2025(令和7)年 8月 28日国立大学法人岡山大学

•独自に開発した採尿装置を用いて、アカエイが海水から淡水へ移行する際に、尿量を約90倍も増加させることを明らかにしました。•アカエイの単位時間あたりの尿量は脊椎動物の中でも突出して多く、その背景として、腎臓の糸球体ろ過量増加と分節特異的な水チャネル遺伝子の発現制御の関与を明らかにしました。•魚類の環境適応や腎機能の多様性について理解を深める重要な知見であり、腎臓疾患に関する研究などの応用分野への貢献も期待されます。

独自に開発した採尿装置を用いて、アカエイが海水から淡水へ移行する際に、尿量を約90倍も増加させることを明らかにしました。

アカエイの単位時間あたりの尿量は脊椎動物の中でも突出して多く、その背景として、腎臓の糸球体ろ過量増加と分節特異的な水チャネル遺伝子の発現制御の関与を明らかにしました。

魚類の環境適応や腎機能の多様性について理解を深める重要な知見であり、腎臓疾患に関する研究などの応用分野への貢献も期待されます。

東京大学大学院理学系研究科の油谷直孝大学院生(研究当時)と同大学大気海洋研究所の高木亙助教、兵藤晋教授、国立遺伝学研究所の工樂樹洋教授、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理学部附属臨海実験所)の坂本竜哉教授、同大学総合技術部教育支援技術課の齊藤和裕技術専門職員らの共同研究グループは、海水と淡水を行き来できるアカエイ(Hemitrygon akajei)の尿量調節メカニズムを分子レベルで詳細に明らかにしました。

板鰓類(サメ類とエイ類)の中には、海水と淡水の両方に適応できる「広塩性」を獲得した種が存在します。彼らは塩をほぼ含まない淡水環境(浸透圧= 約0 mOsm/kg)でも、非常に高い体液浸透圧(約600 mOsm/kg)を維持することが知られており、環境との浸透圧差によって絶えず体内に水が流入します。そのため、淡水中では過剰な水を効率良く排出する必要がありますが、実際にどの程度の水が、どのような仕組みで排出されているかは不明でした。

本研究では、独自に開発した非侵襲的な採尿装置を用いることで、無麻酔下での連続採尿と正確な尿量測定を実現しました。

その結果、アカエイは海水から低塩分水(約56 mOsm/kg、海水を約1/20に希釈した環境水)に移行した際に、尿量が87倍に増加し、単位時間あたりの尿量は6.4 mL/kg/hに達することが明らかになりました。これは他の脊椎動物と比較しても際立って高い値であり、アカエイの腎臓が極めて高い排水能力を有することを示しています。

さらに、低塩分水に馴致させた個体を再び海水に戻すと、尿量は移行前と同等の水準に戻ることから、アカエイの腎臓が環境変化に応じて高度な可塑性を備えていることも確かめられました。

◆研究資金本研究は、科研費「基盤研究B(課題番号:17H03868)」、「挑戦的研究(萌芽)(課題番号:19K22414)」、「特別研究員奨励費(課題番号:21J20882)」の支援により実施されました。

◆発表者・研究者等情報東京大学 大学院理学系研究科油谷 直孝 博士課程(研究当時)現:ミシガン大学 特任研究員大気海洋研究所兵藤 晋 教授高木 亙 助教国立遺伝学研究所分子生命史研究室工樂 樹洋 教授兼:総合研究大学院大学 教授岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理学部附属臨海実験所)坂本 竜哉 教授総合技術部教育支援技術課(理学部附属臨海実験所)齊藤 和裕 技術専門職員

特任研究員 油谷 直孝(あぶらたに なおたか)東京大学 大気海洋研究所 海洋生命システム研究系海洋生命科学部門助教 高木 亙(たかぎ わたる)

東京大学 大気海洋研究所 附属共同利用・共同研究推進センター 広報戦略室

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