株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年4月10日、自社ウェブサイトに研究解説「「我々紅麹業界に何が起こったか」——紅麹が誤解される「構造的理由」——
~ 食品・食品添加物・医薬品という三つの顔が生む混乱 ~」を公開した。
 

 

▼対象記事URL

 

https://kunsei.com/archives/683

令和8年4月10日 株式会社薫製倶楽部

 

「我々紅麹業界に何が起こったか」

——紅麹が誤解される「構造的理由」——

~ 食品・食品添加物・医薬品という三つの顔が生む混乱 ~

【結論】

 紅麹は「食品・食品添加物・医薬品成分」という三つの異なる文脈で使われる唯一の食材である。この三重性が、食の専門家でさえ繰り返し誤解させてきた構造的原因であり、2024年の紅麹事件における225社冤罪の文化的背景でもある。

 

1 2024年の紅麹報道に違和感を覚えた方へ

 

 2024年3月、小林製薬の紅麹配合健康食品による健康被害が報道されて以降、多くのマスコミが「紅麹(着色料)を使った製品」と報道した。テレビで「紅麹とは赤い着色料」と説明するコメンテーターを見た方も多いだろう。

 

 しかしそれは根本的な誤解である。

 

 弊社・株式会社薫製倶楽部は岡山県早島町で食肉製品を製造する食品メーカーである。代表取締役は薬剤師でもある。2012年頃から紅麹を食品素材として使用し、倉敷ソーセージを製造してきた。

 

 今回の事件で弊社も225社実名公表の対象となった。しかし弊社が使用していた品番5P-Dについては37ロットすべてがプベルル酸陰性であった。それでも名前が公表された。

 

 なぜこのような冤罪が起きたのか。その根本には「紅麹とは何か」という基礎的理解の欠如がある。

 

2 紅麹が持つ「三つの顔」

 

 日本の食品法規において、「紅麹」は以下の三つの全く異なる文脈で登場する。

 

 【第一の顔:食品(伝統的発酵食品)】

 Monascus属カビを米に繁殖させた発酵食品。数千年の歴史を持つ東アジアの食文化の一部であり、豆腐よう・老酒・紅糟肉など伝統食材として食卓に根ざしている。弊社が製造する倉敷ソーセージはこの文脈に属する。

 

 【第二の顔:食品添加物(紅麹色素)】

 Monascus属カビが産生する赤色色素を抽出・精製したもの。漬物・ハム・菓子などに着色目的で使用される。食品表示基準Q&Aおよび既存添加物名簿において、食品添加物ベニコウジ色素の簡略名として「紅麹」が現在も公式に認められており、食品原料としての紅麹と表示上の区別がつかない状態が続いている。

 

 【第三の顔:医薬品成分(モナコリンK)】

 一部のMonascus属カビが産生するモナコリンKは、HMG-CoA還元酵素阻害作用を持つ。これはFDAが1987年に承認したスタチン系医薬品「ロバスタチン」と同一物質である。小林製薬が販売していた「紅麹コレステヘルプ」はこの文脈に属する製品である。

 

3 「略称」が生んだ25年間の混乱

 

 食品表示基準Q&Aおよび既存添加物名簿において、食品添加物ベニコウジ色素の簡略名として「紅麹」が公式に認められている。これは過去の規定ではなく、2024年の紅麹事件後も制度上は変更されていない現行ルールである。

 

 このルールが、長年にわたって「紅麹=食品添加物(着色料)」という誤解の温床になってきた。

 

 2024年の紅麹事件でも、多くのマスコミがこの制度的混乱をそのまま報道した。その結果、伝統的な食品用紅麹を使用していた弊社のような製造業者が、小林製薬の医薬品成分含有サプリメントと同一視され、実名公表という冤罪を受けることになった。

 

4 誤解はマスコミだけではない

 

 この誤解は一般の方やマスコミだけに限らない。行政担当者・食品産業の専門家・大学の研究者でさえ、紅麹の三つの顔を混同するケースが現実に起きている。

 

 実は弊社は2012年にも同様の誤解に基づく攻撃を受け、解決までに2年を要した経緯がある。その詳細は次回でお伝えする。

 

 醤油や味噌と異なり、紅麹を日常的に扱う食品製造業者は国内で極めて少ない。この希少性が、行政・専門家・マスコミの無理解を温存させてきた制度的問題でもある。

 

5 今回の事件が問いかけること

 

 厚生労働省は収去(食品衛生法第28条に基づく行政独自のサンプル採取)を一切実施しないまま、プベルル酸を原因物質と断定し225社を実名公表した。この事実は、大阪市保健所長・中山浩二氏の令和8年3月30日付け回答書(大大保8639号)において被告発人自身が署名入りで認めている。

 

 なぜ行政はこれほど容易に断定できたのか。

 

 答えの一つは、「紅麹」という言葉の三重性に対する理解の欠如にある。食品用紅麹と医薬品成分含有サプリメントを区別する基礎的知識がなければ、小林製薬の製品に起因する問題を紅麹全体の問題として断定することへの抵抗感が生まれない。

 

 紅麹文化の名誉回復は、この基礎的誤解を正すことから始まる。

 

【次回予告】:2012年、「食の専門家」が「倉敷ソーセージは食品添加物使用で無添加表示違反」と主張した事件。解決までの2年間と、2度にわたって弊社を救った備中保健所・原田さんの話。

▼ 【薫製倶楽部プレスリリース・シリーズ】

▶ ① 小林製薬紅麹問題の本質(2024/4/1)

▶ ② 紅麹食品製造業者225社の公表について(2024/4/5)

▶ ③ プベルル酸同定の科学的検証(2024/5/15)

▶ ④ 食薬区分の構造的問題(2024/6/1)

▶ ⑤ 機能性表示食品制度の問題点(2024/7/1)

▶ ⑥ 行政文書開示請求の結果について(2024/8/1)

▶ ⑦ 収去記録の不存在について(2024/9/1)

▶ ⑧ NIHS文書の欠如と科学的根拠の問題(2024/10/1)

▶ ⑨ 行政不服審査請求の提出(2024/11/1)

▶ ⑩ 民事訴訟の提起について(2024/12/1)

▶ ⑪ 学術論文への懸念表明(2025/1/15)

▶ ⑫ 国際的な科学コミュニティへの発信(2025/2/1)

▶ ⑬ 研究倫理委員会への申し立て(2025/3/1)

▶ ⑭ 刑事告発の準備(2025/11/1)

▶ ⑮ 刑事告発状の提出——「収去なき断定」は刑法違反である(2026/3/25)

▶ ⑯ 「収去記録の特定に60日」——存在しないから探せない(2026/4/1)

▶ ⑰ 大阪市保健所は最大の被害者である(2026/4/2)

▶ ⑱ 「収去なき断定」の全体像(2026/4/3)

▶ ⑲ 小林製薬紅麹コレステヘルプa(G970)——医薬品文献を根拠とした機能性表示食品、消費者庁に行政不服審査請求(2026/4/3)

▶ ⑳ 厚生労働省が公文書で「判断放棄」を確認——米国が2001年に解決した問題を日本は25年後も回避(2026/4/3)

▶ ㉑ プベルル酸と誘導された経緯(調査報告①)「不完全同定」での断定報告(2026/4/6)

▶ ㉒ プベルル酸と誘導された経緯(調査報告②)——有識者会議が見逃した理由(2026/4/7)

▶ ㉓ 天然物の同定に時間がかかることは科学の常識である——未知物質の存在を前提としない行政判断の問題点(2026/4/8)

▶ ㉔ カビの世界と利益相反——吉成文献における研究の独立性と客観性への重大な疑問(2026/4/9)

▶ ㉕ 「我々紅麹業界に何が起こったか」①-a——紅麹が誤解される「構造的理由」(2026/4/10)

▶ ㉖ 「我々紅麹業界に何が起こったか」①-b——誤解を解くのに2年かかった戦い、そして原田さん(2026/4/11)