株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年4月13日、自社ウェブサイトに研究解説「我々紅麹業界に何が起こったか」自主回収という名の「強制」
——2024年3月22日〜25日、弊社に何が起きたか—— を公開した。
 

 

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https://kunsei.com/archives/700

「我々紅麹業界に何が起こったか」

 自主回収という名の「強制」

——2024年3月22日〜25日、弊社に何が起きたか——

【結論】

 弊社は2024年3月23日、HACCPに基づく衛生管理の観点から「自主回収はしない」と判断した。その判断は正しかった。しかし翌24日午後、紀文・宝酒造という大手メーカーの自主回収発表が引き金となり、弊社は事実上の「強制」に追い込まれた。そして後に判明したことだが、もし小林製薬があの時点で「製法が違う」と一言伝えてくれていたなら、弊社が自主回収をする理由は何一つなかった。

1 2024年3月22日——希望の中にいた日

 あの金曜日の夕方まで、弊社は希望の中にいた。

 3年前に新築した工場のために、弊社はこの3年間、減価償却費で大赤字が続いていた。しかし2024年3月末の決算では、計画どおり売上が上がり、ようやく赤字解消の目処が立とうとしていた。ほっとしていた。

 その前々日には、地元のテレビ局が弊社の特集放送をしてくれた。長年アタックしていたドラッグストアへの初納品も、翌週に迫っていた。

 弊社にとって、紅麹は「添え物」ではなかった。紅麹が入った商品の売上は全体の約3割を占め、製造では3回に1回は紅麹を使っていた。紅麹は弊社の事業の根幹だった。

 それが3月22日、金曜日の夜18時だった。

2 午後6時、1枚のFAX——記者会見の3分前に

 小林製薬からFAXが届いた。たった1枚だった。

 後で知ったことだが、あれは小林製薬が記者会見を開く3分前のことだったらしい。会見の3分前に、取引先にFAX1枚を送りつける。金曜日の夜18時に。これほど取引先を軽視した対応があるだろうか。

 たまたまその夜、弊社の代表が会社に立ち寄っていた。FAXに気づいたのは夜9時頃だった。

 担当者に電話をかけた。「回収してほしい。ロットは違うけれど」——それだけだった。「製法が違う」とは、一言も言わなかった。

(※後に判明したことだが、弊社が仕入れていた紅麹原料「コレステヘルプ」向けとは、製造工程が根本的に異なるものだった。もしあの夜、「製法が違います」という一言があったなら、弊社が自主回収を検討する理由は何もなかった。)

3 3月23日(土)——「自主回収はしない」

 翌23日、弊社では社内で対応を協議した。同じように紅麹を食品に使用している企業にも問い合わせた。

 弊社の結論は明快だった——「自主回収はしない」。

 理由はHACCPに基づく衛生管理だ。弊社の製品は適切な衛生管理のもとで製造されており、問題のある原料ロットは使用していない。回収する科学的・衛生的根拠がない。

 そもそも、もし小林製薬の紅麹原料に本当に問題があったならば、弊社こそが一番最初にそれを気づき、指摘していたはずだ。売上の3割・製造3回に1回という頻度で紅麹を使い続けてきた弊社が、何の異常も感じず、製品への苦情も一件もなかった。それが現実だった。

 その判断のもと、予定していたドラッグストアへの初納品も、予定どおり実施した。

 ただ、取引先1店舗から「自主回収はしないのか」との問い合わせがあった。テレビや新聞での紅麹事件の報道が日に日に増していた。万一に備えて、紅麹の代替原料をネットで探し始めた——そういう段階だった。

4 3月24日(日)午前——判断を維持しようとしていた

 24日の朝、改めて社内で協議し、「自主回収はしない」という前日の判断を確認した。

 問題は取引先への説明だった。「なぜ回収しないのか」という問い合わせに対して、どう説明するか——そこを考えていた。

5 3月24日(日)午後——引き金が引かれた

 午後、ニュースが飛び込んできた。

 紀文食品と宝酒造——誰もが知る大手食品メーカー2社が、相次いで自主回収を発表したのだ。

 これで状況が変わった。大手2社が動いたことで、取引先への「なぜ回収しないのか」という問いに、もはや説明できる立場ではなくなった。

 弊社は自主回収の方針に転じることを決断した。科学的根拠によってではなく、社会的圧力によって。それが実態だった。

6 3月25日(月)——法律に従い、粛々と

 翌25日、弊社は法律のとおりに動いた。

 朝一番で地元の備中保健所に連絡し、「自主回収を行う予定。取引先全社に連絡を済ませた後、公表する」と報告した。取引銀行にも状況を説明した。

 そして、紅麹原料の新たな供給先として、マキ屋フーズに問い合わせた。「供給できる」——その返事を得た。

 このマキ屋フーズとの出会いが、後に弊社が唯一と言ってもいい再発売を実現できた一因となる。最悪の3日間の中に、一つだけ光があった。

 そして翌26日以降、弊社に何が降りかかるかは、まだ誰も知らなかった。

【次回予告】㉙ 2024年3月25日〜28日——企業名公表まで

 

▼ 【薫製倶楽部プレスリリース・シリーズ】

▶ ① 小林製薬紅麹問題の本質(2024/4/1)

▶ ② 紅麹食品製造業者225社の公表について(2024/4/5)

▶ ③ プベルル酸同定の科学的検証(2024/5/15)

▶ ④ 食薬区分の構造的問題(2024/6/1)

▶ ⑤ 機能性表示食品制度の問題点(2024/7/1)

▶ ⑥ 行政文書開示請求の結果について(2024/8/1)

▶ ⑦ 収去記録の不存在について(2024/9/1)

▶ ⑧ NIHS文書の欠如と科学的根拠の問題(2024/10/1)

▶ ⑨ 行政不服審査請求の提出(2024/11/1)

▶ ⑩ 民事訴訟の提起について(2024/12/1)

▶ ⑪ 学術論文への懸念表明(2025/1/15)

▶ ⑫ 国際的な科学コミュニティへの発信(2025/2/1)

▶ ⑬ 研究倫理委員会への申し立て(2025/3/1)

▶ ⑭ 刑事告発の準備(2025/11/1)

▶ ⑮ 刑事告発状の提出——「収去なき断定」は刑法違反である(2026/3/25)

▶ ⑯ 「収去記録の特定に60日」——存在しないから探せない(2026/4/1)

▶ ⑰ 大阪市保健所は最大の被害者である(2026/4/2)

▶ ⑱ 「収去なき断定」の全体像(2026/4/3)

▶ ⑲ 小林製薬紅麹コレステヘルプa(G970)——医薬品文献を根拠とした機能性表示食品、消費者庁に行政不服審査請求(2026/4/3)

▶ ⑳ 厚生労働省が公文書で「判断放棄」を確認——米国が2001年に解決した問題を日本は25年後も回避(2026/4/3)

▶ ㉑ プベルル酸と誘導された経緯(調査報告①)「不完全同定」での断定報告(2026/4/6)

▶ ㉒ プベルル酸と誘導された経緯(調査報告②)——有識者会議が見逃した理由(2026/4/7)

▶ ㉓ 天然物の同定に時間がかかることは科学の常識である——未知物質の存在を前提としない行政判断の問題点(2026/4/8)

▶ ㉔ カビの世界と利益相反——吉成文献における研究の独立性と客観性への重大な疑問(2026/4/9)

▶ ㉕ 「我々紅麹業界に何が起こったか」——紅麹が誤解される「構造的理由」(2026/4/10)

▶ ㉖ 「我々紅麹業界に何が起こったか」——誤解を解くのに2年かかった戦い、そして原田さん(2026/4/10)

▶ ㉗ 「我々紅麹業界に何が起こったか」——岡山県と紅麹文化、そして崩壊(2026/4/10)

▶ ㉘ 「我々紅麹業界に何が起こったか」——自主回収という名の「強制」(2026/4/13)