MiZ株式会社(本社:神奈川県鎌倉市)は、聖マリアンナ医科大学 神経精神科、川崎市立多摩病院 精神科、東京科学大学 医学部との共同研究により、水素ガス吸入が統合失調症モデルマウスの脳内酸化ストレスを抑制する可能性を示した研究成果を発表いたしました。本研究成果は、2026年4月、精神神経薬理学分野の学術誌『Neuropsychopharmacology Reports(Wiley Publishing)』(注1)に掲載されました。
 当社は、本知見および最新の安全性研究に基づき、爆発のリスクを排除した「低濃度水素吸入」の普及を推進してまいります。
 
研究の背景:水素による統合失調症の「セントラルハブ」への介入
 統合失調症は、幻覚や妄想などの陽性症状に加え、意欲低下や認知機能障害を伴う慢性的な精神疾患です。近年の研究では、病態の中核として「酸化ストレス」「神経炎症」「NMDA受容体機能不全(※)」が互いに悪影響を及ぼし合う、いわゆる「セントラルハブ」の存在が指摘されています(図1)。したがって、病態の中核にある酸化ストレスをいかに抑制するかが治療のカギとなります。
 水素分子は、酸化ストレスの原因物質であるヒドロキシルラジカルを水分子に変換することができます (H2 + 2・OH → 2H2O)。したがって、水素の吸入により脳内で発生するヒドロキシルラジカルを消去し、酸化ストレスを低減することが期待されます。本研究は、動物実験により、水素分子が脳内のヒドロキシルラジカルを消去し、マウスの統合失調症様行動にどのような影響を及ぼすかを検証したものです。
 (※)NMDA受容体とは、脳の神経細胞表面に存在するイオンチャネル型グルタミン酸受容体の一種で、シナプス可塑性の形成に不可欠なタンパク質です。NMDA受容体機能不全は、学習や記憶に悪影響をもたらします。
図1 統合失調症の脳は慢性的なストレス状態にあり、これが脳機能に影響を及ぼすと報告されています。慢性的なストレスの主因はヒドロキシルラジカル(・OH)を原因物質とする酸化ストレスで、ヒドロキシルラジカルによる生体物質の無差別な酸化が神経炎症とNMDA受容体機能不全を誘起し、さらに両者が相互に影響を及ぼす悪循環を生じ、脳機能障害を悪化させると報告されています(Int J Mol Sci. 2025, Nov 18;26(22):11139)。
 
研究の概要と成果:低濃度水素吸入によって脳全体のヒドロキシルラジカル抗酸化能が有意に回復
 本研究では、統合失調症モデルマウスに対し、低濃度(7%)の水素ガスを1日90分、4週間にわたり吸入させる実験を行いました。その結果、モデルマウスで有意に低下していた、脳全体のヒドロキシルラジカル抗酸化能が、水素吸入によって正常域まで回復することを確認いたしました(図2)。これは、水素が脳内に到達し、毒性の強いヒドロキシルラジカルを選択的に消去することで、低下した抗酸化能を正常化させたことを示唆しています。
図2 統合失調症モデルマウスに低濃度水素(7%)を吸入させたときの脳内抗酸化能の正常化
 抗酸化能の正常化は、セントラルハブを構成する酸化ストレス、神経炎症、NMDA受容体機能不全の相互作用による悪循環を希薄化して、脳機能の改善に導きます(図3)。
 本研究においては、行動指標の有意な改善は確認されませんでした。この要因として、本実験では水素吸入時間が1日あたり90分に限定されていた点が影響した可能性が考えられます。
 つまり、水素分子が脳内のヒドロキシルラジカルを除去した後、神経細胞が正常な機能を回復するまでには一定の時間を要すると考えられます。吸入の中断によるヒドロキシルラジカルの再発生を防ぎながら、確実な細胞修復を促すためには、低濃度水素による十分な投与時間の確保が必要である可能性があります。
 
低濃度水素吸入により統合失調症が回復した症例
 MiZ株式会社は、統合失調症患者に対する水素ガス吸入の症例を確認しました。
 13年前に統合失調症を発症し、約12年10ヵ月にわたり薬物療法を継続していた30代女性患者に対し、水素ガス吸入療法を実施しました。
 ・約40日間:水素濃度約3.0%、1日1時間(70 mL/分) 
 ・その後1ヵ月:水素濃度3.0~4.0%、1日2時間(70 mL/分) 
 ・その後4ヵ月:水素濃度6.0~7.0%、1日2時間(140 mL/分) 
 ・さらに4ヵ月:水素濃度6.0~7.0%、1日6時間(280 mL/分、2台使用) 
 吸入開始後、長期間続いていた幻聴の改善が認められ、開始10日後に経口薬を中止しました。注射薬は月1回を8回継続した後に中止しました。睡眠薬についても約2ヵ月後から不要となり、約6ヵ月後に中止しました。
 吸入開始から約10ヵ月後には回復期に移行し、水素吸入の継続により病状の安定が維持されました。
 2026年4月時点で統合失調症の再発は確認されていません。  
 本症例は、水素ガス吸入が統合失調症の症状改善および薬剤使用量の低減に寄与する可能性を示すものです(MiZ株式会社が権利化した特許の実施例)。
 動物実験においても、より長期間かつ長時間の水素吸入条件を設定することで、マウスの行動指標における改善が得られる可能性が示唆されます。今後は、吸入時間と効果の関係を検証するさらなる検討が求められます。
図3 水素は血液脳関門を構成する細胞膜を透過して脳内に至り、酸化ストレスの原因物質であるヒドロキシルラジカルを水分子に変換することで酸化ストレスを低減すると考えられます。酸化ストレスの低減は、神経炎症とNMDA受容体機能不全を抑制し、セントラルハブにおける相互作用を緩和することで、脳機能の改善に寄与します。
高濃度水素吸入器の水素爆発と医療現場の安全
 本研究において低濃度水素の有効性が示された一方で、現在市場に流通している、水素と酸素の比率が2:1(水素約67%)の混合ガスや純度100%の水素を生成する高濃度水素吸入器については、安全性に関する懸念が指摘されています。2015年、MiZ株式会社は、既存文献の精査および吸入環境を想定した実証的検討に基づき、日常環境下では水素濃度が10%を超えると爆発の危険性があることを発表しました。10%という数値は、理想的条件下で定義される水素の爆発下限界とは区別される、吸入環境を想定した実証値です。
 2026年1月、当社と慶應義塾大学等との共同調査により、消費者庁事故情報データベースにおいて、高濃度水素吸入中に静電気などを契機として、鼻腔や肺といった人体内部で水素爆発が発生した事例が複数報告されていることが明らかとなりました(The International Journal of Risk and Safety in Medicine 掲載)(注2)。これらの事故では、顔面骨折、内臓組織の破裂、気管支の裂傷などの重大な損傷が確認されており、消費者庁により重大事故とし認定されているものも含まれます。こうした状況を踏まえ、当社は水素吸入の安全性に関する一般向け啓発活動を開始しました(注3)。
 また、サロンやクリニック等において水素吸入サービスを提供する事業者には、予見可能性に基づく安全配慮義務が求められます。高濃度水素吸入器に関する事故リスクが公表されている現状においては、これらの知見を踏まえ、使用の適否を再検討するとともに、より安全性の高い代替手段への転換を検討することが重要です。
 
【参考情報】
(注1)統合失調症に関する研究
掲載誌:Neuropsychopharmacology Reports 2026; 46:e70117
邦文タイトル:統合失調症に対する水素ガス療法:動物実験による神経保護効果の可能性
英文タイトル:Hydrogen Gas Therapy in Schizophrenia: Potential Neuroprotective Effects from an Animal Study
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/npr2.70117
 
(注2)高濃度水素ガス吸入器による人体内水素爆発に関する提言
掲載誌: The International Journal of Risk and Safety in Medicine
邦文タイトル:日本における高濃度水素吸入器による人体内水素爆発とその防止策-低濃度水素療法への転換の必要性-
英文タイトル:Preventable In-Body Hydrogen Explosions from High-Concentration H2 Inhalers in Japan -Switch to Safe, Low-Concentration Hydrogen Therapy-
URL: https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/09246479251414573
 
(注3)低濃度水素吸入に関するガイドブック配布
URL: https://e-miz.co.jp/pressrelease/pressrelease15.html
 
問い合わせ先
MiZ株式会社
神奈川県鎌倉市大船2-19-15
0467-53-7511
infoAe-miz.co.jp (Aをアットマークに置き換えてください)