2025(令和7)年 8月 13日国立大学法人岡山大学

•線虫の内部構造を保ったまま、脂質の三次元分布を可視化する質量分析法を確立しました。•10µmの連続切片と画像位置合わせで、器官ごとの脂質分布が明らかになりました。•質量分子分析と染色法を併用して、線虫体内での脂質分布を相互から確認することに成功しました。•脂質代謝や老化研究への応用が期待され、創薬や疾患評価にも貢献する成果です。

線虫の内部構造を保ったまま、脂質の三次元分布を可視化する質量分析法を確立しました。

10µmの連続切片と画像位置合わせで、器官ごとの脂質分布が明らかになりました。

質量分子分析と染色法を併用して、線虫体内での脂質分布を相互から確認することに成功しました。

脂質代謝や老化研究への応用が期待され、創薬や疾患評価にも貢献する成果です。

国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)学術研究院環境生命自然科学学域(理)の藤原正澄教授と大学院自然科学研究科博士後期課程・OU-SPRING生※のサラ・マンディッチ(Sara Mandić)大学院生は、甲南大学の太田茜特任研究准教授、久原篤教授、オランダ・マーストリヒト大学のRon M. A. Heeren教授、Michiel Vandenbosch博士、Bryn Flinder博士の研究グループと共同で、線虫(C. elegans)の体内構造を保持したまま連続切片を取得し、脂質分布を三次元的に可視化する質量分析イメージング手法を開発しました。

この技術の開発は、単なる分析手法の進歩にとどまらず、脂質代謝の空間的理解を飛躍的に高める重要な成果です。線虫は脂質代謝経路やその調節因子が哺乳類と高い類似性を持つことから、肥満や糖尿病、神経変性疾患などのヒト疾患のモデルとしても広く用いられています。

本技術を用いることで、これらの疾患に関連する脂質の動態を個体レベルで詳細に追跡することが可能となり、病態の早期診断や創薬に向けた新たなバイオマーカー探索への貢献が期待されます。さらに、脂質に関する基礎研究に加え、薬剤投与による脂質変化の評価や、老化・ストレス・栄養状態の変化による生体反応の解析にも応用が可能です。

本研究成果は、モデル生物を用いた分子機能の可視化と定量化に新たな扉を開くものであり、将来的には医療・創薬・環境科学における幅広い応用展開が期待されます。

この研究成果は、2025年7月9日(日本時間)、「Scientific Reports」に掲載されました。

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)「次世代研究者挑戦的研究プログラム」を用いて、大学院の博士後期課程又は博士課程に進学する優秀な人材の確保を図るとともに、岡山大学の「最重点研究分野」の研究を推進する若手研究者の養成、ひいては、我が国の科学技術・イノベーション創出を担う研究者の養成等を目的に運用している制度です。選抜されたOU-SPRING生には、研究奨励費(生活費相当)と研究費を支給し、より研究に専念できる環境を提供しています。

(a)線虫切片の光学顕微鏡画像と(b)質量分析イメージング画像。赤青緑の色は、それぞれ異なる分子量の脂質分布を表している。(c)10µm毎の連続切片画像。

質量分析イメージング用の、凍結微小切片を線虫で作るというのは非常に難易度が高い技術です。切片から3次元画像まで構築できた時は大変驚きました。

線虫の切片作製と画像化の両方で、今回開発した手法がはじめて成功したとき、とても嬉しかったです。今後、この手法をさらに応用していくのが楽しみです。

独立行政法人日本学術振興会「科学研究費助成事業」

国立研究開発法人科学技術振興機構「先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)次世代のためのASPIRE」(JPMJAP2339,研究代表:鹿野豊(筑波大学))

国立研究開発法人科学技術振興機構 科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業(JPMJFS2126, 研究代表:マンディッチサラ(岡山大学))

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「ムーンショット型研究開発事業」(JP23zf0127004,研究代表:村上正晃(北海道大学))「革新的先端研究開発支援事業」(25gm6910014h0002,研究代表:久原篤)

国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「官民による若手研究者発掘支援事業」(JPNP20004,研究代表:藤原正澄)

国立研究開発法人科学技術振興機構 未来社会創造事業 「共通基盤」領域 本格研究(JPMJMI21G1,研究代表:飯田琢也(大阪公立大学))

公益財団法人 上原記念生命科学財団、一般財団法人 ノーリツぬくもり財団、公益財団法人 ホーユー科学財団、公益財団法人 旭硝子財団(研究代表:久原篤)

公益財団法人 長瀬科学技術振興財団、公益財団法人 東レ科学振興会、公益財団法人 住友財団(研究代表:太田茜)

◆詳しい研究内容について世界初!線虫(C. elegans)の体内構造と脂質分子分布を対応づける質量分析イメージング手法を開発

◆参 考・岡山大学理学部https://www.science.okayama-u.ac.jp/・岡山大学理学部化学科http://chem.okayama-u.ac.jp/・岡山大学大学院環境生命自然科学研究科/理学部化学科 ナノ化学研究室https://www.nanochem-okayama-u.net/

・岡山大学次世代研究者挑戦的研究プログラム(OU-SPRING)

・【岡山大学】量子センサ型バイオ分析チップデバイスの開発に成功

・【岡山大学】ナノ粒子をポリマーコーティングによって線虫体内へ蓄積させることに成功! ~蓄積の制御により“環境負荷の軽減”や“生体内の薬剤蓄積”を可能に~

・【岡山大学】量子グレードの高品質・高輝度蛍光ナノ粉末ダイヤモンド~ナノダイヤモンド量子センサの性能向上で超高感度の測定が可能に~

◆本件お問い合わせ先岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(理) 教授 藤原正澄〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中3-1-1 岡山大学津島キャンパス 理学部TEL:086-251-7834FAX:086-251-7834

甲南学園 広報部〒658-8501 兵庫県神戸市東灘区岡本8-9-1TEL:078-435-2314FAX:078-435-2546

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階TEL:086-251-8463E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp※ ◎を@に置き換えて下さいhttps://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部

〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階

<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>

岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部

〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp※ ◎を@に置き換えて下さい

岡山大学オリジナルグッズ Online Shop:https://okadaigoods.official.ec/岡山大学統合報告書2024:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002801.000072793.html

岡山大学地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS):https://j-peaks.orsd.okayama-u.ac.jp/

産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2025年7月期共創活動パートナー募集中:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003222.000072793.html

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください

•岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html

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