株式会社日立製作所(執行役社長兼CEO:徳永 俊昭、以下、日立)とパナソニック コネクトグループ(グループCEO:ケン・セイン、以下、パナソニック コネクト)は、個人が自身の身元情報や資格・属性情報などをデジタル上で安全に管理・提示できるデジタル身分証の実現に向け、協業を拡大します。具体的には、日立の公開型生体認証基盤PBI(※1)とパナソニック コネクトが持つ世界最高水準(※2)の顔認証技術、および開発中のウォレットアプリを融合させることで、個人が自らの情報を安全に管理・利活用できる「自己主権型アイデンティティ」の実現に向けた新しいデジタル認証サービスの実現を目指します。これにより、個人はオンライン・オフラインを問わず、行政手続きやサービス利用時の本人確認、イベントや施設の入退場、資格・年齢確認などにおいて、必要な情報だけを安全に提示でき、手続きの簡素化により日常の利便性を高めることができます。

デジタル化の急速な進展により、オンラインでの取引やサービス利用は社会インフラとして不可欠な存在となっています。一方で、従来の本人確認や属性証明は、ID・パスワードなどユーザーの記憶に依存しており、なりすましのリスクに加え、サービスごとに異なるパスワード管理の煩雑さや、特定の事業者へ個人情報が集中することで、情報漏えいや不適切な利用が起きた際に重大なプライバシー侵害を招く懸念などの課題を抱えています。

こうした課題を背景に、個人が自身の身元情報や資格・属性情報を管理し、必要な場面で必要最小限の情報だけを提示できる「自己主権型アイデンティティ」と、それを実装するDigital Identity Wallet(以下、DIW)やデジタル証明書(Verifiable Credential)が注目されています。とりわけ、欧州における法制度化の進展に加え、W3C(※3)をはじめとする国際標準化や、公的・民間双方での実証・実装の広がりを背景に、社会全体での利活用を見据えた次世代の本人確認・属性証明の仕組みとして、その重要性が高まっています。

しかし一般的なDIWでは、秘密鍵をスマートフォンなどの端末内で管理する必要があり、端末紛失時の不正利用リスクや、復元用パスワードの管理負担といった新たな課題も指摘されています。

日立とパナソニック コネクトは、2023年より生体情報を鍵として活用する日立のPBIと、パナソニック コネクトの顔認証技術の融合(※4)による安心・安全かつ快適なサービス創出に向けて協業(※5)を進めてきました。このたび両社は、より安全で使いやすい次世代のDIWの実現に向けて協業を拡大し、誰もが安心して利用できるデジタル身分証の社会実装を目指します。

両社の協業により、端末の紛失やパスワード管理に不安を感じることなく利用できる「デジタル身分証」の実現を目指します。DIWと、そこに格納されるデジタル証明書を用いたデジタル身分証を扱う上で不可欠な秘密鍵は、一般的にはユーザー自身のスマートフォンやPCなどの端末で管理する必要があり、端末の紛失・盗難による不正利用や、復元用パスワードの管理負担が大きな課題となっています。日立のPBIは、取引や認証のたびに本人の生体情報から秘密鍵を生成し、処理完了後には即座に破棄する仕組みです。日立のPBIにより生成された秘密鍵を活用し、パナソニック コネクトが提供するウォレットアプリで認証を行うことで、鍵の漏えいや不正利用のリスクを極小化できます。

比較項目従来のDIW両社で目指す次世代のDIW鍵の保管場所端末内部(ストレージやセキュアサブシステム)端末に保存しない(生体情報を復元できない形に変換したもののみサーバーに保存)セキュリティリスク・端末紛失による鍵の流出リスク・マルウェアによる鍵の窃取・端末を紛失しても鍵は流出しない・鍵(生体情報から生成したもの)はもとに戻せず悪用されないユーザー体験・複雑なパスワード管理が必要・復元コードの保管が必須・顔認証により認証完了・複雑なパスワードや復元コードの管理が不要(認証のたびに生体情報から鍵生成)・復元できない形に変換して保管し、生体情報を残さない

端末内部(ストレージやセキュアサブシステム)

・端末紛失による鍵の流出リスク・マルウェアによる鍵の窃取

本協業で提供を目指すデジタル身分証は、公共分野をはじめ、金融サービスの利用など、さまざまな業界での活用が可能です。

公共分野では、行政手続きにおける本人および属性の証明をデジタル化することで、子育て世帯や高齢者などがこれまで書類で提出していた証明書を、顔認証だけで瞬時に提示できる世界を目指します。さらに、将来的には、マイナンバーカードの読み取りと顔認証が可能なパナソニック コネクトのプロダクトと連携することで、スマートフォンを所持していない高齢者であっても、マイナンバーカードと顔認証による安全・快適な本人確認や、行政サービスの利用が可能になります。例えば、災害時においても、同端末と連携することで、避難所での本人確認や支援物資の配給などを、顔認証により円滑に行うことを目指します。両社は、こうした公共分野におけるユースケース開発の一環として、自治体・公共Week2026(※6)に出展し、行政・公共サービスや防災分野での具体的な活用イメージを提示します。

また、金融分野においては、金融機関での本人確認やローン審査、交通事業者による特別割引の適用などにおいて、デジタル身分証を提供することで、手続きのオンライン化や業務効率化を目指します。

生成AIやAIエージェントの進化により、利便性が向上する一方で、ディープフェイクによるなりすましや、AIが本人の意思を超えて契約や決済を実行してしまうといった、新たなリスクが顕在化しています。

両社はこうした課題に対し、「その行為が本当に本人の意思によるものか」を技術的に確認できる仕組みとして、本人の顔による生体認証(PBIによる電子署名)を導入することで、AIやシステムの不正操作・なりすましといったリスク防止に取り組みます。

両社は、今回の協業拡大を通じて、デジタル身分証をはじめとする次世代のデジタル認証サービスの社会実装を加速していきます。2026年度中に実証やユースケースの検証を行い、2027年度以降の本格的な実装・サービス展開を目指します。

日立は、本協業を通じて、PBIを中核としたデジタルアイデンティティ領域での事業拡大を図り、安心・安全なデジタル社会の実現を目指します。さらに将来的には、AIを活用し、移動履歴などの観光・交通データと決済・ポイントなどの金融データを掛け合わせた最適なサービスの自動提供などに取り組むことで、AIと日立の生体認証に関するドメインナレッジを掛け合わせるLumada 3.0を通じて、持続的な価値創出に貢献していきます。

パナソニック コネクトは、顔認証を中心とした生体認証技術・プロダクトの強みを活かし、公共・産業・交通など多様な業界や社会インフラにおける本人確認の高度化と運用効率化を推進します。利用者の利便性とセキュリティの向上の実現によって、社会全体のデジタル信頼基盤の強化に貢献していきます。

※2 2022年11月6日に公開されたNIST FRTE 1:1評価結果において、Mugshot(人種・経年変化を含む正面顔データ。他人受入率10万分の1)で世界1位を獲得。更に、2024年3月26日に公開されたNIST FRTE 1:N評価結果(検索精度)において、Mugshot(経年変化を含む正面顔データ。160万名登録)、Border(顔の向き変化や画質劣化を含む顔データ。160万名登録)の2つの評価カテゴリで世界1位を獲得。

※3 W3C(World Wide Web Consortium):ウェブ技術に関する国際的な標準化団体。ウェブの相互運用性を確保するための仕様策定を行っており、Verifiable Credentialを含むデジタル証明・アイデンティティに関する国際標準の策定も進めている。

※4 日立の公開型生体認証基盤(PBI)に対応した「生体認証統合基盤サービス」を活用。

※6 2026年5月13日(水)~15日(金)東京ビッグサイトにて開催。

日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。 2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、https://www.hitachi.co.jp/をご覧ください。

パナソニック コネクトグループはパナソニックグループのB2Bソリューションの中核を担う企業集団です。グローバルで約29,200名の従業員を擁し、売上高は1兆3,332億円(2024年度)を計上しています。「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」をパーパス(企業としての存在意義)として掲げ、製造業100年の知見とソフトウェアを組み合わせたソリューションや高度に差別化されたハードウェアの提供を通じて、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメントのお客様をつなぎ、「現場」をイノベートすることに取り組んでいます。また、人と自然が共存できる豊かな社会・地球の「サステナビリティ」と、一人ひとりが生きがいを感じ、安心安全で幸せに暮らすことができる「ウェルビーイング」の実現を目指しています。

また、「人権の尊重」と「企業競争力の向上」を目的に、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)推進を経営戦略の柱のひとつに位置づけ、多様な価値観を持つ一人ひとりがイキイキと力を発揮できる柔軟性の高い企業文化の改革に取り組んでいます。