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株式会社帝国データバンクは、2万6,196社を対象とした2025年7月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表いたしました。 |
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■調査結果のポイント |
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1. |
2025年7月の景気DIは前月比0.1ポイント増の42.8となり、小幅ながら2カ月連続で改善した。国内景気は、個人消費には依然弱さが残るものの、自動車を中心とした製造業の生産回復がけん引し、わずかだが上向き傾向が続いた。今後の国内景気は、懸念材料を抱えつつも関税措置の不確実性が後退し、横ばい傾向で推移すると見込まれる。 |
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2. |
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『建設』など4業界で改善、『農・林・水産』など5業界で悪化、『サービス』は横ばいだった。ものづくり関連の業種を中心に景気を押し上げた。規模別では、「大企業」と「中小企業」が改善した一方で、「小規模企業」は悪化した。地域別では10地域中7地域が改善、観光需要や地域特有の建設需要がプラス材料となった。 |
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3. |
[今月のトピックス]猛暑により企業からは客足鈍化を危惧する声が多数寄せられる一方で、エアコン設置など季節需要を掴む企業も表れた。 |
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【調査先企業の属性】 |
1.調査対象(2万6,196社、有効回答企業1万626社、回答率40.6%) |
2.調査事項 |
景況感(現在)および先行きに対する見通し |
経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について |
3.調査時期・方法 |
2025年7月17日~7月31日(インターネット調査) |
【景気動向指数(景気DI)について】 |
■TDB景気動向調査の目的および調査項目 |
全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万7千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。 |
■調査先企業の選定 |
全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。 |
■DI算出方法 DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。 |
景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。 |
■企業規模区分 |
企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。 |
■景気予測DI |
景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している |
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< 2025年7月の動向 : 小幅な改善> |
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2025年7月の景気DIは前月比0.1ポイント増の42.8となり、小幅ながら2カ月連続で改善した。国内景気は、個人消費には依然弱さが残るものの、自動車を中心とした製造業の生産回復がけん引し、わずかに上向き傾向が続いた。
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7月は、日米間で関税交渉の合意が発表され、自動車関連の生産回復が好材料となった。猛暑による夏物衣料や空調設備工事の特需のほか、都市部での再開発事業もプラス材料だった。公共工事の継続発注で建設が上向き、中小企業の景況感が上向いた。一方で、宿泊業など個人向けサービスが下押ししたほか、自然災害にともなう交通網の混乱などは一部地域で悪材料となった。 |
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< 今後の見通し : 横ばい傾向で推移> |
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トランプ関税に関する日米間の合意により、不確実性がやや和らいだ。今後は、実質賃金の上昇や手取り収入を巡る政策対応などによる個人消費の動向が焦点となろう。AI関連の設備投資や訪日旅行客の増加は景気を下支えする。他方、米国の関税措置は自動車関連の引き下げ時期や輸出業界への影響が注視されるほか、人手不足や物価高は引き続き景気の重しとなる。 |
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国内景気は、懸念材料を抱えつつも不確実性が後退し、横ばい傾向で推移すると見込まれる。 |
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業界別:10業界中4業界で改善、ものづくり産業が景気を押し上げ |
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『建設』など4業界で改善、『農・林・水産』など5業界で悪化、『サービス』は横ばいだった。ものづくり関連の業種を中心に景気を押し上げた。また、日米間でトランプ関税の交渉合意を受け、先行きに対する不透明感がやや和らいだ。他方、連日の猛暑は外出控えや工期遅れ、畜産、農作物への悪影響を引き起こした。さらに、物価の高止まりや人手不足なども悪材料だった。 |
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『建設』(46.4)…前月比0.5ポイント増。8カ月ぶりに改善。「新幹線延伸工事や札幌駅再開発事業の影響がある」(一般土木建築工事)など、各地で地域特有の事業がプラスに作用した。加えて、空調設備工事の特需も押し上げ要因となった。さらに、官民ともに工事の発注は堅調との声が寄せられている。 他方、人材不足で受注できない企業があるほか、猛暑による工期遅れや、技術者の心身への負担は悪影響となっていた。 |
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『製造』(38.9)…同0.5ポイント増。2カ月連続で改善。「輸送用機械・器具製造」(同0.8ポイント増)は、一部メーカーで生産台数が回復したほか、米国の自動車関税引き下げ発表も好感され、40台に回復した。自動車関連の復調が奏効し、「化学品製造」(同1.0ポイント増)も3カ月ぶりに改善した。さらに、夏物衣料が動き出した「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同0.7ポイント増)は低調ながら5カ月ぶりに上向いた。 |
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『サービス』(48.3)…同横ばい。「旅館・ホテル」(同2.1ポイント減)は、猛暑による利用者の減少や消費者の節約志向の高まりなどで大きく落ち込み、2年5カ月ぶりに50を下回った。また、コスト上昇に診療報酬が追いつかないといった声があがる「医療・福祉・保健衛生」(同2.4ポイント減)は4カ月連続で悪化し、30台に落ち込んだ。
他方、夏休みを迎えたなか「娯楽サービス」(同1.6ポイント増)は、映画の話題作などが好材料となり2カ月ぶりに上向いた。さらに、「リース・賃貸」(同1.3ポイント増)も、『建設』や『製造』がけん引し、建設機械や産業用機械関係の需要が上向き2カ月ぶりに改善した。 |
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『農・林・水産』(46.1)…同3.2ポイント減。7カ月ぶりに悪化。飼料や燃料費の高止まり、猛暑による水不足や畜産などへの悪影響が下押し要因となった。加えて、低調な住宅着工戸数の影響で木材への引き合いも弱く、漁業からは水揚げ量が少ないといった声もあげられた。
他方、「米作農」や鶏卵などの「養鶏業」では、販売価格の高値推移などが引き続き好材料となった。 |
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規模別:「大企業」「中小企業」が改善するも、「小規模企業」は悪化
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「大企業」と「中小企業」が改善した一方で、「小規模企業」は悪化した。「中小企業」は公共投資の増加や資材価格の落ち着きがみられる『建設』がけん引し、8カ月ぶりに改善した。規模間格差は5.3と3カ月連続で拡大した。 |
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「大企業」(47.3)…前月比0.2ポイント増。3カ月連続で改善。価格転嫁の進展や自動車関連の復調で『製造』や『卸売』がリードした。またインフラ更新など建築・工事需要の堅調さを受け『建設』は3カ月連続で改善し、50近くとなった。 |
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「中小企業」(42.0)…同0.1ポイント増。8カ月ぶりに改善。『建設』は「資材価格が落ち着きつつある」の声や大型案件の増加がみられ、上向いた。一方で、『不動産』は物件価格の上昇で購入が抑えられ、2カ月連続で悪化した。 |
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「小規模企業」(40.9)…同0.1ポイント減。2カ月ぶりに悪化。生産費用の高止まりや猛暑など異常気象による生育や畜産能力の低下を背景に『農・林・水産』が下向いた。また、節約志向の高まりや円安傾向を受け『卸売』も悪化に転じた。 |
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地域別:10地域中7地域が改善、観光需要がプラス材料に
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『北関東』『東海』など7地域が改善、3地域が悪化した。都道府県別では29都県で改善、16道府県で悪化。観光需要や地域特有の建設需要の増加が寄与した一方で、『北海道』などでは干ばつ・高温が『農・林・水産』を直撃した。 |
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『北関東』(41.3)…前月比1.2ポイント増。2カ月連続で改善。域内5県中「茨城」を除く4県で改善した。堅調な観光需要などで『サービス』は50に迫った。「山梨」は「国内観光客の需要が堅調」との声も聞かれ、最も改善幅が大きかった。 |
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『東海』(41.6)…同0.2ポイント増。2カ月ぶりに改善。域内4県中「岐阜」を除く3県で改善した。リニア中央新幹線を含め堅調な建設需要がけん引したほか、「自動車の生産台数が順調」などの声も寄せられた。 |
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『北海道』(43.7)…同0.2ポイント減。4カ月ぶりに悪化。生産コストの上昇に加え、干ばつ・高温による農作物や水揚げ量への影響がみられる『農・林・水産』が全体を下押しした。公共工事の減少を危惧する声があがる『建設』も悪化した。 |
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【今月のトピックス】 猛暑による企業活動への影響
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猛暑により企業からは客足の鈍化を危惧する声が多数寄せられた。他方、エアコン設置といった季節需要の特需も表れた |
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日別の最高気温の月平均(東京)は年々上昇。2025年より熱中症対策の義務化が開始、企業はハード・ソフトさまざまな対策を行う |
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