JR東日本は、2024年12月6日に国土交通大臣へ鉄道事業の旅客運賃の上限変更認可申請を行っておりましたが、本日、申請通りに認可されました。これに伴い、上限の範囲内で設定する運賃について国土交通大臣に届出を行うとともに、旅客運賃の計算方法の変更等について関係運輸局長への認可申請等を行いました。
 なお、運賃改定日については決まり次第、お知らせいたします。
○ 今回のプレスにて新たに発表するポイント
1.特定区間(東京地区)の運賃及び廃止区間・存続区間の詳細をお知らせいたします。
2. オフピーク定期券は、通常の通勤定期券の約15%割引を継続するとともに設定範囲を拡大します。
3. 山手線内均一定期券を廃止します。

1.改定理由
 当社は1987年4月の会社発足以来、安全を経営のトッププライオリティに位置づけ、安全・安定輸送の確保と鉄道ネットワークの拡充及びサービス品質の向上に取り組んでまいりました。また、インフラ設備の安全レベルの向上やお客さまにより安心してご利用いただけるよう、自然災害対策、信号・保安装置の改良、ホームドアの整備や踏切事故防止対策、耐震補強対策などこれまでに5兆円を超える安全投資を実施してまいりました。
 この間の修繕費などのコスト増や設備投資の増については、生産性の向上や財務体質の改善等の経営努力で吸収することにより、運賃水準は消費税率の引き上げや鉄道駅バリアフリー料金の導入等を除いて、会社発足時の水準を維持してまいりました。
 しかしながら、既に想定してきました人口減少と少子高齢化に伴う人口構造の変化によるマーケットの厳しい変化に加え、コロナ禍を経て当社を取り巻く社会環境の変化が加速するとともに、昨今のエネルギー価格をはじめとする物価の高騰による経費の増加、人手不足・人件費上昇・人材の流動性が高まる中で鉄道のオペレーションに必要不可欠な人材の確保・定着に向けた待遇改善等、今後も厳しい経営環境は継続する見込みです。
 このように鉄道事業の収益確保が厳しさを増す一方で、鉄道を安全に運行し続けるためには、安全のための投資や、新しい技術の導入・開発のほか、車両や地上設備を着実に管理し、健全性を維持することが不可欠であり、多くの労力と費用が必要となります。加えて多様化するお客さまニーズ、鉄道に求められる社会的な役割を踏まえた安全やサービスレベルの向上、老朽化した車両・設備の更新、激甚化する自然災害やカーボンニュートラルへの対応が必要となります。
 このような状況に対処すべく、当社では運行体制のスリム化、駅業務の変革、チケットレス化による効率的な販売体制の構築、CBM※1等のスマートメンテナンス等により、鉄道事業におけるオペレーションコストの削減に取り組んでおり、今後も更なる経営の合理化に努めてまいりますが、鉄道事業を次の世代へと将来にわたってつなげていくためには、これまでの生産性向上等の経営努力のみでは限界があり、設備投資や修繕等に必要な資金を安定的に確保することが困難な状況となっていることから、この度、運賃改定を実施いたします。
 今後とも「究極の安全」の追求を経営のトッププライオリティとして堅持し、事業継続に必要な対応を着実に実施しながら、これからもお客さまの日々の生活を支え、これまで以上に安全で快適な輸送サービスの実現とサービス品質や利便性の向上に努めてまいります。
(※1)「CBM」…Condition Based Maintenance:状態基準保全。
 
2.改定内容 ※運賃の改定申請プレス(2024年12月6日発表)にて既にお知らせした内容
 今回の運賃改定では、「幹線」、「地方交通線」の通学定期旅客運賃を除き、当社管内全エリアの運賃を改定いたしますが、特に東京圏の運賃の値上げ幅が大きくなります。これは首都圏に設定している他のエリアよりも低廉な「電車特定区間・山手線内」の運賃区分を「幹線」に統合することによるものです。
 「電車特定区間・山手線内」の運賃は、国鉄時代に「競争力のある運賃設定を目的とした首都圏の運賃抑制策」として設定されましたが、現在では他の鉄道事業者との運賃格差が逆転又は縮小しています。一方で、当該エリアにおいては、これまでも安全性・利便性・快適性等の向上のための設備投資を重点的に実施しており、今後も継続して設備投資が必要なエリアであることから、これらを勘案したうえで今回見直しを行うことといたしました。
 
(1) 普通旅客運賃
・平均7.8%の改定を行います。
・首都圏に設定している他のエリアより低廉な「電車特定区間・山手線内」【図1】の運賃区分を「幹線」に統合します。
・消費税の転嫁方法について、現在の電車特定区間・山手線内と同様、幹線・地方交通線のきっぷ運賃は1円単位の端数を四捨五入から切り上げへ変更します。これによりIC運賃は、きっぷ運賃より低廉または同額となります。(小児の一部区間を除く)
・キロ数に賃率を乗じて算出する11km以上の幹線の運賃は、11km以上300km以下に適用する賃率を16.96円(+4.7%)、301km以上600km以下に適用する賃率を13.45円(+4.7%)へ引き上げます。また、地方交通線の運賃は現行と同様、幹線の賃率を1.1倍した額となります。なお、601km以上に適用する賃率は据え置きます。
・10kmまでの運賃は、税抜運賃を4.7%引き上げます。
・JR他社をまたがる際の運賃に新たに通算加算方式を導入し、加算額を設定します。
 
(2) 定期旅客運賃
・通勤定期旅客運賃は平均12.0%、通学定期旅客運賃は平均4.9%の改定を行います。
・普通旅客運賃と同様、通勤定期旅客運賃・通学定期旅客運賃ともに「電車特定区間・山手線内」の運賃区分を「幹線」に統合します。
・通勤定期旅客運賃は普通旅客運賃の改定相当分を反映します。加えて、有効期間が6箇月のものは割引率を見直します。
・通学定期旅客運賃は、「幹線」、「地方交通線」は据え置きとし、割引率を拡大します。
・JR他社とまたがる際の運賃に新たに通算加算方式を導入し、加算額を設定します。
 
(3) その他
・鉄道駅バリアフリー料金は廃止します。
・グリーン定期券、新幹線定期券の価格は今回の運賃改定に伴い値上げとなります。
 
(4) 改定率・増収率
3.上限の範囲内で設定する運賃
(1) 特定区間(東京地区)の設定について 【別紙1参照】
 特定区間(東京地区)の普通旅客運賃および定期旅客運賃は、国鉄時代に他の鉄道事業者と競合している区間に通常の運賃よりも低廉に設定されましたが、現在では、路線形態の変化から当社とは直接競合関係とならない区間やお客さまのご利用が少ない区間があることから特定区間に関しては一部の区間を除き廃止します。なお、廃止後の運賃は「幹線」が適用となります。
※特定区間の廃止に伴い、一部「幹線」のエリアにおいて通学定期旅客運賃が値上がりする区間があります。
 
(2) オフピーク定期券の設定について 【別紙2参照】
 オフピーク定期券は、通常の通勤定期券より割安な Suica通勤定期券として「東京の電車特定区間内」に設定しておりますが、運賃改定後も通常の通勤定期券の約15%割安な価格で継続して設定するとともに、朝の通勤時間帯における首都圏でのご利用状況に鑑み、現行の範囲から拡大して設定します。なお、オフピーク定期券の拡大エリアにおける各駅のピーク時間帯は、現在実施中の「オフピークポイントサービス」のピーク時間帯と同一です。【図2参照】
 なお、首都圏の一部エリアで実施中の「オフピークポイントサービス」については、オフピーク定期券の設定範囲の拡大に伴い2026年3月末をもって終了します。
 
4.運賃改定に伴って変更となる旅客運賃の計算方法 
 東京・熱海間では東海道新幹線と東海道線を同一の線路として運賃計算を行っておりますが、当社の運賃改定により運賃が異なることとなるため、運賃改定後は異なる線路として運賃計算を行います。これに伴い、普通乗車券については売り分けを行うとともに、ご利用の区間・経路によって運賃計算経路が変更となる場合があります。なお、東海道新幹線(東京・熱海間)を含む定期券については値上げとなりますが、取扱方法に変更はありません。
  ※ 詳細については別途お知らせいたします。
 
5.山手線内均一定期券の廃止について
 「山手線内」をご利用されるお客さまを対象として、「山手線内均一定期券」(1箇月14,970円)を発売しておりますが、「山手線内」の運賃区分を「幹線」に統合することやご利用状況等に鑑み、廃止します。
 
6.運賃改定の実施日
   2026年3月
※ 運賃改定日については決まり次第、お知らせいたします。
 
7.運賃改定に伴う告知について
運賃改定の詳細につきましては、特設サイト「運賃改定のお知らせ」(https://www.jreast.co.jp/2026unchin-kaitei/)をご覧ください。
【参考】 ※運賃の改定申請プレス(2024年12月6日発表)にて既にお知らせした内容
 
1.運賃改定の主なポイント
(1) 改定の方向性
1.「わかりやすい運賃体系」を実現します
・「電車特定区間」、「山手線内」の運賃区分を「幹線」に統合します
・普通旅客運賃は「IC≦きっぷ」となるよう改定します(小児の一部区間を除く)
2. 全エリアの運賃を改定(値上げ)します
・「幹線」、「地方交通線」の普通旅客運賃・通勤定期旅客運賃を改定します
・6箇月の通勤定期旅客運賃の割引率を見直します
3. 通学定期旅客運賃は家計の負担に配慮します
・家計負担を考慮し、「幹線」、「地方交通線」の通学定期旅客運賃は据え置きます
※ 「電車特定区間」、「山手線内」は「幹線」に統合するため、改定となります
 
(2) 改定率(値上げ率)                
普通運賃7.8%、通勤定期12.0%、通学定期4.9%
 2.鉄道部門の収支の実績および推定
3.運賃・料金収入内訳
4.需要の推移および今後の見通し
5.設備投資実績・計画
(1) 設備投資実績と計画
※2「国土強靭化」や「DX」に資する、新幹線電路設備老朽化対策や指令システム整備等、政策的に必要性が高く加速化すべき設備投資を、2026~2028年度に138億円以上実施予定です。
 
(2) 主要プロジェクトの内容
1. 安全安心なインフラを社会のために
ア)「ホームドア整備」(2021~2031年度、約4,100億円)
ホームでのお客さまの転落や列車との接触を防止する対策としてホームドアの整備を進め、2023年度末までに山手線、京浜東北・根岸線を中心に117駅(線区単位)233番線でホームドアの整備を完了しました。さらなる早期整備に向けて、主要な番線以外も含めた東京圏在来線主要路線の330駅(線区単位)758番線に整備対象を拡大し、軽量型の「スマートホームドア」の導入や設計荷重の見直しなどによる工期短縮を図りながら引き続き整備を進めます。
イ)「大規模地震対策」(2017~2033年度、約4,500億円)
大規模地震発生時における安全性確保のため、耐震補強工事を着実に進めます。新幹線の高架橋柱についてはすべてのラーメン橋台約6,000本を2028年度まで、新幹線電柱は約4,000本を2027年度までに施工を行います。
ウ)「事故防止策」(2021~2028年度、約320億円)
踏切事故防止のための3DLR式障害物検知装置等の整備や新幹線台車モニタリング装置の整備など、安全対策を着実に進めます。
エ)「鉄道設備更新」(2021~2028年度、約1兆2,280億円)
事業用車両の増備、変電所、電車線設備等の鉄道設備更新を計画的に実施し、安全性向上とより効率的なオペレーションを実現します。
 
2. 活力ある社会のために  ●モビリティと生活ソリューションの融合プロジェクト
ア)「羽田空港アクセス線(仮称)」(2023~2031年度、約2,800億円※)
東京駅や宇都宮線・高崎線・常磐線方面から羽田空港へのダイレクトアクセスを実現する、羽田空港アクセス線(仮称)の工事を進めます。休止貨物線など既存資産を有効活用し、田町駅付近で上野東京ラインと直通させることで、東京圏鉄道ネットワークを更に充実させます。※国の空港整備事業のうち、JR東日本に関係するトンネル本体などの工事費(約700億円)を含みます。
イ)「在来線着席サービス」(2018~2024年度、約860億円)
中央快速線等のグリーン車の車両新造と関連する地上工事を進めました。
ウ)「駅改良、バリアフリー設備整備」(2007~2030年度、約3,300億円)
渋谷駅などの駅改良、バリアフリー設備の整備を引き続き進めていくことで、すべてのお客さまにとって魅力ある使いやすい駅を目指します。
エ)「TAKANAWA GATEWAY CITY」(2009~2025年度、約6,000億円)●
“Global Gateway”をコンセプトに掲げ、TAKANAWA GATEWAY CITYのまちづくりを推進します。「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と位置づけ、新たなビジネス・文化が生まれ続ける街を目指します。THE LINKPILLAR 1および高輪ゲートウェイ駅周辺エリアを2025年3月27日にまちびらきしました。
オ)「東北新幹線福島駅アプローチ線」(2018~2026年度、約120億円)
山形新幹線(上り)から東北新幹線(上り)に、立体交差で接続するアプローチ線の増設工事を進めます。山形新幹線と東北新幹線が平面交差する現在の状況を解消し、輸送の安定性を更に高めます。
 
6.研究開発活動
 技術革新中長期ビジョンに掲げた「安全・安心」「サービス&マーケティング」「オペレーション&メンテナンス」「エネルギー・環境」の4分野において、IoTやビッグデータ、AIなどを活用して、新しい価値を生み出すために時代を先取りした技術開発を推進します。
 なお、2026~2028年度で606億円の研究開発費を原価に計上しています。
 
7.これまでの経営合理化の状況および今後の取組み
 当社はこれまで安全性とサービス品質の向上を実現し、鉄道のネットワークの拡充を進めることでご利用の増加につなげるとともに、生産性の向上に取り組んできました。JR東日本グループ経営ビジョン「変革2027」に掲げる主な構造改革として、鉄道事業におけるオペレーションコストの削減に取り組み、運行体制のスリム化、駅業務の変革、CBM等のスマートメンテナンス、チケットレス化による効率的な販売体制の促進等を進めることで、オペレーションコストを2027年度に1,000億円(2019年度比)削減できる見込みです。今後も新たな技術を取り入れながら持続的成長を加速させ、更なる経営の合理化に努めます。
 
8.わかりやすい運賃体系の構築
 当社は4種類の運賃(幹線、地方交通線、電車特定区間、山手線内)を設定しており、運賃体系および運賃水準は会社発足以降、消費税改定を除いて見直しをしておりません。このうち首都圏に設定している電車特定区間および山手線内の運賃については、国鉄時代に当時の運行形態や他の鉄道事業者との競合等を勘案し、基本となる幹線の運賃より割安に設定されたものです。しかしながら、現在は当時の状況とは大きく変化していることから、首都圏エリアに一定の境界を設けて運賃差を設けることなく、電車特定区間および山手線内の運賃を幹線の運賃と同等水準にまで引き上げることにより、シンプルでわかりやすい運賃とすることとします。
 また、ICカードを利用する場合は1円単位、きっぷを利用する場合は10円単位の運賃となりますが、これまで幹線、地方交通線をご利用になる場合、ICときっぷの価格が「IC<きっぷ」となる区間と「IC>きっぷ」となる区間が混在しており、わかりづらい状況となっていました。今回の改定においては、価格を「IC≦きっぷ」に揃えることで、よりシンプルでわかりやすい価格体系を実現します。
 
9.利用者サービス向上策
(1) 安全安心なインフラを社会のために
1.ホームにおける安全対策
 ホームでのお客さまの転落や列車との接触を防止するため、首都圏におけるホームドアの早期整備に向けて、軽量型の「スマートホームドア」の導入や設計荷重の見直しなどによる工期短縮を図りながら引き続き整備を進めます。
2. 鉄道運転事故防止
 踏切事故防止策として、障害物検知装置や全方位警報灯を整備するほか、立体交差化や統合・廃止、廃止が困難な第3種・第4種踏切については、第1種化に取り組むなど、ハード・ソフト両面から安全性向上に取り組みます。さらに、鉄道設備の計画的な更新等により、安全性向上と効率的なオペレーションに努めます。
3.自然災害に対するリスク低減
 大規模地震に備えた耐震補強対策を推進するほか、激甚化する自然災害へ備えるため、降雨・強風・雪等に対する検討や対策を進めます。
 
(2) 快適な都市のために
1. 輸送サービスの拡充
 中央快速線等へのグリーン車導入により着席サービスを向上したほか、羽田空港アクセス線(仮称)工事により、東京圏鉄道ネットワークを更に充実させます。また、山形新幹線には車椅子スペースの増設等、車内設備を充実させたE8系を順次導入するほか、東北新幹線福島駅におけるアプローチ線の増設による輸送の安定性向上に向けた工事を引き続き進め、より便利で快適な新幹線輸送サービスの提供を目指します。
2.混雑緩和の取組み
 平日朝の通勤時間帯の混雑緩和を実現するため、2023年3月より通常の定期券より割安な「オフピーク定期券」サービスを提供していますが、運賃改定後も継続して設定するとともに、朝の通勤時間帯における首都圏でのご利用状況に鑑み、現行の範囲から拡大して設定いたします。
 また三大繁忙期のご利用の平準化を実現するため、2022年4月よりシーズン別料金を見直しするとともに、通常の新幹線の普通車指定席より割安な「新幹線eチケット(トクだ値)」の座席数を、ピークを避けた対象日に多めに設定しています。
 さらにみどりの窓口の混雑緩和を目的として、新規購入時に一度だけ通学証明書等を窓口にお持ちいただければ、その後は卒業まで確認の省略が可能となるよう、通学定期券の発売方法を見直すとともに、指定席券売機の新型機の導入や払いもどし機能を拡充していきます。