顧客理解を阻む本当の壁は「気まずさ」と「スキル不足」だった
合同会社A&C(代表:森 陽)は、従業員1,000名未満の企業に勤務する経営者・役員・事業部長・マーケティング責任者257名を対象に「顧客理解に関する実態調査」をインターネット調査(Fastask)で実施しました。
本稿では、全体集計に加え、回答者の役職別クロス集計の結果を報告します。
調査サマリー
80.2%が「顧客に選ばれている理由」をデータで説明できない。ただし経営者は「考えたことがない」、マーケ責任者は「社内の意見がバラバラ」と、認識の中身が役職によって異なる。
経営者の69%が顧客インタビュー未実施。55%は「やろうと思ったことすらない」。一方、マーケ責任者の65%はインタビュー経験がある。同じ会社の中で、顧客理解への温度差が大きい。
マーケ施策の空振りを、役員の91%・マーケ責任者の86%が経験。経営者は60%。施策の成果が出ていない実感は現場側に偏っており、意思決定者ほどその痛みを感じていない。
調査概要
調査名称 顧客理解に関する実態調査
調査方法 インターネット調査(Fastask)
調査期間 2026年3月
調査対象 従業員1,000名未満の企業に勤務する経営者・役員・事業部長・マーケティング責任者
スクリーニング 役職(経営者~マーケティング責任者)および従業員規模(1,000名以上を除外)で抽出
有効回答 257名
回答者内訳 経営者・代表取締役100名 / 役員・取締役48名 / 事業部長・部長83名 / マーケティング責任者・マネージャー26名
※四捨五入のため合計が100%にならない場合があります
調査結果
Finding 1|80%が「説明できない」。だが、その中身が違う
「顧客がなぜ自社の商品・サービスを選んでいるか」をデータに基づいて説明できるかを聞いたところ、「明確に説明できる」はわずか19.8%。残りの80.2%は、程度の差はあれ「説明できない」状態にあります。
 
ここまでは全体傾向ですが、役職別に内訳を見ると様相が変わります。
経営者は、「正直よく分かっていない」19.0%と「考えたことがない」21.0%を合わせて40%が問題の存在自体を認識していません。

一方、マーケティング責任者は「社内で意見がバラバラで統一見解がない」が42.3%に達しました。全体平均13.6%の3倍以上です。

同じ「説明できない」でも、経営者は「気づいていない」、マーケ責任者は「バラバラだと分かっている」。この認識の非対称性が、後述するすべての問題の起点になっています。
回答 全体 経営者 役員 部長 マーケティング責任者
明確に説明できる 19.8% 19.0% 16.7% 22.9% 19.2%
なんとなく分かるがデータ裏付けなし 37.0% 35.0% 41.7% 41.0% 23.1%
社内で意見がバラバラ 13.6% 6.0% 8.3% 16.9% 42.3%
正直よく分かっていない 14.8% 19.0% 20.8% 8.4% 7.7%
考えたことがない 14.8% 21.0% 12.5% 10.8% 7.7%
Finding 2|経営者の47%がペルソナ未作成。作っている人も「勘」が頼り
顧客像(ペルソナ・ターゲット)の作成方法を複数回答で聞いたところ、全体の36.2%が「明確なペルソナは作成していない」と回答しました。
 
役職別で見ると、経営者のペルソナ未作成率は47.0%と突出しています。ペルソナを作っている経営者の中でも最多の手法は「経営者・担当者の経験と勘」で36.0%。つまり、作っていてもデータに基づいていません。

対照的に、マーケティング責任者で「経験と勘」を選んだ人は0%。顧客への直接インタビューが30.8%で全役職中最も高く、ペルソナ未作成率も19.2%と最低でした。

経営者は「勘で決めている」か「そもそも作っていない」。マーケ責任者はデータで作ろうとしている。この方法論の断絶が、Finding 1で見た「社内の意見がバラバラ」という実感につながっています。
 
作成方法 全体 経営者 役員 部長 マーケティング責任者
経験と勘 22.6% 36.0% 22.9% 13.3% 0%
営業からのヒアリング 24.9% 12.0% 39.6% 32.5% 23.1%
Webアンケート 19.8% 10.0% 29.2% 26.5% 19.2%
顧客への直接インタビュー 21.0% 17.0% 27.1% 19.3% 30.8%
購買データ・CRM分析 14.4% 11.0% 16.7% 16.9% 15.4%
SNS・レビュー分析 7.4% 7.0% 12.5% 7.2% 0%
ペルソナ未作成 36.2% 47.0% 25.0% 34.9% 19.2%
Finding 3|インタビューの障壁は「費用」ではない。「気まずさ」と「スキル不足」
顧客に「なぜうちを選んだか」を直接聞いたことがあるかを尋ねたところ、全体の50.2%がインタビュー未実施でした。

役職別のギャップが最も顕著に出たのがこの設問です。

経営者の69.0%がインタビュー未実施。内訳は「やりたいが未実施」14.0%に対し、「やろうと思ったことがない」が55.0%。過半数が、顧客に直接聞くという選択肢自体を持っていません。
 
一方、マーケティング責任者は65.4%がインタビュー経験あり(定期実施23.1%+過去に数回42.3%)。「やろうと思ったことがない」はわずか7.7%でした。
回答 全体 経営者 役員 部長 マーケティング責任者
定期的に実施 20.2% 9.0% 33.3% 25.3% 23.1%
過去に数回 29.6% 22.0% 29.2% 34.9% 42.3%
やりたいが未実施 14.0% 14.0% 8.3% 13.3% 26.9%
やろうと思ったことがない 36.2% 55.0% 29.2% 26.5% 7.7%
インタビューを阻む障壁の正体
 
「やりたいが実施できていない」と回答した36名に、その理由を複数回答で聞きました。

上位は「忙しくて手が回らない」38.9%、「顧客に直接聞くのが気まずい・聞きづらい」36.1%、「分析する人材・スキルがない」36.1%。
費用を理由に挙げたのはわずか5.6%(2名)。インタビューの障壁は予算ではなく、「時間」「心理」「スキル」の3つに集約されます。

やり方は分かる、費用も出せる、でも踏み出せない--これが「やりたいのにできない」層の実態です。
障壁(複数回答) 全体(n=36)
忙しくて手が回らない 38.9%
顧客に聞くのが気まずい 36.1%
分析する人材・スキルがない 36.1%
効果があるか分からない 19.4%
やり方が分からない 8.3%
費用が高い 5.6%
Finding 4|施策の空振りは、経営者以外の全員が知っている
直近1年間のマーケティング施策について、「期待通りの成果が出なかった」経験を聞きました。
マーケティング施策を実施している回答者に限定すると、全体の77.8%が空振りを経験しています。
 
役職別に見ると、役員91.2%、マーケティング責任者86.4%、部長82.0%と、現場を見ている層の8割超が「成果が出なかった施策がある」と答えています。
経営者は60.0%。唯一、他の役職から大きく離れて低い数字です。

Finding 1~3で描いた構造--経営者は顧客理解の問題に気づいていない、ペルソナは勘で作っている、インタビューはやろうと思ったことすらない--の帰結が、ここに出ています。

顧客理解の不在が施策の空振りを生んでいるが、その空振りの実感すら、意思決定者である経営者には届いていません。
役職 施策実施者数 空振り経験あり
役員・取締役 34名 91.2%
マーケ責任者・Mgr 22名 86.4%
事業部長・部長 61名 82.0%
経営者・代表取締役 50名 60.0%
調査が浮き彫りにした構造 
「顧客理解が不足している」という単一の課題だけではなく、同じ会社の中で役職によって認識が異なるという構造的な断絶も調査から見えてきました。
 
1. 経営者は、顧客理解が不足していること自体に気づいていない。40%が「分からない」「考えたことがない」と回答し、55%がインタビューをやろうと思ったことすらない。
 
2. マーケ責任者は、問題を認識しているが動けない。42%が「社内の意見がバラバラ」と感じ、インタビューをやりたい層の障壁は「費用」ではなく「気まずさ」と「スキル不足」。
 
3. 施策の空振りという実害は、経営者以外の全員が経験している。役員91%、マーケ責任者86%、部長82%。しかし意思決定者である経営者は60%にとどまる。
 
この構造は、個人の能力の問題ではありません。経営者は経営に忙しく、マーケ担当は施策の実行に追われ、「顧客に直接聞く」という行為が組織の中で誰の責務にもなっていないことが根本にあります。
 
なお、この課題は日本固有のものではありません。Bain & Company社の362社調査では、80%の企業が「自社は優れた顧客体験を提供している」と自己評価する一方、顧客側でそう感じていたのはわずか8%という結果が報告されています。
顧客に聞いて施策を変えたことで、EC売上が10倍になった事例
 
あるギフトEC企業は、主力カテゴリの広告パフォーマンスに伸び悩んでいました。広告もLPも「品質の高さ」を軸に設計していましたが、ROAS(広告費用対効果)は低迷。社内では施策レベルの改善ばかりが議論されていました。

しかし本当の問題は施策ではなく前提でした。

顧客インタビューを実施したところ、顧客が商品を選んでいた理由は「品質」ではなく、「贈り先に"ちゃんとした人だ"と思われたい」という社会的な承認欲求。事業者の認識と顧客の本音に大きなギャップがありました。

ギャップに気づいた後、訴求軸を「品質」から「選ばれている安心感」に切り替え、広告クリエイティブ・LP・ターゲティングの前提をすべて再設計。結果、そのカテゴリの広告経由売上は前年比で約10倍に成長しました。
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会社名:合同会社A&C
代表者:森 陽(Akira Mori)
事業内容:マーケティングコンサルティング、AIインタビュー分析ツール「InsyncAI」の開発・運営
会社URL:https://acmkforce.com
お問い合わせ先:akira.mori@acmkforce.com
引用・出典
1.
合同会社A&C「顧客理解に関する実態調査」(Fastask、経営者~マーケティング責任者257名対象、2026年3月実施)
2.
Bain & Company "Closing the Delivery Gap"(362社調査)

Finding 1|80%が「説明できない」。だが、その中身が違う

顧客理解の不在が施策の空振りを生んでいるが、その空振りの実感すら、意思決定者である経営者には届いていません。

そのカテゴリの広告経由売上は前年比で約10倍に成長しました。