我々とは左右反転の構造を持つ生命―― “鏡像生命”の世界を短編小説で体感!豪華作家陣によるSF短編集。

日刊工業新聞社(代表取締役社長:神阪拓 本社:東京都中央区)は、書籍『鏡の国の生き物をつくる SFで踏み出す鏡像生命学の世界』を8月31日に発売します。

見た目は同じ、知性も同じ、しかし分子構造は鏡写しのように反対、そんな生き物をつくろうとする研究が進んでいる。鏡像生命学と呼ばれるこの研究は、医療や化学分野に革新をもたらす一方、危険性も指摘されている。鏡像生命をテーマに、研究者たちが最前線の状況を、5人のSF作家が未来と可能性を描く。

私たちの体を形づくるタンパク質は「L型」と呼ばれるアミノ酸でできているのですが、これを鏡写しにしたものは「D型」のアミノ酸をつくることができます。このように、体の様々な部品を鏡写しにした生命こそが”鏡像生命”です。鏡写しの構造を持つ”鏡像生命”は、味覚や嗅覚、栄養や毒として作用するものに至るまで、私たちとは構造レベルで異なります。我々と同じ言葉を話しながら、まったく違う感覚や文化をもつ“もうひとつの人類”と出会ったとき、私たちの世界はどう変わるのでしょうか。

僕が勤める会社は、DNAを反転させた植物を作るバイオベンチャー。実験農場の周辺住民から異臭がするという通報を受けて現場に向かったが、育てている植物たちには異変は見つからず……。(柞刈湯葉/『螺旋を左に、ハンドルを右に』)宇宙コロニー「Dワールド」では、鏡像生命たちが独自の生態系を維持している。だが、鏡像生命が流出することがないように厳重に隔離されているはずのエリアに、生身の人間がいるという噂がささやかれていた──。(八島游舷/『Dワールド』)この星では、分子構造が鏡写しになった〈ラ〉と〈ダ〉という人類が共存している。〈ラ〉のマニエと〈ダ〉のレイ、子どもはどちらの分子構造にすべきなのか悩んでいる二人のもとに、〈ラ〉と〈ダ〉の起源にまつわる知らせが飛び込んできて……。(麦原遼/『均衡線』)体重の激増に悩む高校生のエリカは、最適なダイエット法を知るためにとある遺伝子調査を受ける。 だが調査の結果がエラーになったことをきっかけに、人類の起源を解き明かす研究にキーパーソンとして巻き込まれ……。(茜灯里/『乙姫なんかじゃない』)鏡像生命によって世界が大きく変わってしまったのはいつだったのだろうか。鏡像生命が発見され、合成生物学者は陰謀論者による誹謗中傷や暴力に晒された。人々は大混乱に陥るが、それでも世界は後戻りできずに変容していく──。(瀬名秀明/『ウィクラマシンゲによろしく』)

【小説】茜 灯里・柞刈湯葉・瀬名秀明・麦原 遼・八島游舷

【コラム】高田咲良・チョン・ソヨン・見上公一・山本直希

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