日本電気株式会社(以下NEC)は、社会的価値が求められる製品や空間(環境製品など)を対象に、そこに内在する文脈をひも解き、生活者から選ばれる機会をつくる活動を行っています。データの活用や価値の証明方法に着目し、NECはお客さまの実務現場に根ざした課題整理と仮説検証を行い、学術的な視点からの検証および妥当性の研究を、明治大学商学部 加藤拓巳准教授と共同で進めてきました。
今回は、住宅を長く活用していくことが求められる時代において、中古住宅の価値が十分に評価されにくい要因に着目しました。本検証では、中古住宅の魅力を左右する要因として、性能や設備といった機能的価値に加え「住まいに込められた背景やエピソード」に着目し、そのストーリーに共感しながら未来への暮らしを重ねていく”サステナブルな住みこなし”を実現するための検証を展開しました。加えて、そこに自然と調和する環境配慮建材を採用することが、次の住み手の評価にどのような影響を与えるのかを検証しています。
日本では、スクラップ・アンド・ビルドを中心とした都市・住宅開発が経済成長を支えてきた側面があります。しかし、その副作用として、環境負担に加え、莫大なコスト、さらには街に根付く文化の喪失も懸念されます。人口減少と物価・人件費高騰の時代においては、環境負担を減らし、低コストで街を発展・維持するため、既存の建築・住宅を長く利用していく施策が求められます。中古住宅市場はその使命を持ち、環境配慮建材を導入したリフォーム技術も開発が進んでいます。しかし、一軒家では依然として新築の人気が高く、次の買い手が見つからず、新築の立て直しになる例が散見されます。
そこで、本研究は、中古住宅の魅力の源泉が「ストーリー(物語)」にあることを示しました。前オーナーの嗜好に基づくこだわりを際立たせることで、価値観に共感した人々が住宅の魅力を感じやすくなります。当該論文では、前オーナー様の「花を楽しむ」こだわりのために、自然と調和する環境配慮建材を導入したストーリーテリングによって住宅の魅力が高まりました。本研究成果は、NECと明治大学商学部加藤拓巳准教授の共同研究として、International Conference on Industry Science and Computer Sciences Innovationに採択され、Procedia Computer Science (Elsevier)から出版されます。
 
出典:Kato, T., Hattori, A., Tamura, C., Kajihara, F., Takatsuka, K., Chiba, Y. (2026). A new sustainability concept in the housing industry: Shifting from eco-friendly homes to homes for enjoying nature. Procedia Computer Science, 1-9. (in press)
 
本研究のポイント
環境配慮と経済発展はトレードオフと考えられてきましたが、環境問題の深刻化を受けて、現在はその両立が求められる時代に突入しました。その動向は建築・住宅業界にも該当します。日本では、スクラップ・アンド・ビルドを中心とした都市・住宅開発が経済成長を支えてきた側面があります。しかし、その副作用として、環境負担に加え、莫大なコスト、さらには街に根付く文化の喪失も懸念されます。
 
そこで、人口減少と物価・人件費高騰の時代において、環境負担を減らし、低コストで街を発展・維持するため、既存の建築・住宅を長く利用していく施策が求められます。中古住宅市場はまさにその使命を持ち、環境配慮建材を導入したリフォーム技術も開発が進んでいます。しかし、一軒家では依然として新築の人気が高く、次の買い手が見つからず、新築の立て直しになる例が散見されます。環境配慮建材の環境価値を訴求しても、消費者視点では十分な魅力として伝わりにくいことがあります。
 
本研究は、環境配慮建材が導入された中古住宅の魅力を高めるために、ストーリーテリングの知見を導入しました。人の想いや歴史は伝播性が高く、それを「ストーリー(物語)」として訴求することで共感を生む効果が期待されます。例えば、老舗ホテルを継承する担い手が現れる時の意義は歴史やそこで生まれた文化の継承であることが多いです。その効果は一般的な一軒家でも成立する可能性に着目しました。
 
検証は、オンライン調査環境で、首都圏に在住する20-60代の900人を対象としたランダム化比較試験を採用しました。環境配慮群にはサステナビリティ(図1)、ストーリー群には花が好きな前オーナー様の「自宅で花を楽しむ」こだわり(図2)を提示しました。物件の内容に差はつけないために、前オーナー様(図3)と物件(図4)の情報は両群で共通に使用しました。その結果、環境配慮よりもストーリーを訴求する方が中古住宅の魅力が高まることが確認されました。同じ物件情報であっても、冒頭での際立たせ方によって価値が変動することを実証しました(図5)。
 
利他的意義の大きいエシカル消費を促進するには、結局は消費者の利己的意義に目を向けなければなりません。これは「エシカル消費のパラドックス」と言えます。しかし、それを実現する具体的な知見が十分でない現場があります。本研究は、中古住宅市場を対象とした1つのアプローチとして、ストーリーの重要性を提唱しました。これからの日本は、ますます人口減少が進み、さらに物価・人件費が高騰する懸念があります。その時代を見据え、既存の建物・住宅が長く愛されるように、設計・訴求する取り組みが必要になっていくと考えられます。
 
図1.環境配慮を訴求する中古住宅の情報
 
図2.「花を楽しむ家」を訴求する中古住宅の情報
 
図3. 前オーナー様の紹介
 
図4. 住宅のこだわり
 
図5. 検証の結果
 
今後の取り組み
NECは今後も、データと科学的検証を通じて、環境と生活者の双方にとって価値ある製品・空間づくりに取り組んでいきます。社会課題の解決と経済性の両立を見据え、企業・地域・研究機関との共創を通じて、生活者に届く表現や意思決定につながる具体的な示唆の導出に挑戦していきます。
 
 
 
この記事に関連するページ
加藤拓巳准教授Webサイト:https://takumi-kato.com/
サーキュラーエコノミー ブランドサイト:
https://circular-economy-business.com/validation/vol003
NEC GX(グリーントランスフォーメーション):
https://jpn.nec.com/energy/gx-solution/index.html
 
本件のお問い合せ
NEC GX事業開発統括部
E-Mail:gx-pj@ptg.jp.nec.com