三菱HCキャピタル株式会社(代表取締役 社長執行役員:久井 大樹/以下、当社)は、「愛知県知多市における低炭素水素モデルタウン実証事業」(以下、本実証)に参画することを決定しましたので、お知らせします。
 
 愛知県は、全国一の設置数(34箇所)を誇る水素ステーション(以下、水素ST)を地域の水素供給拠点として社会実装すべく、「低炭素水素モデルタウン事業」(以下、本事業)について、昨年度から事業化可能性調査*1を実施してきました。本事業では、知多市の水素STからFCV*2だけでなく、公共施設や住宅に設置した燃料電池や水素給湯器など、幅広い利用先に低炭素水素を低コストに供給することを目標としています。
 このたび、事業化可能性調査の結果を踏まえて、17の企業等と連携して実証を開始します。本実証は、環境省が公募した「令和7年度コスト競争力強化を図る再エネ等由来水素サプライ チェーンモデル構築・実証事業」の採択事業です。
 
 当社は、マテリアリティの一つに「脱炭素社会の推進」を掲げ、その実現にむけた再エネ事業の強化、拡大および付加価値の向上に取り組んでいます。また、「2023~2025年度中期経営計画(2025中計)」において、組織横断で取り組む重要テーマの一つに「水素」を掲げており、低炭素水素製造を軸とした水素サプライチェーンの構築に貢献すべく、水素分野において多様な取り組みを推進しています。今般、本実証への参画を通じて、水素サプライチェーン企業とのネットワーク構築や低炭素水素製造に関する知見を蓄積し、本格的な水素社会到来に備え、国内有数の水素事業者となることをめざし取り組んでいきます。
 
1.      実証事業の概要
(1)    目的
○   愛知県が全国一の設置数(34箇所)を誇る水素STを拠点に、地域資源を活用して製造・調達した低炭素水素を、既存LPG配送網や各種新型水素容器を利用し、現状未開拓である街利用分野の需要先へ効率的に供給する。
○   街利用による新たな水素需要創出や、中部圏において検討されている海外からの大規模水素等と連携し、サプライチェーンのスケールアップを図ることで、水素供給の低コスト化と水素STの自立化に貢献する。
○   愛知県内および全国の水素STに水平展開可能な事業モデルを構築する。
 
【事業イメージ】
(2)    実施体制※順不同
代表者 愛知県 事業の全体総括
共同
実施者*3
知多市 水素利用公共施設の提供、水素利用機器を活用した市民向けサービスの検討
  日本環境技研株式会社 実証結果のとりまとめ・事業化等検討
  明治電機工業株式会社 水素製造・利用機器の設置・エンジニアリング・実証
  知多高圧ガス株式会社 水素STの運営、水素配送ビジネスの実証、燃料電池トラックの導入
  東亞合成株式会社 低炭素塩電解水*5の製造・供給
  リンナイ株式会社 水素給湯器・グリラー・コンロの実証
  株式会社大林組 工事現場での燃料電池ショベル実証および水素供給方法の開発、EMS*6に関する検討・実証
  コベルコ建機株式会社 燃料電池ショベルの実証
  株式会社宮本工業所 水素火葬炉の実証
  株式会社土谷製作所 水素ストーブの実証
  三菱HCキャピタル株式会社 オフサイト再エネ調達検討、機器リース導入検討
協力者*4 トヨタ自動車株式会社 水素貯蔵モジュール等に関する実証協力
  ブラザー工業株式会社 燃料電池に関する実証協力
  JFEコンテイナー株式会社 水素運搬用軽量容器に関する実証協力
  オートリブ株式会社 燃料電池バスに関する実証協力
  愛知時計電機株式会社 水素メーターに関する実証協力
  株式会社一富士製麺所 水素ボイラの実証協力
 
(3)    実証内容
項目 検証内容
水素を
「つくる」
・オンサイト太陽光発電・周辺エリアの卒FIT電源*7を活用した水素STにおけ る低炭素水素製造や、周辺エリアの低炭素塩電解水素の供給・調達により、低コストで安定的な低炭素水素の製造・調達手法の検討
・将来的に周辺エリアに整備予定の海外アンモニア由来水素の供給拠点等と連携可能性を調査
水素を
「はこぶ・ためる」
・既存インフラであるFCV向け水素STから街利用向けに高圧水素容器に充填・貯蔵し、既存LPG配送網等を活用して効率的に配送
・水素EMS等を活用して更なる配送効率化や低コスト化の検証
水素を
「つかう」
・「燃料電池商用車の導入促進に関する重点地域」の取組と連携しモビリティ需要を集積
・スケールアップを見据えて業務・家庭・その他街利用における最適な水素ユースケースの検証
 
2.      今後の予定
2029年度まで実証を継続実施予定
 
【参考】実証事業の背景
-街中における水素利用の具現化の必要性-
愛知県は「あいち地球温暖化防止戦略2030(改定版)」において、2030年度のCO2削減目標を2013年度比▲46%と定める中で、業務部門(▲69.2%)・家庭部門(▲77.6%)の目標値を高く設定している。目標達成には、再エネ導入拡大のみならず、燃料電池の導入促進や熱分野の燃料の脱炭素化など、街中で水素の利用を具現化する必要がある。
-水素供給拠点として知多水素ST(知多市)を選定した理由-
 街中での水素利用の実現には、これまで先行してFCV向けの水素供給インフラとして構築が進められてきた水素STを、地域の水素供給拠点として活用し、水素の街利用における供給網を構築することが必要である。
知多水素STでは、FCV以外の水素需要に対して水素を供給することを検討するとともに、低炭素水素製造に必要な太陽光発電が水素STに設置されている。また、知多市の沿岸部では将来的に海外アンモニア由来水素の受入拠点としての整備等を検討している。これらのことから、知多水素ST(知多市)を水素の街利用における供給網を構築する実証事業のフィールドとして選定した。
 
*1 2024年6月28日開示 愛知県ニュースリリース「知多市における低炭素水素モデルタウン事業の事業化可能性調査を開始します[環境省事業に採択されました!]」
https://www.chita-hip.co.jp/news/2024/pdf/20240628-01.pdf
*2 燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicle)は、燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーでモーターを回して走行する自動車のこと。水素STで燃料となる水素を補給。
*3 主体的に実証等を行う企業等。
*4 実証事業に導入する水素関連機器のメーカー、燃料電池モビリティ・水素関連機器の導入企業。
*5 塩水を電気分解して苛性ソーダを生産する工程において、同時に生成する水素のこと。
*6 エネルギーマネジメントシステム(Energy Management System)は、今回の実証事業では、1か所の水素STから、複数の水素利用機器や燃料電池バス等に水素を供給するため、効率的に水素の運搬・供給を実施できるように各種データを連携するシステムのこと。
*7 「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT制度)の買取期間が終了した電源のこと。