~HPEM/EMP/IEMI防護技術の研究を支える試験設備を構築~
NTTアドバンステクノロジ株式会社(以下:NTT-AT、本社:東京都新宿区、代表取締役社長:伊東 匡)と音羽電機工業株式会社(以下:音羽電機工業、本社:兵庫県尼崎市、代表取締役社長:吉田 厚)は、公的研究費による共同研究の成果として、高出力電磁界(High Power Electromagnetics:HPEM)や電磁パルス(Electromagnetic Pulse:EMP)、意図的電磁妨害(Intentional Electromagnetic Interference:IEMI)*1 に対する耐性を回路基板・防護部品レベルで評価することが可能な試験設備を構築しました。
 
本設備は、SF6ガス*2 を使用しない高耐圧・コンパクトなG-TEMセル*3 をはじめ、マイクロ波試験システムおよび広帯域ストリップライン試験システムで構成し、従来は大型設備が必要であった高電界試験を実験室レベルで実施可能としています。
今後、この成果を用いて、電子機器や社会インフラの信頼性向上に向けたHPEM/EMP/IEMI防護技術の研究開発および評価手法の高度化に貢献します。
 
※本成果は、防衛装備庁「安全保障技術研究推進制度JPJ004596(2022年から2026年)」にもとづく研究の一環として得られたものです。
1.背景
電子機器は、高周波化・極微細化・低電圧化が急速に進展する一方で、HPEMやEMPにより電子回路に強い電磁エネルギーが誘起され、過大な電圧や電流によって電子機器の誤作動や機能停止が引き起こされる脅威(1)が近年高まっています。また、意図的にHPEMを発生させ、電子機器に妨害を与えるIEMIに対する防護の必要性も国際的に高まっており、これらに関連する国際規格の整備が進められています(2)(3)。
 
こうした背景のもと、電子機器を安全かつ安定的に使用するためには、HPEM/EMP/IEMI防護技術の高度化と、その有効性を検証する評価技術の確立が不可欠であり、インフラ・産業機器・情報通信システムなどへのHPEM/EMP/IEMI防護の重要性が報告されています(4)。
 
HPEM/EMP/IEMIが電子機器におよぼす影響を実験的に検証するため、これまでにさまざまなHPEMを発生させる試験装置が開発されてきており(5)、特定の周波数から広い周波数範囲にわたる多様な試験装置が存在しています。
 
HPEM/EMP/IEMI防護技術の実用化および高度化に向けた評価においては、対象となる電子機器全体の耐性評価に加え、内部の防護回路や防護部品の挙動を定量的に評価する手法の確立が重要となります。しかし従来のHPEM試験装置では、電子機器全体としての耐性や脆弱性を評価することを主目的にしているため、設備が大型になり、サイズの小さな防護回路や防護部品の動作の詳細な評価には必ずしも適していないという課題がありました。
 
2. 成果の詳細
(1)G-TEMセルの開発
高耐圧化・コンパクト化を実現したG-TEMセルを開発(特許出願済)しました。
 
本装置は、機器の高耐圧化のために用いられることの多いSF6ガスを使用せず、固体絶縁構造を採用することで、取扱い性および設置性を向上させています。
このG-TEMセルを用いることで、MIL-STD-461 RS105*4 試験【HEMP*5・E1試験(2.3/25ns, 50kV/m)】などの高電界パルス評価を実験室レベルで実施することが可能となりました。
G-TEMセル
 
(2)マイクロ波試験システムの開発
周波数2.45GHz、出力2kWの発振器を用いたマイクロ波試験システムを開発しました。
 
これによりマイクロ波試験システムから30cmの距離にて3kV/mの実現が可能となり、RTCA/DO-160*6 などで規定される高い強度の無線周波数試験(HIRF試験)が可能となりました。また、HIRF試験に加えて、連続波(CW)によるエネルギー破壊評価を実験室レベルで行うことが可能となりました。
マイクロ波試験システム
 
(3)広帯域ストリップライン試験システムの開発
IEMIに対する防護部品およびモジュールの周波数依存性を正確に評価するために、10kHz~10GHzの広帯域にわたって数百V/mオーダーの電界を安定的に印加が可能な広帯域ストリップライン試験システムを開発しました。
 
本システムにより、周波数変化に伴う防護特性を定量的に評価することが可能となりました。
広帯域ストリップライン試験システム
 
3. 今後の展開
音羽電機工業とNTT-ATは、今後も相互の協業体制をより強固なものとしてまいります。
 
この成果を重要な契機と捉え、電子機器や社会インフラの信頼性向上に向けたHPEM/EMP/IEMI防護技術の研究開発および評価手法の高度化に貢献するため、新しいデバイスやそれを用いた回路の研究開発を進めるとともに、HPEM/EMP/IEMIに対する評価・受託試験など、新たなサービスの創出に取組んでまいります。
 
■NTTアドバンステクノロジ株式会社 会社概要
NTT-ATは、1976年の創立以来、NTTグループの技術的中核企業として、NTT研究所の技術をはじめとした世界の先端技術を広く取入れ、それらを融合してお客さまの課題を解決し、お客さまにとっての価値を提供し続けています。「アプリケーション」、「マテリアル&ナノテクノロジ」、「ソーシャルプラットフォーム」、「トータルソリューション」の4つの事業領域を柱としてビジネスを展開しています。
名称:NTTアドバンステクノロジ株式会社
所在地:東京都新宿区西新宿三丁目20番2号 東京オペラシティタワー
設立:1976年12月17日
資本金:50億円
代表者:代表取締役社長 伊東 匡
事業内容:アプリケーションビジネス、マテリアル&ナノテクノロジビジネス、ソーシャルプラットフォームビジネス、トータルソリューションビジネス
公式サイト:https://www.ntt-at.co.jp/
 
■音羽電機工業株式会社 会社概要
音羽電機工業株式会社は、1946年の創業以来、雷保護対策製品の開発・普及を通じて、気象変動に強靭な社会、電力、通信、輸送などの実現に向けた質の高いインフラ設備の構築に貢献しています。当社は「雷と共生する」をテーマに、安心できる人々の暮らしを支える活動を行っており、グローバル社会の一員として、SDGsの達成をめざしています。今後も安全・安心な社会づくりに貢献し、持続可能な社会の仕組みづくりに取組んでまいります。
 
名称:音羽電機工業株式会社
所在地:兵庫県尼崎市潮江5丁目6-20
創業:1946年5月11日
資本金:8,190万円
代表者:代表取締役社長 吉田 厚
事業内容:電源用避雷器、信号回線用避雷器、電話回線用避雷器、耐雷トランス等の低圧サージ対策製品、高圧サージ対策製品、その他雷対策関連製品の開発・製造・販売、雷対策コンサルティング、電気工事一式および保守管理、雷情報サービス・受託試験、各種デバイス製品の研究開発・製造・販売
公式サイト:https://www.otowadenki.co.jp/
 
 
<用語説明>
*1 意図的電磁妨害(Intentional Electromagnetic Interference:IEMI)
電子機器やシステムに障害を与えることを目的として、電磁エネルギーを意図的に放射または注入する電磁妨害行為をさす概念である。IEMIは、EMP・高出力マイクロ波(HPM)・広帯域電磁波など、さまざまな電磁手段を含む上位概念であり、社会インフラや重要システムに対する新たな脅威として国際的に認識されている。近年は、防護技術や評価手法の国際規格化も進められている。
*2 SF6ガス
6フッ化硫黄。無色・無臭・不燃性を持ち電気機器の絶縁材や消弧材として利用されている。電力分野では、遮断器や開閉器に使われており、機器の小型化に貢献している。温室効果ガスであり、GWP(地球温暖化係数)はCO2の2万倍以上といわれている。
*3 G-TEMセル
TEMセルとは、Transverse Electro-Magneticセルの略で、同軸ケーブルの一部を膨らませ、内部導体を平板とした作りをしており、通常放射エミッション測定や放射イミュニティ試験に用いられる。G-TEM(Gigahertz TEM)セルは前述のTEMセルの形状をクサビ形にすることにより、形状による周波数限界を改善し、より高い周波数帯域での試験を可能としている。
*4 MIL-STD-461 RS105
米国国防総省が発行する規格。MIL-STD-461は、軍需製品関連のサブシステムや機器のEMC評価に関する要求を定める規格。そのなかでRS105は高高度核爆発による電磁パルスに対する耐性を定めた規格
*5 高高度電磁パルス(High-Altitude Electromagnetic Pulse:HEMP)
高度50~100km付近で核爆発が起きることで生じる電磁パルス。そのパルス生成の過程により、E1(瞬間的な電磁パルス)、E2(自然の雷と似た電磁パルス)、E3(ゆっくりとした変化を持つ電磁パルス)があり、その特徴により影響を受けるものが異なる。
*6 RTCA/DO-160
Environmental Conditions and Test Procedures for Airborne Equipment(航空機搭載機器の環境条件および試験手順)。米国航空無線技術委員会が定める業界標準。物理的環境と電気的/電磁的環境に対する試験を定める。航空機搭載機器の適合試験に用いられる。
<引用文献>
(1) 一政 祐行,「ブラックアウト事態に至る電磁パルス(EMP)脅威の諸相とその展望」,防衛研究所紀要,第18巻,第2号,pp. 27-47,2016
(2) Tominaga T. et al., “Protecting Telecommunication Devices against High Power Electromagnetic Effects: The Work of ITU‐T SG5 Q15”, 2009 International Symposium on Electromagnetic Compatibility, Kyoto, Japan, July 20 - 24, 2009.
(3) 富永哲欣,「高高度電磁パルスと高出力電磁界の国際規格動向」電気学会誌,No.138, vol.10, pp.666 - 672, 2018
(4) 富永哲欣, 「高高度電磁パルスと高出力電磁界」, 電気学会誌, No.138, vol.10, pp.661 - 665, 2018
(5) D. V. Giri, "High-Altitude Electromagnetic Pulse (HEMP) Risetime Evolution of Technology and Standards Exclusively for E1 Environment", IEEE Trans. on Electromagnetic Compatibility, Vol.55, No.3, June 2013
 
 
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