世界30ヵ国で企業のイノベーションと成長を加速させるデジタルエンジニアリングコンサルティングを展開するAKKODiSの日本法人で、現場変革の力とデジタル技術により企業の生産性向上とAIトランスフォーメーションの実現を支援するAKKODiSコンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:川崎 健一郎、「以下、AKKODiS」)は、2月26日、「各分野の専門家が徹底解説!AIデータセンターが拓く次世代インフラ ― エネルギー・電子部品が支える計算力の未来 ―」と題したイベントを開催しました。
生成AIの急速な普及により、AIを支えるインフラとして「データセンター」の重要性が急速に高まっています。膨大な計算力を必要とするAIは、従来のITインフラとは異なる規模の電力や冷却技術を必要とし、産業構造にも大きな変化をもたらしています。こうした背景のもと開催された本セミナーでは、エネルギー、電子部品、データセンター技術の各分野の専門家が登壇。AIデータセンターの急拡大の背景や、電力・電子部品といった基盤技術の進化、さらにAIインフラ時代における日本の戦略について多角的な議論が行われました。
 
セミナーの冒頭では、AKKODiS People Development本部キャリア開発推進部 マスターインストラクターであり、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)の部品技術ロードマップ各委員を務める谷本 琢磨(工学博士)が、AI時代におけるデータセンターの構造的変化について解説しました。
その後、クリーンエネルギー研究所代表の阪口 幸雄氏、太陽誘電株式会社開発研究所 開発企画部 部長の寳藏寺 学氏が講演を行いました。
 
 
■AIデータセンターの拡大とエネルギー戦略の行方
阪口 幸雄氏(クリーンエネルギー研究所代表)
 
阪口氏はシリコンバレーを中心とした最新動向を踏まえ、AIデータセンターの急速な拡大とそれを支える電力・エネルギー戦略の現実について解説しました。
阪口氏がはじめに強調したのは、「データセンターを理解するには、まずクラウドビジネスの構造を理解する必要がある」という点です。現在のクラウド市場はAmazon、Microsoft、Googleといったハイパスケラーが大きなシェアを占めており、AIサービスの多くは、これらの巨大クラウド基盤の上で提供されています。
つまりAIデータセンターの拡張は、単なるITインフラ整備ではなく、クラウド産業そのものの競争構造と密接に関係しているのです。AIを巡る競争は、アルゴリズムや半導体性能だけでなく、データセンターという「物理インフラ」をどれだけ確保できるかという資本集約型の競争に変質しつつあります。
 
また阪口氏は、現在進行しているAIデータセンター投資について、「バブル的側面があることは否定できない」としながらも、過去のITバブルを引き合いに出し、「バブルが崩壊しても、インフラ自体は社会に残り、その後の産業発展を支えてきた」という点を説明しました。光ファイバー網やデータセンターが、インターネット産業の基盤として現在も活用されているように、AIデータセンターもまた、短期的な過熱の有無とは別に、中長期的には不可逆的な社会インフラとして残る可能性が高いという見方です。
 
一方で、AIデータセンター拡張の最大の制約条件として浮かび上がるのが、電力供給の問題です。AIモデルの性能向上は「スケール則」に依存しており、より多くの計算資源を投入するほど性能が向上するため、企業間ではGPUと電力の確保競争が激化しています。その結果、データセンターの電力需要は急速に増加しています。
加えて、AI半導体の進化スピードも極めて速く、データセンターの建設に要する時間のギャップも深刻です。GPUは9か月程度で世代交代が進む一方、データセンターの設計・建設や送電設備の整備には数年を要します。この時間差が、完成時点で想定が陳腐化するという構造的な難しさを生んでいます。
さらに、今後はAIモデルの学習だけでなく、生成AIや業務AIが常時稼働する「推論」の電力消費も拡大していくと見込まれています。将来的にはAIが社会インフラとして定着すれば、電力需要は一時的ではなく、継続的に増加することになります。
こうした状況の中で、再生可能エネルギーや原子力、小型モジュール炉(SMR)など、さまざまな電力供給手段が議論されていますが、短期的に電力制約を解消できる決定打は存在しません。
 阪口氏は「AIインフラの競争は、計算力だけでなく、電力・エネルギーをいかに確保し、設計できるかという戦略の競争でもある」と強調しました。
 
 
■AI時代に拡大する電子部品産業 ― 計算力を支える受動部品の進化
寳藏寺学氏(太陽誘電株式会社 開発研究所 開発企画部 部長、JEITA部品技術ロードマップ 委員)
 
寳藏寺氏は、電子部品産業の視点からAIデータセンターの拡大がもたらす技術動向について解説しました。
JEITA電子部品技術ロードマップの取り組みが紹介され、約10年先を見据えた電子部品技術の方向性のなかで、生成AIが電子部品産業にとって大きな構造転換点に位置づけられていることが示されました。
寳藏寺氏は、生成AIを単なるソフトウェアではなく、電力・計算資源・通信を前提とする社会インフラとして捉える必要があると指摘しました。生成AIは経済競争力や安全保障とも密接に関係しており、その基盤となるデータセンターおよび計算インフラの整備は、国家・産業レベルの課題になりつつあります。
AI競争の本質は、アルゴリズムだけでなくハードウェアの競争でもあります。AIモデルの性能向上は依然としてスケール則に依存しており、大規模な計算資源と安定した電力供給が不可欠です。
その結果、AIデータセンターでは電力消費が急増し、電力を高効率かつ高精度で制御する電子部品の重要性が高まっています。
特に重要なのがコンデンサやインダクタに代表される受動部品です。AIサーバーでは電圧を段階的に変換しながらGPUやCPUへ供給する必要があり、その過程で電圧変動やノイズを抑制する電源制御技術が必要です。この電力制御を担うのがパワーインテグリティを確保する電子部品群です。
消費電力の増大に伴い、電源制御に必要な電子部品の数も増えます。つまり、AIの計算力拡大はそのまま電子部品需要の構造的拡大にも直結しているのです。
 寳藏寺氏は、「日本の電子部品産業にとってAIデータセンターは大きな成長機会である」と指摘しました。これまでスマートフォンや家電といったコンシューマー市場を中心に発展してきた電子部品産業は、今後、AIインフラという新しい市場へと軸足を移しつつあります。
 
■パネルディスカッション ―AIインフラ時代、日本に求められる戦略とは
セミナーの最後には、パネルディスカッションが行われました。
 
電力制約がもたらすAIインフラの限界
まず議論の中心となったのは、AIデータセンターを取り巻く電力制約の問題です。AIの計算需要は今後も拡大が続くと見込まれる一方で、発電能力や送電網には物理的・制度的な限界があります。AIインフラの拡張は、計算資源の確保だけでなく、電力供給と系統全体を含めた長期的な設計が不可欠であることが改めて共有されました。
1MWラック時代と技術要件の高度化
次に議論されたのが、GPUの高性能化に伴う1MWラック時代の到来です。ラックあたりの消費電力が飛躍的に増加することで、電源品質の確保や高効率な冷却技術、さらには電力を安定的に制御する電子部品の進化が、AIインフラの信頼性を左右する重要な要素となります。AIデータセンターは、単なる計算設備ではなく、高度な電力・熱マネジメント技術の集合体へと変化しつつあります。

分野横断型人財育成という課題
 最後に強調されたのが、人財育成の重要性です。AIインフラ時代には、ITだけでなく、電力、電子部品など複数の分野を横断的に理解できる人財が求められます。設計思想と運用の両方を理解し、全体最適の観点で判断できる人財の育成は、日本の競争力を左右する重要な要素になると指摘されました。

こうした背景のもと、AIデータセンターや電源技術、通信インフラといった領域では、個別技術の最適化にとどまらず、エンジニアリングと事業戦略を結びつけた視点での取り組みが重要性を増しています。 AKKODiSでは、エンジニアリングサービスとコンサルティングの両面から、半導体、電子部品、エネルギー、ITインフラなど幅広い分野で技術支援を行っており、こうした分野横断型の知見をもつ人財育成に取り組んでいることが紹介されました。
 
今回のイベントには、会場とオンラインを合わせ約100名が参加し、AIデータセンターに関して興味関心の高さをうかがわせる機会となりました。
会場やオンライン参加者からも多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。