマ(世界保健革新サミット(WISH)代表責任者)
越智萌(立命館大学大学院国際関係研究科 准教授)
マリア・ゲバラ(国境なき医師団 医療主事) 他
モデレーター:
村田慎二郎(国境なき医師団日本 事務局長)
5月26日(火)17:00~18:30
【オンラインセッション3】 災害・紛争下におけるメンタルヘルス─見えない傷にむきあう
 
生涯のうちに5人に1人が何らかの精神疾患を経験するとされている。そしてこの割合は、紛争や自然災害などの人道危機を経験した人びとではさらに高くなる。 
 
コロナ禍以降、世界的にメンタルヘルスへの関心が高まり、多くの国で関連する政策が整備・強化されてきた。しかし、実際の人道危機の状況下では、支援を必要としていると回答する人が半数を超える一方で、適切な心理社会的支援にアクセスできた人は約20%にとどまっていたとの報告がある。また、低・中所得国では、メンタルヘルスおよび心理社会的支援に割かれる予算は、公的保健支出全体のわずか2%程度に過ぎず、十分な支援が行われていないという課題が浮き彫りになっている。このニーズと支援との不均衡をもたらす原因はどこにあるのだろうか。 
 
本セッションでは、心理社会的支援に関わるさまざまな演者が、国内外の緊急援助現場におけるメンタルヘルスの現状、考察、課題を議論し、改めて心理社会的支援の必要性を訴えるとともに今後の心理社会的支援強化に向けた方向性を検討する。 
 
パネリスト:
桑山紀彦(海老名こころのクリニック 院長 / 特定非営利活動法人 地球のステージ 代表理事)
宮地尚子(一橋大学大学院社会学研究科・特任教授)
高橋晶(筑波大学附属病院 茨城県災害・地域精神医学研究センター 教授 / 茨城県立こころの医療センター 地域・災害支援部長)
福島正樹(国境なき医師団 心理士)
モデレーター:
原田奈穂子(岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科 看護科学分野 教授)
5月26日(火)19:00~20:30
【オンラインセッション4】 南スーダン─縮小する国際援助と増大する人道ニーズ
 
現在、南スーダンは極めて深刻で複合的な人道危機に直面している。地域レベルで激化する紛争、繰り返される洪水、経済の悪化、大規模な感染症の流行、そして隣国スーダンの内戦の波及によってこの危機は形作られてきた。 
2025年12月末の時点で、推定930万人、すなわち人口の約70%が人道支援を必要としており、戦闘の激化により2025年に新たに34万2000人以上が避難を余儀なくされ、保護上のリスクが急増する一方で、人道アクセスは深刻に制限された。 
 
公衆衛生の状況も急速に悪化。南スーダンでは独立以来最悪となるコレラ流行が発生し、少なくとも560万人が保健医療支援を必要とする中、世界的な援助資金削減や国際的関心の低下によって、保健・医療セクターでは2025年に必要とされた援助額の25.1%しか資金が集まらなかった。 また、ジョングレイ州では、現在、暴力が再び激化し、医療への攻撃や大規模な避難が発生するとともに、MSFの活動においてもワクチン接種、マラリア予防活動など一部医療活動を停止せざるを得ない状況となっている。 
 
南スーダンは、2011年の独立時から国際社会の注目と支援を受け、日本からも自衛隊が国連平和維持活動(PKO)として派遣され、数多くのNGOが現地で活動し、メディアでも比較的報道が多かった国である。しかし近年、国際的な関心は薄れ、日本においても南スーダンは忘れられた危機となりつつある。 
 
本セッションでは、紛争の悪化、人道スペースの縮小、そして資金削減の影響が重なり合う中で、人びとの苦境がいっそう深まる南スーダンの現状を取り上げる。かつて国際的な関心を集めたこの国に、再び目を向ける機会としたい。
 
パネリスト:
山元めぐみ(特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン 南スーダン現地事業責任者)
クリストフ・ガルニエ(国境なき医師団 南スーダン代表) 他
モデレーター:
小林綾子(上智大学総合グローバル学部総合グローバル学科 准教授)
 
空爆を受けた、南スーダン・ジョングレイ州のMSFの病院=2026年2月4日 (C) MSF
 
5月27日(水)16:30~18:20 ※オンラインは18:05まで
【ハイブリッドセッション&クロージング】 変容する世界秩序と人道主義のこれから
 
現在、国際秩序および国際援助は大きな転換期にある。その象徴的な動きの一つが米国の対外援助政策の急激な変化である。2025年に USAID が事実上解体され、対外援助は国益と安全保障を前面に押し出す体制へ再編されつつある。その結果、人道支援や国際保健の現場では援助活動の縮小・中断が相次いでいる。このような状況下で、援助は政治的手段として利用される色合いを強め、人道原則を維持することはこれまで以上に困難になっている。
 
本セッションでは、こうした変容する世界秩序を背景に、人道主義の価値と意義を改めて問い直し、これからの人道援助がいかなる方向を指すべきか、会場とオンラインの参加者を交えて考える。
 
講演:
三牧聖子(同志社大学大学院 グローバル・スタディーズ 研究科 教授)
パネリスト:
藤谷健(国際基督教大学(ICU)客員教授 / 朝日新聞 with Planet編集部 シニアエディター)
庄山桃子(パリ政治学院 政治学・中東地域研究学士課程修了 / King’s College London 分断された社会における紛争解決学修士課程進学予定)
末藤千翔(国境なき医師団日本 アドボカシー/メディカル・アフェアーズ/緊急対応部門ディレクター)
モデレーター:
榎原美樹(ジャーナリスト/ドキュメンタリスト、元NHK記者・キャスター)
 
 
※登壇者は随時更新され、最新情報をウェブサイトに掲載します。
 
人道援助コングレス東京2026 ~変容する世界秩序と人道主義のこれから~
https://www.msf.or.jp/congress/