都心エリアのマンション市場──価格高騰の背景とその読み解き方
1. 都心エリアの異常な価格高騰
2025年現在、東京都心エリアでは驚くべきマンション価格の高騰が続いています。特に千代田区・中央区・港区といった「都心3区」では、坪単価が過去最高水準に達し、築年や立地を問わず高値での取引が相次いでいます。
価格上昇の背景にはさまざまな要因がありますが、不動産価格の基本的な決定要因は 需給関係 にあります。つまり、「買いたい人(需要)」と「売りに出ている物件(供給)」のバランスによって価格は決まります。
この「需要」をより正確に捉えるためには、単に価格推移や取引件数を見るだけでは不十分です。人口動態──特に世帯数や家族構成の変化──とマンション市場データを組み合わせて分析することが重要になります。
2. 世帯数とマンション供給割合の関係
今回の調査では、各区ごとの 「世帯数に対する分譲マンション供給戸数の割合」 を算出しました。この指標は、そのエリアにおける住宅供給の中でマンションがどれだけの比率を占めているかを示します。
表1:分譲マンション戸数割合(対世帯数)
出典:東京都人口統計データと福嶋総研総研データを加工して作成
結果を見ると、都心3区(千代田区・中央区・港区)が突出して高い割合を記録しました。次いで、新宿区・文京区・江東区・品川区・渋谷区といった都心周辺エリアも高い数値を示しています。
このことは、これらのエリアでは戸建住宅よりもマンションが主役であり、マンションが住宅市場の「プライスリーダー(価格を主導する存在)」 になっていることを意味します。結果的に、マンション価格の動きがそのエリア全体の住宅価格を牽引しやすい構造となっているのです。
3. 価格が高いエリアはなぜ高止まりするのか
マンション価格が高いエリアは、単に土地が高いからというだけではありません。
・高所得層や投資家の購入意欲が強い
・再開発やインフラ整備によって将来的な資産価値への期待が高い
・供給される物件の多くが高グレード仕様で、価格帯自体が上振れしやすい
こうした要因が重なり、価格の下支え要因となっています。特に都心3区では、湾岸エリアのタワーマンションや日本橋・虎ノ門などの再開発案件が続き、価格の高止まりどころか、さらに上昇するケースも目立ちます。
4. 世帯構成人数とファミリーマンション供給
別の視点として、「一世帯あたりの平均構成人数(家族の大きさ)」と「分譲ファミリーマンション売出戸数の割合(供給の多さ)」を比較する分析を行いました。
グラフ1:東京都23区エリア別:世帯構成人数とファミリーマンション供給率
出典:東京都人口統計データと福嶋総研総研データを加工して作成
グラフ上で、横軸が「一世帯あたりの平均構成人数」、縦軸が「中古ファミリーマンション売出戸数の割合」を示しています。
横軸が大きい=ファミリー世帯が多い 縦軸が大きい=ファミリー向け物件の供給が多い
さらに、赤い曲線に近い位置にあるエリアは「需要と供給がバランスしている」状態です。
5. 都心3区の特徴
都心3区はグラフ1の赤い曲線よりもやや上側、つまり「ファミリー向けの供給が平均より多い」位置にあります。
これは、再開発エリアで大規模ファミリーマンションが多く建設され、中古市場にも多く流通していることを意味します。
一方で、現況の価格高騰を踏まえると、「売れる物件」と「売れない物件」の二極化 が進む可能性があります。
駅近・眺望良好・ブランド力のある物件は高値成約が続く 立地や仕様で劣る物件は価格調整を迫られる
購入検討者にとっては、この二極化を正しく見極めることが重要になります。
6. 家族の縮小化と中央区の例外的動き
東京23区全体では、「家族の縮小化」が進んでいます。少子化、未婚化、高齢化、核家族化といった社会現象により、一世帯あたりの人数は減少傾向です。ところが、2025年1月時点で、中央区だけは平均構成人数が増加しました。さらに中央区は、人口増加率が23区で最も高く、前年比で約10,600人も人口が増えています。この背景には、勝どき・晴海・月島など湾岸エリアでの大規模マンション入居が相次いだことがあります。
7. 中央区で予想される市場の動き
中央区ではすでにファミリーマンションの供給が多い状態ですが、人口増加が需要を押し上げており、結果的に取引が活発化しています。この動きは価格高騰をさらに押し進める可能性があります。
つまり、
・新築・中古ともに高値維持
・一部の物件は入居後すぐに売却しても利益が出る状態
・人気校区や駅徒歩圏の物件は供給不足に陥る
という現象が今後もしばらく続くと考えられます。
8. 購入検討者が取るべき戦略
ここまでの分析を踏まえ、購入検討者が考えるべきポイントは以下の通りです。
需要と供給のバランスを確認:世帯数や人口動態と物件供給の関係を把握し、過剰供給エリアかどうかを見極める。
二極化リスクの認識:都心部でも「売れない物件」が増えつつある。ブランド・立地・眺望・管理体制など付加価値を冷静に評価する。
再開発エリアの先行投資効果:再開発は資産価値上昇の追い風になるが、供給過剰になりやすいので出口戦略も意識する。
将来の家族構成を想定:家族の縮小化が進む中で、将来的に必要な間取りや広さを過不足なく選ぶことが資産性維持につながる。
9. まとめ
都心のマンション市場は一見すると価格が上がり続ける一方に見えますが、実際には需要と供給、人口動態、再開発計画など複数の要素が複雑に絡み合っています。
特に中央区のように例外的な人口増加を示すエリアは、供給過多でも価格が上がる「特殊な条件下」にあります。こうした市場の背景を理解することで、購入後も資産価値を維持できる物件選びが可能になります。
マンションは高額な資産であり、購入は人生の大きな決断です。価格の高さやブランドだけに惑わされず、統計データと市場構造を理解した上で、自分のライフスタイルや将来設計に合った一戸を選びたいものです。
リリース作成者プロフィール
福嶋 真司(ふくしましんじ)
マンションリサーチ株式会社
データ事業開発室 
不動産データ分析責任者
福嶋総研
代表研究員
早稲田大学理工学部経営システム工学科卒。大手不動産会社にてマーケティング調査を担当後、
建築設計事務所にて法務・労務を担当。現在はマンションリサーチ株式会社にて不動産市場調査・評価指標の研究・開発等を行う一方で、顧客企業の不動産事業における意思決定等のサポートを行う。また大手メディア・学術機関等にもデータ及び分析結果を提供する。
 
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所在地: 東京都千代田区神田美土代町5-2 第2日成ビル5階
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