株式会社ハピネスプラネット(以下、ハピネスプラネット)と株式会社日立製作所(以下、日立)は、複数のAIエージェントが議論することで、自律的により深い洞察や創造的な視点を生み出していく自己成長型生成AIを共同開発しました。また、ハピネスプラネットは、開発した生成AIを活用した自己成長型AIサービス「Happiness Planet FIRA*1」(以下、FIRA(フィーラ))を、8月26日(火)より提供開始します。 |
従来の生成AIは、学習データを超えた深い洞察や創造的な視点を生み出すことに限界がありました。 |
これに対し、ハピネスプラネットと日立の独自技術を活用したFIRAは、各専門分野に特化した600種類のAIエージェントが自律的に議論することで、利用者固有のデータに頼らず、個別の経営課題に合わせた深い洞察や創造的な選択肢を生成できます。人の思考を拡張する知の増幅器(Intelligence Amplifier*2)として、経営計画策定やIR対応、新規事業構想、営業戦略策定、経営会議の質の向上など幅広い経営シーンで活用可能です。FIRAは経営層や企画担当者の知的パートナーとして、企業の持続的な成長に貢献します。 |
なお、FIRAは、10項目の経営課題に関するAIによる客観評価において、従来の生成AIと比較して大きく上回るスコアを記録しています。 |
*1 多様な人々の相互作用によりルネサンスがフィレンツェ(Firenze)で起きた原理(Arche)にちなみ、FIRA(フィーラ)と命名。*2 人をAIに置き換えるのではなく、人間の知を補強・拡張するAIの概念(D. Engelbartにより1962年提唱)。 |
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テーマに合わせ、600種のAIエージェント(異能)が熟議し、その場で自己成長する“FIRA” の全体イメージ図 |
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主要生成AIモデル(グローバルに広く使われている13種)とFIRAとの回答を、10種の経営課題について客観評価。経営支援スコアは、簡単に思いつく一般論は評価せず、利用者の思考を深く拡張する回答を高く評価する指標。 |
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■背景および課題 |
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経営や企画の現場では、リスク管理や投資判断、人財育成などの正解のない課題に日々直面しています。こうした課題には、単なる情報整理を超えて会社固有の状況に即した洞察や創造的な視点が求められます。しかし、従来の生成AIでは、事前学習データの範囲を超えた深い洞察や、利用者固有の課題に合わせた創造的な視点を生み出すことが難しく、一般的な回答にとどまっていました。またこれに対し、生成AIに自社の過去データを取り込む試みが行われていますが、過去のデータを参照するだけでは、未来に向けた創造的な示唆は得られませんでした。 |
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■FIRAの特長 |
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上記課題に対して、ハピネスプラネットと日立は、追加学習データを必要とせず、利用者が抱える経営課題に合わせて、その場で深い洞察や創造的な視点を生み出すAI技術を開発し、固有の事情に即した創造的な回答を可能にしました(特許出願済み)。 |
FIRAは、利用者の思考プロセスに多様な視点を与え、人の知や構想を拡張する知の増幅器となるよう設計されています。FIRAは、経営・企画の現場で意思決定の質を高め、創造性を最大化する知的パートナーとして、経営計画策定時の新たな論点や視点の提示、経営課題への多角的提案、新規事業・研究開発・営業の構想段階での壁打ち、人財・リーダー育成支援など、多様な経営課題に対応可能です。 |
具体的な特長は以下の通りです。 |
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1. 自己成長するAIエージェント「異能」 |
囲碁のトップ棋士に勝利するAIの実現には、当初、人の棋譜データからの学習が必要でしたが、その後、事前データに頼らずに、試行錯誤により自ら成長するAI技術により可能になりました*3。 |
しかし、ルールや制約のあいまいな現実のビジネス課題には、このアプローチを適用することは困難でした。日立では、ブランコや鉄棒をするロボット、さらにサプライチェーンの最適化などに特化して、自己成長するAIエージェント技術を開発してきました*4。今回は、LLMを用いた自己成長エージェント技術を新たに開発し、汎用的な課題に適用できるようにしました。FIRAでは、LLMを活用した自己成長するAIエージェントを「異能」と呼んでいます。
この専門的な視点や独自の思考パターンを持つ異能たちが、利用者が入力したテーマや課題に沿って自律的に意見や提案を出し合い議論します。さらに司令塔となるファシリテーターが、議論の方向や場の盛り上がりや感情、発言者や発言の順序や長さなどを調整することで、異能たちが時に刺激し合い、時に対立し、時に協調し合うことで、異能たちがその場で問いと思考をブラッシュアップしていくことで自己成長します。これにより、その会社の固有事情に沿った深い洞察や創造的な選択肢をその場で生成します。これにより従来の生成AIとは異なり、一般論や常識的な回答を超えて、経営計画の策定やIR対応、新規事業構想など様々な経営課題に対応することが可能となりました。 |
*3 AlphaZeroについて:D. Silver, et al: Mastering Chess and Shogi by Self-Play with a General Reinforcement Learning Algorithm
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*4 ブランコするロボットの自己成長について:https://www.youtube.com/watch?v=q8i6wHCefU4
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鉄棒するロボットの自己成長について:https://www.youtube.com/watch?v=uimyyGFwv2M サプライチェーンでの自己成長について:日立ニュースリリース2017年12月25日:人の実績データに頼らずに自己競争により学習を行うビジネス向けAI技術を開発
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2. 専門性や実在のエキスパートの思考をもつ600種類の「異能」を搭載 |
FIRAには、AIと人間科学を組み合わせた研究で国際的な賞を多数受賞してきた*5矢野和男(ハピネスプラネット代表取締役CEO兼日立フェロー)がデザインした600種類の異能が搭載されています。
異能には、専門的な財務ファイナンス知識を持つ「スーパーCFO」や革新的な発想が得意な「Dr.革新発想」をはじめ、経営学、経済学、心理学、IR、財務、人財、データサイエンス、コンセプトづくり、ウェルビーイング、歴史、科学、思想、哲学などの専門性や価値観を持つ独立したAIエージェントに加え、実在のエキスパート(メンタルトレーナーの久瑠あさ美氏、株式会社ベアーズ取締役副社長の高橋ゆき氏、アスリートの為末大氏、著述家の山口周氏、矢野和男)の思考を組み込んだBunshin(分身)*6が含まれます。これらの多様な異能を、AIがファシリテーションして熟議させることで、従来のAIでは得られなかった新たな発想や幅広い思考を得られ、経営の可能性を拡大します。 |
*5 2020 IEEE Frederik Phillips Awards, 2007 Mind, Brain, and Education Erice Prize他 |
*6 ハピネスプラネットニュースリリース2024 年 3 月 21 日:各界トップランナーの考え方を生成 AI と融合させる新技術を開発し、 ユーザーの日々の悩みや相談に応じる新アプリ 「Happiness Planet/Regrowth」を提供開始
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3. FIRAの経営支援力を客観的に検証
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FIRAの能力を「経営支援スコア」という指標で他の主要生成AI(グローバルに広く使われている13種類の生成AIモデル)と比較しました。この指標は、経営者が容易に思いつく一般論ではなく、利用者の思考を深く拡張する回答を高く評価する指標です。具体的には、リスク、財務、投資、人事、技術、営業、変革などの10種の経営テーマに対するAIの回答を、驚き・奥深さ・メタ認知などの7個の評価項目について、生成AIが客観的に8段階でブラインド評価しました(LLM-as-a-Judge法*7)。
従来の主要生成AIと比較した結果、FIRAはこれらを大きく上回るスコアを得ました。主要生成AIが「やや低い」から「やや高い」に近い評価なのに対し、FIRAは「とても高い」に迫る評価を得て、偏差値で27ポイント上回る評価を記録*8し、経営での意思決定の質向上や新たな価値創出に大きく貢献できることが示唆されました。 |
*7 回答の質的な評価を、人手に頼らず、LLMが行う手法 |
*8 今回の評価では10テーマに関するAIの回答を、ChatGPT-4oとo3の2モデルが8段階で評価し、2モデルの評価値の平均値で総合評価 |
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■今後の展望 |
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今後、ハピネスプラネットと日立は、開発した自己成長型生成AIを活用した人とAIによる経営協創により、企業や組織の変革を支援します。特に、問いを再定義し、知を拡張するAIにより、人が常に状況をリフレーミングして、それぞれのよりよき選択を支援します。なお、ハピネスプラネットは、8月27日から28日に東京国際フォーラムで開催される「AI博覧会」にてFIRAを出展予定です。 |
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図3 600種類の異能AIエージェント間の関連を表すネットワーク図。各ノードは異能を表し、色は分野を表す。異能間の関連性を定量評価し、一定以上の関連のある異能間を線でつなぎ、より近傍に配置することでネットワーク状に表した。経営関連は、図全体に拡がっている。 |
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■株式会社ハピネスプラネットについて |
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ハピネスプラネットは幸せで生産的な人や組織づくりを目的とする、AIとサービスを提供しています。2020年7月に、ヒューマンデータとAIを活用した新たな産業創生をめざして日立のグループ会社として設立されました。大量のデータを活用した人や組織の科学的理解に基づき、幸せで創造的な企業づくりを支援するAI サービス事業を推進しています。 |
詳しくは、ウェブサイト(https://happiness-planet.org/)をご覧ください。 |
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■日立製作所について |
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日立は、IT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを活用した社会イノベーション事業(SIB)を通じて、環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献します。デジタルシステム&サービス、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズの4セクターに加え、新たな成長事業を創出する戦略SIBビジネスユニットの事業体制でグローバルに事業を展開し、Lumadaをコアとしてデータから価値を創出することで、お客さまと社会の課題を解決します。
2024年度(2025年3月期)売上収益は9兆7,833億円、2025年3月末時点で連結子会社は618社、全世界で約28万人の従業員を擁しています。詳しくは、www.hitachi.co.jpをご覧ください。 |
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■お問い合わせ先 |
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株式会社ハピネスプラネット [担当:柳・田上] |
問い合わせフォーム:https://happiness-planet.org/inquiry/
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FIRAサービスページ:https://happiness-planet.org/service/fira/
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株式会社日立製作所 研究開発グループ |
問い合わせフォーム:https://www8.hitachi.co.jp/inquiry/hqrd/news/jp/form.jsp
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