スーダン・北ダルフール州の避難民キャンプを歩く女性=2026年2月14日 (C) Cindy Gonzalez/MSF
2023年4月15日にスーダンで内戦が始まってから、まもなく3年。避難を余儀なくされた人は1400万人に上る。対立するスーダン軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」、そしてそれらの支援勢力は、医療や食料、安全など、人びとの命綱とも言える仕組みを全面的に破壊している。 
 
国境なき医師団(MSF)は、市民への無差別な暴力が罰せられないまま広がり、医療崩壊の中で人道援助が人びとへ届かなくなっていると指摘。すべての紛争当事者と国際社会に、民間人の保護、医療施設の尊重、残虐行為に対する説明責任、そして継続的な人道アクセス確保が徹底されるよう訴える。
戦闘だけではない 予防できる病気で奪われる命
2025年の1年間だけでMSFは、銃撃などの暴力を受けた7700人以上を治療し、25万件を超える緊急診療を行った。性暴力の診療は4200件を超え、5歳未満の急性栄養失調児1万5000人以上が入院治療を受けた。これらの数字は、戦闘による直接的な死傷だけでなく、絶え間ない暴力が人びとの命に深刻な影響を与えていることを示している。 
 
この3年の間、定期予防接種は中断され、感染症の監視体制も崩壊。感染症の拡大が加速する一方で、流行の早期発見は著しく遅れている。国連機関などの援助資金が削減されたことで、すでに極限状態にある状況はさらに悪化した。そのため、はしかやE型肝炎、コレラといった予防可能な病気で多くの人が命を落としている。
北ダルフール州の病院で子どもの診療にあたる医師ら=2026年3月8日 (C) Cindy Gonzalez/MSF
医療が攻撃の対象に
さらに、病院は略奪や爆撃、占拠の被害を受けてきた。医療スタッフが脅迫を受けたり、拘束されたりするケースも後を絶たない。救急車が負傷者のもとへ向かうことすら困難だ。

2023年4月以降、医療施設に対する攻撃はスーダン全土で213件に上り、2000人以上が死亡し、720人が負傷した。世界保健機関(WHO)によると、2025年には医療への攻撃による世界全体の死亡者の82%をスーダンが占めている。この間、MSFのスタッフや関連施設、医療物資への暴力事件は100件に上った。

直近では、4月2日にRSFによるとされるアル・ジャバライン病院への攻撃で、MSFの元スタッフを含む10人が死亡した。そのわずか2週間前の3月20日には、スーダン軍によるとされる東ダルフール州エル・ダエイン病院への攻撃で、子ども15人を含む70人が死亡した。

またスーダン当局は、MSFなどの援助団体が特定の地域へ立ち入ることを拒んだり、活動を阻止するなどして、人道援助活動を妨げている。
新たに広がるドローン攻撃
ここ数か月、紛争に憂慮すべき変化が起きている。RSFとSAFの双方によるドローンの広範な使用だ。これにより、物流インフラや民間人の居住地を標的とする例が増えている。 
 
2月以降、MSFは隣国チャド東部とダルフール各地で、市街地を襲ったドローン攻撃により負傷した約400人を治療した。国連によれば、1月1日から3月15日までの間に、これらの攻撃で500人以上の市民が殺害されている。攻撃の対象は軍事目標に限定されておらず、明らかに国際人道法に反している。
ドローン攻撃を受けた白ナイル州の病院の手術室=2026年4月7日 (C) MSF
問われる政治の責任
スーダンの危機は人道的な大惨事であるだけでなく、政治の失敗でもある。世界最大の人道危機となってから3年が経過したが、各国政府や国際機関の対応は最低限の必要すら満たしていない。RSFが北ダルフール州エル・ファシールで非アラブ系住民へ行っている行為をはじめ、残虐行為が行われていることは何度も警告されてきた。しかしそれに対して意味のある行動は取られていない。
 
今この瞬間も、子どもやその母親を含む地域の人びとが、大量殺害や飢餓、拷問、レイプといった無差別な暴力により、命を落とし続けている。国際的な人道システムが本来提供すべき基本的サービスが欠如していることも、人びとの死につながっている。 
 
MSFのスーダン活動責任者であるアマンド・バゼロールはこう訴える。
 
「民間人の保護、医療施設の尊重、残虐行為に対する説明責任、そして継続的な人道アクセスは、今までになく緊急で譲れない課題です」
 
紛争当事者とその支援勢力は、民間人を保護するため、直ちに具体的な行動を取らなければならない。そして、住民に甚大な苦しみを与え続けている行為に対し、責任を問われる必要がある。 
 
国際社会で大きな影響力を持つ国や組織は、紛争当事者に資金や武器を提供したり、政治的に支援したりしている者に対して、直ちに実効性のある外交的圧力をかけなければならない。国際社会はこれまで、大量虐殺などの深刻な犯罪を止めることに失敗してきたが、これ以上の犯罪を防ぐための機会はまだ残されている。

行動を起こさない姿勢と沈黙が、スーダンの何百万人もの人びとの苦しみを長引かせている。
自宅が砲撃を受け両親と兄弟を亡くした13歳の少女。15歳の姉と避難民キャンプで暮らしている=2026年2月14日 (C) Cindy Gonzalez/MSF