日々美食を楽しんでいたおれは、一夜にして「車椅子の文豪」となった――。心臓を病み、頸椎を損傷して車椅子の生活になろうとも、なおも最前線で敢然と書き続ける老文豪の超リアルライフ!
雑誌連載時からあまりに挑発的かつ赤裸々な記述に話題騒然となった「老耄美食日記」に加え、あの『百年の孤独』解説や大江健三郎回想、そして老境の心情告白など、同時期のエッセイ類も併録し、九十歳を迎えた文豪の充実の文業を集成。卒寿を越え、重い怪我や病を得ても、読者を楽しませようとする作家魂が大炸裂する稀有な一冊!
 「次の日から不幸が始まった。肩の痛みをなくそうとしてセデスを四錠も服んでしまったのだ。途端に気分が悪くなったものの、その日はなんとかして韓国料理の「モクチャ」に行った。光子はマッコリ、おれは梨のジュース。チヂミ、プルコギ、サムゲタン、スンデ、などで腹がいっぱいになり、もう食べられないと言っていながら冷麺がくると光子は夢中で食べた。帰宅して寝るまではなんともなかったのだ。二十三日土曜日の朝、いつも通り起きて廊下を歩こうとした。からだの自由がまったくきかなくなっていた。 小箪笥の上に倒れ、顔面に無惨な傷を負い、廊下で寝たきりになり、救急車で神戸医療センターに運ばれる。
 休みの日だったが、当直の医師が面倒を見てくれた。点滴や、いろんな検査を受けた。原因は腎臓だった。薬の服みすぎで悪化していたところに大量のセデスで、からだ全体の自由が失われたのだった。入院を薦められたがおれは拒否した。光子が心配だったからである。(中略)
 次の日から寝たきりの生活となる。こうなれば美食どころではない」
(本書「九十歳で見る幻燈」より)
 
書籍内容紹介
二〇二四年三月二十三日。数々の傑作話題作を著した八十九歳の作家は、老いと戯れながら、愛妻や仕事仲間と美食を楽しみ、『百年の孤独』等現代文学を論じて倦まずにいたが、この日自宅で転倒して車椅子の生活となった──。しかし不敵きわまる作家魂でその日々を赤裸かつ挑発的に描き続けた空前絶後の老文豪リアルライフ!
 
■著者紹介:筒井康隆(ツツイ・ヤスタカ)
1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。1997年、パゾリーニ賞受賞。 2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。2002年、紫綬褒章受章。2010年、菊池寛賞受賞。2017年、『モナドの領域』で毎日芸術賞を受賞。他に『家族八景』『敵』『不良老人の文学論』『老人の美学』『ジャックポット』『カーテンコール』『筒井康隆自伝』等著書多数。
■書籍データ
【タイトル】筒井康隆、九十歳のあとさき
【著者名】筒井康隆
【発売日】4月22日
【造本】四六変小ハードカバー 232ページ
【定価】1815円(税込)
【ISBN】978-4-10-314537-0
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/314537/

雑誌連載時からあまりに挑発的かつ赤裸々な記述に話題騒然となった「老耄美食日記」に加え、あの『百年の孤独』解説や大江健三郎回想、そして老境の心情告白など、同時期のエッセイ類も併録し、九十歳を迎えた文豪の充実の文業を集成。卒寿を越え、重い怪我や病を得ても、読者を楽しませようとする作家魂が大炸裂する稀有な一冊!