株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、代表取締役社長:出雲充)と慶應義塾大学と北里大学との共同研究において、絶食時に微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ、以下「ユーグレナ」)由来のパラミロンを摂取することにより、腸内の有用菌の一種であるバクテロイデス属の選択的増加がみられ、また、糞便中の免疫に関わる物質IgAの産生が高まることを確認しました。本研究成果は学術雑誌BMC Microbiologyに掲載※1されました。 |
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■腸内細菌叢(腸内フローラ)と絶食の関係 |
腸内細菌叢は腸内フローラとも呼ばれ、何兆もの微生物からなる複雑な生態系で、炎症・代謝・認知などの健康に関与し、食事内容によってその構成が変化するため、食事介入による健康改善が期待されています。食物繊維などのMAC※2は、摂取すると腸内細菌によって発酵され、短鎖脂肪酸などの有益な代謝産物を生成し、腸内細菌叢の構成を変化させる「モジュレーター」として機能することにより、腸内環境を改善する可能性があります。しかし、腸内細菌叢の恒常性により、MACを含む食事介入だけでは、腸内細菌叢を短期間で大きく変えるのは困難です。 |
絶食とは、食物を一切摂取しない状態を指し、医療現場においては検査や手術の前後に、また「断食」として健康法、宗教的な儀式において行われます。絶食によって腸内細菌叢の構成が変化し、一時的にその恒常性が崩れることで、腸内環境がMACによる変化を受け入れやすくなる可能性があります。 |
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※1 Sato K, Nakashima A, Fukuda S, Inoue J, Kim YG. Fasting builds a favorable environment for effective gut microbiota modulation by microbiota-accessible carbohydrates. BMC Microbiol. 2025 Jul 5;25(1):414. doi: 10.1186/s12866-025-04140-y. PMID: 40618036; PMCID: PMC12228412 (https://bmcmicrobiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12866-025-04140-y) |
※2 Microbiota-Accessible Carbohydrates;人間の消化酵素では分解されにくい炭水化物であり、腸内細菌によって分解・発酵されることで、腸内環境に影響を与える。主に食物繊維やオリゴ糖などを指す |
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■研究の内容と結果 |
今回の研究では、絶食が腸内細菌叢の構成とMACによる調節にどのような影響を与えるかを、マウスモデルを用いて検証した結果、36時間の絶食により、腸内細菌叢のバランスが大きく変化することが分かりました(図1)。また、絶食時にMACを摂取させることにより、MAC単独摂取よりも特定の細菌が顕著に増加し、さらにMACの種類によって増加する細菌の種類が異なることが分かりました。以上のことから、絶食により腸内環境が変化し、MACに対する腸内細菌の感受性が高まることが示唆されました。パラミロンは、今回の実験に用いたMACの一つであり、以下の通り、絶食時のパラミロン摂取が与える影響について確認しました。 |
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図1 絶食時の腸内細菌叢の変化 ※1より、図1(c)を引用 |
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その結果、絶食+パラミロン摂取が、特定の腸内細菌叢の占有率を増加させ、糞便中IgA産生を増加させる可能性を確認しました。 |
マウスを6群に分け、通常飼料摂取コントロール群、絶食なしユーグレナ摂取群、絶食なしパラミロン摂取群、絶食コントロール群、絶食ありユーグレナ摂取群、絶食ありパラミロン摂取群を設置し、絶食ありの群には、36時間の絶食中にユーグレナまたはパラミロンを摂取させ、腸内細菌叢への影響を評価しました。その結果、絶食によって腸内細菌叢のバランスが変化し、さらに絶食中のパラミロン摂取で、Bacteroides や[Eubacterium] coprostanoligenes の相対占有率が有意に増加しました(図2)。 Bacteroides は、腸管免疫の成熟と安定化に重要な役割を果たしていること、[Eubacterium] coprostanoligenes は、コレステロール低下に寄与することが知られています。 |
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図2 各群の腸内細菌叢の変化 ※1より、図5(d)(e)を引用 / One-way ANOVA followed by Dunnett’s test., ****p<0.0001, **p<0.01, *p<0.05 |
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また、その時の糞便中のIgAを測定したところ、絶食+パラミロン摂取群において、有意に産生が多くなりました(図3)。IgAは体内で産生される抗体(免疫グロブリン)の一種で、特に粘膜の免疫防御に重要な役割を果たしています。IgAの誘導にも関わるとされている、Bacteroidesの相対占有率が増加したことが関わっている可能性があります。 |
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図3 各群の糞便中IgAの産生量 ※1より、図5(g)を引用 / One-way ANOVA followed by Dunnett’s test., **p<0.01 |
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これらのことから、絶食とパラミロン摂取を組み合わせることで、短期間で腸内環境と免疫機能に関する効果が期待できる可能性が示されました。今後も当社では、ユーグレナ摂取による健康へのさらなる可能性の解明と、ユーグレナおよびその含有成分の健康食品、医療分野等での利活用や食材としての付加価値向上を目指し、研究開発を続けてまいります。 |
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<株式会社ユーグレナについて> 2005年に世界で初めて微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功。「Sustainability First(サステナビリティ・ファースト)」をユーグレナ・フィロソフィーと定義し、微細藻類ユーグレナ、クロレラなどを活用した食品、化粧品等の開発・販売、バイオ燃料の製造開発、未利用資源等を活用したサステナブルアグリテック領域などの事業を展開。2014年より、バングラデシュの子どもたちに豊富な栄養素を持つユーグレナクッキーを届ける「ユーグレナGENKIプログラム」を、継続的に実施している。 |
https://euglena.jp |
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