田山花袋が女性の弟子に抱いた欲望を描いた私小説『蒲団』は、なぜ明治社会をあれほど熱狂させたのか。サントリー学芸賞を受賞した俊英が放つ「驚きの文学史」!
近代日本文学の研究者で、上智大学教授の木村洋さんが、「自然主義文学」の知られざる歴史を描く『「蒲団」の時代:自然主義とは何だったのか』(新潮選書)を、新潮社から4月22日(水)に発売します。
富国強兵と立身出世の時代に、田山花袋に代表される自然主義文学は、厭世・煩悶・性欲・虚無などの人間の暗部をあるがままに描いて、明治社会にセンセーションを巻き起こしました。これまで非社会的で内向的な文学に過ぎないと批判されてきた自然主義文学が、じつは窒息寸前の社会を再生した一大精神運動だったことを、本書は膨大な文献調査から明らかにします。
歴史上かつてないほど潔癖な道徳に覆われ、文学の世界でも「政治的正しさ」が求められがちな現代社会において、あらためて文学の存在意義を問い直す、きわめてアクチュアルな文学史です。
■目次
第1章 父と子の劇場――1893~1906年
1 明治日本の分断
2 不健全なる北村透谷
3 高山樗牛のニーチェ主義
4 藤村操の自殺と綱島梁川
第2章 不思議なる宇宙――1906年
1 厭世自殺の馬鹿青年
2 国木田独歩『独歩集』『運命』
3 島崎藤村『破戒』
第3章 野獣と悪魔――1907年
1 田山花袋「蒲団」
2  正宗白鳥と真山青果
3 評論の自然主義
第4章 文士の天下――1908年
1 発禁問題
2 博文館、『中央公論』、新潮社
3 偉人化する文学者
第5章 真摯に告白せよ――1909~10年
1 流行する告白小説
2 個人主義の促進剤
3 自然主義対政府
第6章 破壊の後で――1910年代
1 自然主義の円熟
2 古い悴と新しい悴
3 文化と共同体
■著者コメント
自然主義をめぐる歴史が、多少なりとも現代人たちの生活に何らかの励ましを与えることを、筆者はひそかに期待している。(「はじめに」より)
 
■著者紹介:木村洋(キムラ・ヒロシ)
1981年、兵庫県生まれ。高校時代に丸谷才一の本に出会い、文学研究に興味を抱く。2010年、神戸大学大学院人文学研究科博士後期課程修了。 熊本県立大学文学部准教授などを経て、上智大学文学部教授。博士(文学)。専門は日本近代文学。著書に『文学熱の時代――慷慨から煩悶へ』(名古屋大学出版会、サントリー学芸賞)、『変革する文体――もう一つの明治文学史』(名古屋大学出版会)。
 
■書籍データ
【タイトル】「蒲団」の時代 自然主義とは何だったのか
【著者名】木村洋
【発売日】2026年4月22日(水)
【造本】新潮選書(四六判変型ソフトカバー)
【本体定価】1,980円(税込)
【ISBN】978-4-10-603944-7
【URL】https://www.shinchosha.co.jp/book/603944/