株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年4月10日、自社ウェブサイトに研究解説「我々紅麹業界に何が起こったか」——岡山県と紅麹文化、そして崩壊——
~ なぜ私は紅麹を使うのか、そして今、文化が消えようとしている ~」を公開した。
 

 

▼対象記事URL

 

https://kunsei.com/archives/691

「我々紅麹業界に何が起こったか」

——岡山県と紅麹文化、そして崩壊——

~ なぜ私は紅麹を使うのか、そして今、文化が消えようとしている ~

【結論】

 岡山県は日本有数の紅麹食文化の産地であり、2000年代初頭には官民協業で40品目を超える紅麹食品が開発された。2024年の実名公表225社のうち15社が岡山県企業であったことは偶然ではない。しかし今、そのほとんどが再発売できていない。日本の紅麹文化が崩壊しつつある。それでも、守り続ける。

 

1 紅麹は「食文化」である

 

 紅麹は中国・台湾・沖縄に数百年の食の歴史を持つ。老酒・紅糟・豆腐ようなど、日常の食卓に根ざした発酵文化の一部である。

 

 そして岡山県もまた、紅麹食文化の地である。

 

 2000年頃、岡山県工業技術センターと地元の食品企業が官民協業で研究を進め、紅麹を食品に活用するプロジェクトが始まった。その成果として、当時は40品目を超える紅麹使用食品が開発・販売されていたといわれる。味噌・酢・漬物・加工肉——地域の食品産業に紅麹が根付いた時代があった。

 

 弊社・株式会社薫製倶楽部が倉敷ソーセージに紅麹を使用するようになったのも、この流れの中にある。

 

2 なぜソーセージに紅麹を入れるのか

 

 ほとんどの人がご存知の「塩麹」は、黄麹(Aspergillus属)を使って作る。肉に塩麹を漬けると柔らかくなり、旨味が増す——これはよく知られた料理の知恵だ。

 

 弊社が選んだのは、たまたま赤い麹だった。

 

 紅麹(Monascus属)も同じく麹菌の一種であり、肉を旨くする作用は黄麹と共通している。ただし後味とコクが異なる。黄麹に比べて、紅麹由来のコクは深みがあり、余韻が長い。微妙な差ではあるが、確かに違う。

 

 その結果として生まれた倉敷ソーセージほそびきは、他にない味として評判を得てきた。紅麹を着色目的で使っているのではない。味のために使っている。

 

 岡山県の他の紅麹使用企業の多くも同様である。味噌・酢・漬物に紅麹を使っている企業がほとんどであり、着色目的ではなく、発酵・風味・食文化としての使用だ。

 

3 225社公表——岡山県だけで15社

 

 2024年3月、厚生労働省は紅麹原料使用企業として52社+173社、計225社を実名公表した。

 

 そのうち岡山県の企業は15社であった。都道府県別で見れば、これは多い部類に入る。

 

 繰り返すが、弊社が使用していた品番5P-Dについては37ロット全てがプベルル酸陰性であった。それでも実名が公表された。岡山県の他の14社も同様に、多くは食文化としての紅麹使用企業であり、健康被害との因果関係は存在しない。

 

 この公表の根拠となった「プベルル酸が原因物質である」という断定が、収去(食品衛生法第28条に基づく行政独自のサンプル採取)を一切行わないまま行われたことは、大阪市保健所長・中山浩二氏の令和8年3月30日付け回答書(大大保8639号)において被告発人自身が署名入りで認めている。

 

4 今、紅麹文化が崩壊している

 

 2024年3月の実名公表から2年が経とうとしている。

 

 225社のうち、紅麹製品を再発売できている企業は、私が知る限り全国で10社にも満たない。

 

 理由は複合的だ。

 

 第一に、「紅麹」という言葉に対する社会的評判が著しく悪化した。消費者の信頼を失った製品を再び市場に出すことは、中小食品メーカーにとって大きなリスクを伴う。

 

 第二に、弊社を含む多くの企業が使用していた紅麹原料の供給元であった小林製薬が、紅麹事業から撤退した。代替供給者を探すことは容易ではなく、製造継続の障壁になっている。

 

 第三に、行政の判断が揺れている。プベルル酸の断定根拠が存在しないにもかかわらず、制度的な「名誉回復」のプロセスが存在しない。企業は再発売の法的リスクを判断できないまま、時間だけが過ぎている。

 

 岡山県の紅麹使用企業15社のうち、現在も紅麹製品を販売しているのはごく少数だ。2000年代に40品目を超えた岡山県の紅麹食品文化は、根拠なき断定によって静かに消えつつある。

 

 これは岡山県だけの問題ではない。日本の紅麹食文化全体が崩壊しつつある。

 

5 それでも、守り続ける

 

 弊社は奇跡的に再発売を実現した。現在の紅麹原料の仕入れ先であるマキ屋フーズをはじめとする数少ない仲間たちがいるからだ。

 

 しかし現実は厳しい。倉敷ソーセージほそびきの売上は、公表前の半分強にとどまっている。

 

 それでも続けるのは、岡山県の紅麹食文化を守りたいからだ。数百年の歴史を持つ発酵食文化が、根拠なき行政の断定によって消えることを、受け入れることができないからだ。

 

 本訴訟・本告発は、損害賠償の請求であると同時に、紅麹食文化の名誉回復の闘いである。

 

【次回予告】2024年3月、実名公表の日——あの日、弊社に何が起きたか。

▼ 【薫製倶楽部プレスリリース・シリーズ】

▶ ① 小林製薬紅麹問題の本質(2024/4/1)

▶ ② 紅麹食品製造業者225社の公表について(2024/4/5)

▶ ③ プベルル酸同定の科学的検証(2024/5/15)

▶ ④ 食薬区分の構造的問題(2024/6/1)

▶ ⑤ 機能性表示食品制度の問題点(2024/7/1)

▶ ⑥ 行政文書開示請求の結果について(2024/8/1)

▶ ⑦ 収去記録の不存在について(2024/9/1)

▶ ⑧ NIHS文書の欠如と科学的根拠の問題(2024/10/1)

▶ ⑨ 行政不服審査請求の提出(2024/11/1)

▶ ⑩ 民事訴訟の提起について(2024/12/1)

▶ ⑪ 学術論文への懸念表明(2025/1/15)

▶ ⑫ 国際的な科学コミュニティへの発信(2025/2/1)

▶ ⑬ 研究倫理委員会への申し立て(2025/3/1)

▶ ⑭ 刑事告発の準備(2025/11/1)

▶ ⑮ 刑事告発状の提出——「収去なき断定」は刑法違反である(2026/3/25)

▶ ⑯ 「収去記録の特定に60日」——存在しないから探せない(2026/4/1)

▶ ⑰ 大阪市保健所は最大の被害者である(2026/4/2)

▶ ⑱ 「収去なき断定」の全体像(2026/4/3)

▶ ⑲ 小林製薬紅麹コレステヘルプa(G970)——医薬品文献を根拠とした機能性表示食品、消費者庁に行政不服審査請求(2026/4/3)

▶ ⑳ 厚生労働省が公文書で「判断放棄」を確認——米国が2001年に解決した問題を日本は25年後も回避(2026/4/3)

▶ ㉑ プベルル酸と誘導された経緯(調査報告①)「不完全同定」での断定報告(2026/4/6)

▶ ㉒ プベルル酸と誘導された経緯(調査報告②)——有識者会議が見逃した理由(2026/4/7)

▶ ㉓ 天然物の同定に時間がかかることは科学の常識である——未知物質の存在を前提としない行政判断の問題点(2026/4/8)

▶ ㉔ カビの世界と利益相反——吉成文献における研究の独立性と客観性への重大な疑問(2026/4/9)

▶ ㉕ 「我々紅麹業界に何が起こったか」——紅麹が誤解される「構造的理由」(2026/4/10)

▶ ㉖ 「我々紅麹業界に何が起こったか」——誤解を解くのに2年かかった戦い、そして原田さん(2026/4/10)

▶ ㉗ 「我々紅麹業界に何が起こったか」———岡山県と紅麹文化、そして崩壊(2026/4/10)