「最高の恋愛相手と結婚し、その後もずっとパートナーを愛し続けるのが理想」という結婚観・夫婦観を、「ロマンチックラブイデオロギー」と呼びます。研究によると、恋愛と結婚を結び付ける考え方が生まれたのは19世紀くらい。日本では1960年代以降に恋愛結婚が主流となり、2020年代では約8割が恋愛結婚となっています(第16回出生動向基本調査)。
しかし近年、若者の恋愛離れが進み、婚姻率は下がる一方になりました。また、離婚も当たり前の現象になっています。今までの恋愛と結婚の結びつきは揺らいでいるようです。結婚における恋愛結婚の割合も、2000年初頭の約9割をピークに低下傾向にあります。
そもそも恋愛と結婚は両立するものなのかが、本調査の問いになります。今回は、恋愛以外の縁で結婚した男女の間に恋愛感情が生まれるのかを調査しました。
本調査は、既婚者コミュニティを運営するレゾンデートル株式会社(東京・新宿区)が行うアンケート調査です。結婚後の人生の多様な在り方に関する参考資料を得る目的で行っています。
(参考文献)
※1 牛窪恵:『恋愛結婚の終焉』(光文社新書、2023年)
※2 谷本奈穂・渡邉大輔「ロマンティック・ラブ・イデオロギー再考―恋愛研究の視点から」、『理論と方法』31巻1号(数理社会学会、2016年)
※3 大塚明子「近代家族とロマンティック ・ラブ ・イデオロギーの2類型」『文教大学女子短期大学部研究紀要』第45集(2002年)
※4 国立社会保障・人口問題研究所『第16回出生動向基本調査』(2023年)
※5 レゾンデートル株式会社『夫婦のセックスレスに関する実態調査』(2023年)
※6 木村絵里子「1980 年代の「恋愛至上主義」」、高橋幸・永田夏来編『恋愛社会学: 多様化する親密な関係に接近する』(ナカニシヤ書店、2024年)
<調査概要>
・調査タイトル:ロマンチックラブイデオロギー調査 第6報
・調査期間:2024年12月19日~30日、2025年5月12日~5月16日
・調査対象者:「恋愛結婚ではない」と回答した既婚男女80人
(20~59歳、男性38人・女性42人)
・調査方法:インターネット(セルフ型アンケートツールFreeasyを利用)
・エリア:全国
・調査機関:レゾンデートル株式会社(https://raisondetre-inc.co.jp/)
・調査報告の掲載:既婚者の男女関係に関する調査 ※検索するとすぐに見つかります
・本報告の発表日:2025年5月31日
<調査対象者について>
下表の通り男女、各年代ともおおむね均等なサンプルになっています。。
男性(38人) | 女性(42人) | |
20代 | 14人(36.8%) | 13人(31.0%) |
30代 | 5人(13.2%) | 7人(16.7%) |
40代 | 10人(26.3%) | 12人(28.6%) |
50代 | 9人(23.7%) | 10人(23.8%) |
回答者に地域的な偏りはありません。
1) 結婚後に恋愛感情は生まれた?
「令和もやっぱり「恋愛結婚」が良いですか?─ロマンチックラブイデオロギー調査 第1報」(レゾンデートル社調べ)で、既婚者559人に「恋愛結婚だったか」を尋ねたところ、8割以上が恋愛結婚と回答しました。
そこで、「いいえ」(恋愛結婚ではない)と回答した80人に「結婚後、パートナーに恋愛感情が生まれたか」を尋ねたところ、次の結果となりました。
結婚後に恋愛感情が生まれた割合は、男性31.6%、女性23.8%と低いものでした。男性よりも女性が低い点が特徴的です。
この結果から、例えばお見合いなどの恋愛以外で結びついた場合、「結婚後に相手を好きになるかもしれない」と考えるのは少し楽観すぎるといえるかもしれません。恋愛的な「好き」は生まれにくいようです。
「結婚後、いつまで妻/夫に恋愛感情が続いた? いつ醒めた?─ロマンチックラブイデオロギー調査 第4報」(レゾンデートル社調べ)では、恋愛結婚でも「今もパートナーに恋愛感情がある」と回答したのは4割強ですから、恋愛結婚でもそうでなくても配偶者に恋愛感情を抱き続けるのは難しいとはいえそうです。
ただし、恋愛以外の「好き」もあります。人間的に好き、家族として好きなどです。今後の調査で結婚の満足度、配偶者への感情を調査していく予定ですから、その結果も合わせてご覧ください。
年齢別に比較してみると、男女差が顕著に出た年齢層がありました。
サンプル数が少ないため、参考程度にしかなりませんが、男性は年齢を重ねるごとに妻への恋愛感情が生まれるのに対し、女性の伸びは低く、50代で大きな差が開いています。
2) 恋愛感情が生まれた人と生まれなかった人の結婚満足度
結婚に恋愛感情が不要かと言えば、そうでもなさそうです。満足度を比較すると大きな差がありました。
恋愛を経ずに結婚しても、恋愛感情が生まれないままだった人は62.1%が結婚に不満足と回答しています。これに対し、恋愛感情が生まれた人は86.3%が満足と回答しています。サンプル数の少なさを勘案しても、圧倒的な差です。
3) 今回のまとめと今後の展開
今回の調査で、恋愛結婚以外の縁で結びついたカップルが結婚後、パートナーに恋愛感情をもつケースは低いこと、恋愛感情が生まれた場合の結婚満足度は非常に高く、生まれなかった場合は結婚満足度が低いということが判明しました。結婚と恋愛感情の関係を考えるうえで示唆に富む結果です。
今後は、「結婚への満足度」「配偶者に愛があるか」「パートナーから愛を感じるか」などを調査していきます。ロマンチックラブイデオロギーが浸透したなかで結婚したカップルが、自分の結婚と夫婦間の愛情をどのように認識しているのかを分析していきます。
◎調査の目的
私どもレゾンデートル株式会社(東京都新宿区)は、「結婚後の新たな生き方」を提案する既婚者向けメディアやネットサービスの展開を行うシステム開発企業です。現代の夫婦関係のあり方や多様性を把握し、今後のサービス開発に向けた市場動向を探るため、今回の調査を企画しました。
◎調査内容・本リリースに関するお問い合わせ
今回の調査内容やデータの詳細に関するお問い合わせ、報道関係の皆様の取材依頼やお問い合わせは下記までお願い申し上げます。
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レゾンデートル株式会社(https://raisondetre-inc.co.jp/)
〒160-0022 東京都新宿区新宿4-3-15 レイフラット新宿B棟3F
問い合わせアドレス : urano@raisondetre-inc.co.jp
担当:浦野圭介