中央ダルフール州のザリンゲイ病院。50万人の住民に専門医療を提供してきた=2024年4月5日 (C) Juan Carlos Tomasi/MSF
国境なき医師団(MSF)は、スーダン・中央ダルフール州のザリンゲイ病院で8月16日夜に発生した武装襲撃を受け、同病院での医療活動の中断を余儀なくされた。この襲撃により1人が死亡、保健省職員を含む5人が負傷した。
 
MSFは、病院や医療スタッフへの攻撃は決して許されず、活動再開のためにはすべての紛争当事者が医療スタッフと患者を守るための安全を保証しなければならないと訴える。
病院の中で手りゅう弾が爆発
ザリンゲイ病院の襲撃は、8月16日午後8時20分ごろ、近隣の避難民キャンプで略奪により銃で撃たれ死亡した男性が救急室に搬送された後に発生。死亡した男性の武装した親族が病院に強引に侵入した直後、別の銃創患者が武装した人びととともに到着。両グループ間の緊張が高まり、午後10時には救急治療室の前で手りゅう弾が爆発し、1人が死亡、保健省の医療スタッフを含む5人が負傷した。
 
ダルフールにおけるMSFの緊急対応コーディネーター、マルワン・タヘルはこう話す。
 
「この爆発で1人の命が奪われました。もしこの事件が患者で混雑している日中の時間帯に起きていたら、さらに多くの命が失われていた可能性があります。活動を中断してチームを一時退避させることは、どの医療機関も望まない決断です。しかし、スタッフの命を危険にさらしながら医療を提供することはできません」
コレラの治療にも影響
ザリンゲイ病院では、MSFが今年8月1日からコレラ緊急対応を主導しており、州保健省と連携して16日間で162人の患者を治療した。コレラではすでに7人が死亡している。同病院は中央ダルフール州で重症患者を治療できる唯一の施設だ。MSFはまた、感染拡大防止のための監視活動でも保健省を支援していた。
 
さらに、同病院では今年5月から7月にかけて、1500件以上の産科診療、1400件以上の小児科診療、80件以上の手術を実施。約50万人の人びとに医療を提供する地域唯一の二次医療施設として、複雑な症例にも対応してきた。今回の活動停止により、MSFは移動診療や地域での活動、健康推進の活動も中断を余儀なくされ、数千人が必要な治療を受けられない状況に陥っている。
医療スタッフの安全の保証を
MSFは過去40年以上にわたり、スーダンにおける疾病の蔓延や栄養失調などの危機に対応し、紛争下を生きる人びとを支援してきた。医療チームの保護は、医療提供の継続に不可欠だ。2024年2月にも、武装した男たちがザリンゲイ病院に押し入り、MSFが使っていた車両を強奪する事件が発生しており、今回の襲撃は同病院で過去1年半において2度目の重大な事件となった。
 
タヘルはこう訴える。
 
 「病院や医療スタッフへの攻撃は決して許されません。医療施設に銃がある限り、私たちは安全に活動することができません。すべての当事者から保健省とMSFスタッフの安全が明確に保証されなければ、活動の継続は不可能です。ザリンゲイの人びとがいま緊急に必要としている医療へのアクセスを守られなければなりません」