福祉のプロと表現のプロが協働する「仕事場」とは |
福祉施設を拠点にアートプロジェクトを展開する「TURN LANDプログラム」は、アーツカウンシル東京と東京都が主催した東京2020オリンピック・パラリンピックの文化プログラムの一環として2015年に始動した 「TURN」事業(令和3年度終了)の後継事業です。福祉施設にアーティストが訪ねる交流プログラムから始まり、およそ10年の試行錯誤を経て、福祉職員とアーティストが共に協働する共創型のアートプロジェクトへと発展させ、現在は運営事務局のNPOとの3者で実施しています。多忙な福祉現場と表現者との対話は、福祉施設に行き交う利用者たちのチカラを借りて重なり合い、多様で創造的な時間へと醸成されていきました。その貴重な取り組みの記録は動画や冊子となり公式ウェブサイトに掲載されています。 |
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今年度も都内で7件のプロジェクトが始動しました。表現者の思いや職員の特技、利用者の個性などが共鳴し合い紆余曲折を経て開発されるプログラムは、その施設の規模や特性を活かした特有のインクルーシブでサステナブルなものとなります。これらの取り組みは、多様で創造的な私たちの未来のために多くの人にとって有益な参考事例となるでしょう。ぜひご注目ください。 |
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TURN LANDプログラムの詳細はこちら
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アートプログラムを通じて交流するアーティストと福祉施設利用者。 |
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「TURN LANDプログラム」とは? |
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クリエイティブな仲間と過ごす時間 |
福祉施設の職員や利用者、アーティスト、地域の人々などが交流を重ね、拠点となる空間やそこに集う人々の魅力を見出しながら、 共にアートプログラムを開発します。 |
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異なる習慣/視野/価値観をもった人々がそれぞれの「違い」を受け止め合い「共に居られる状況」を目指し、アートと福祉分野の特性を活かしてさまざまな「壁」を創造的に乗り越え、少し先の未来が楽しみになるような状況をつくります。 |
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また、福祉現場の職員やアーティストたちが集い、知見を共有する場を設けることにより、豊かに共生できる社会の実現に向けて協力し合う仲間とのネットワークを醸成します。 |
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福祉現場の職員やアーティストたちが集い交流する「TURN LANDミーティング」の様子。 |
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2022年度から2025年度にかけて39プロジェクトを展開 |
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高齢者のグループホームやデイサービス、障害者福祉施設、フリースクール、放課後等デイサービスなど、多様な福祉の現場から19施設が参画しています。ダンサーや音楽家、エンジニア、哲学者などさまざまな専門性のあるアーティストが参加しています。 |
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参画施設一覧(※五十音順、2022年度~2025年度まで/終了施設も含む) |
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【障害者福祉施設】 |
浅草みらいど(障害者施設) |
大田区立池上福祉園(生活介護・重症心身障害者通所事業所) |
小茂根福祉園(板橋区立知的障害者通所施設) |
さくらんぼ(豊島区立心身障害者福祉ホーム) |
はぁとぴあ原宿(障害者福祉センター) |
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【放課後等デイサービス】 |
くるみの木 |
フェイト |
みかんの木 |
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【就労支援・生活訓練等】 |
ステップ夢(アルコール等依存症者・精神障害者の社会復帰訓練施設) |
ハーモニー(就労継続支援B型) |
ラ・マノ(就労継続支援B型) |
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【高齢者福祉・地域包括支援】 |
東京東浅草の家(認知症対応型共同生活介護) |
西荻ふれあいの家(高齢者在宅サービスセンター) |
はなまるほーむ浅草北(認知症対応型共同生活介護) |
ほうらい地域包括支援センター |
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【文化・教育・地域支援】 |
気まぐれ八百屋だんだん(こども食堂等を運営する文化センター) |
CINEMA Chupki TABATA(ユニバーサルシアター) |
翔和学園(生活訓練・就労移行支援・フリースクール等を行うNPO法人) |
ロートこどもみらい財団(教育支援を行う財団) |
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2025年度 参加アーティスト |
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伊勢 克也(美術家) |
SKANK(音楽家) |
アオキ 裕キ(ダンサー、振付家) |
大黒 健嗣(プロジェクトアーティスト) |
きむらとしろうじんじん(アーティスト) |
大西 健太郎(ダンサー 、パフォーマンス アーティスト) |
井川 丹(作曲家) |
田中 文久(作曲家・ソニフィケーションアーティスト・サウンドプログラマー) |
島田 明日香(クラリネット奏者) |
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共創のための対話が社会を更新する |
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アートプロジェクトは一過性の大型イベントとは異なり、参加者はアートを受け取るだけの「観客」になるのではなく、「プロジェクトメンバー」として協働します。普段接することのないアーティストと出会い、ともに新たなことに挑戦し思考し対話することでアートを体験します。 |
そのような体験は、福祉職員や利用者、そしてアーティストにとっても、自分のまわりの環境をいつもとは違う視点で見つめ直すきっかけになります。結果として、考え方や感じ方に変化が生まれ、それぞれが自分自身の成長を実感するような意識改革につながります。 |
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TURN LANDプログラムでは、普段さまざまな理由で文化施設に足を運ぶことが難しい人や、アートと出会う機会がなかった人が、アーティストと出会い協働します。こうしたプロジェクトの中で、立場や考え方の異なる人たちが協力しながら壁を乗り越え、創造的な「仲間」として関係を築いていきます。さらに、その経験をもった福祉職員が異動した先でも、柔軟な発想や「違い」を力に変える柔軟なマインドが引き継がれ、施設の垣根を越えて広がっていきます。 |
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プログラムの相談をするアーティストと福祉施設職員。 |
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福祉施設利用者と対話を重ねるアーティスト。 |
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施設の日常の中に、創造性を育む「時間」をどう取り入れていくか――。その最初の一歩を、アーティストやプロジェクトに伴走する事務局メンバーとともに模索していくことが、この事業の醍醐味です。 |
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異なる背景や習慣を持つ人々が、アートプログラムの実践を通して、非言語コミュニケーションも含めた「対話力」を育んでいきます。こうしたプロセスから得られる学びは、急速に変化するコミュニケーション手段や多様化する現代の価値観の中で、福祉やアートの分野にとどまらず、さまざまな業界で活用できる対話の技術として注目されています。 |
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個々の特性と向き合う福祉の現場と、アートが持つ「個性を引き出す力」とが響き合いながら生まれたこのプログラムは、今の私たちに本当に必要なコミュニケーションの在り方に気づかせてくれるはずです。 |
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必見のアーカイブ資料 |
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「違い」を乗り越えることに悩んでいる方はもちろん、創造的でありたいと願うすべての方に、ぜひご覧いただきたい内容です。 |
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本事業のプロセスを記録したアーカイブ動画や活動記録冊子などの資料は、公式ウェブサイトからご覧いただけます。冊子はダウンロードも可能ですので、ぜひご活用ください。 |
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[ウェブサイトに掲載中のアーカイブ資料] |
・アーカイブ動画 https://turn-land-program.com/archives_cat/project/
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・刊行物 https://turn-land-program.com/archives_cat/public/
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令和6年度の活動記録冊子 |
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「違い」を力に。福祉とアートの協働が生みだす新しい社会のかたち |
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福祉職員とアーティストが手を取り合い、「違い」を力に変える関係性を育みながら、障害のある人も文化的に暮らす地域社会の一員として参加していく--それが「TURN LANDプログラム」です。 |
本プログラムは、福祉職員とアーティストが密接に連携し、これまでにないアート表現や支援のあり方を共に模索する、画期的な取り組みです。互いの専門性と感性を掛け合わせることで、福祉とアートの垣根を超え、新たな価値と創造の場を生み出しています。 |
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障害のある人々も支援される側にとどまらず、アーティストと協働し、表現の喜びとともに文化を育む主体として地域社会に関わります。さまざまな分野の専門家が関わるこのような協働のかたちは他に類がなく、「課題の共有」ではなく「魅力の共有」から始まる関係性づくりが、異なる背景を持つ人々との協働を可能にしています。 |
質の高い文化プログラムだからこそ実現できる、丁寧で創造的な運営やプロセスは、多様な社会における新しい共生のあり方を示しています。 |
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福祉職員による活動紹介動画も、ぜひご覧ください。https://turn-land-program.com/archives_cat/project/
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一般公開イベントのご案内 |
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TURN LANDプログラムの取り組みを実際に体感いただける、一般公開イベントを開催します。福祉施設を舞台に展開される共創の現場に触れられる貴重な機会です。ぜひご参加ください。 |
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■ 9月28日(日) |
「TURN LANDミーティング+(プラス)」in りばぁさいど原宿 本事業の紹介や最先端の福祉施設の施設見学や紹介、参加アーティストによるパフォーマンス、プロジェクト関係者によるトークや参加者同士の交流を通じて、TURN LANDの魅力を立体的にご紹介します。 |
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■ 10月18日(土) |
浅草みらいど × きむらとしろうじんじん「野点(のだて)」開催 アーティスト・きむらとしろうじんじんによる「野点」を、福祉施設・浅草みらいどとのコラボレーションで開催します。誰もがふらりと立ち寄れる開かれた場をつくります。 |
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※各イベントの進行状況や詳細については、公式ウェブサイトにてご確認ください。 |
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7月に実施した、クラフト工房LaMano(ラ・マノ)での「TURN LANDミーティング」の様子。TURN LANDプログラムの参加職員・アーティストが集い、施設を紹介するツアーをはじめ、TURN LANDの活動の成果や今後の展望について語った。 |
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Photos by Ayaka Umeda |
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【問い合わせ先】 |
一般社団法人 谷中のおかって |
TURN LANDプログラム事務局(担当:渡辺) |
MAIL:info.turnland@gmail.com |
WEB:https://turn-land-program.com/
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