日本医療政策機構(HGPI)では、医療政策のオピニオンリーダーやイノベーターを招き、さまざまな医療政策のテーマに関するセミナーを開催しています。
今回のHGPIセミナーでは、韓国の家庭医かつ肥満症の当事者として国内外における政策アドボカシーに取り組む、ヘルシー・トゥギャザー・ソーシャル・コーポレーティブ代表のキム ユヒュン氏をお招きし、 韓国における肥満症の疫学的動向と政策の変遷、肥満症をめぐるスティグマの問題、そして医師と当事者という二つの立場における実体験(Lived Experience)が政策立案に果たす役割についてご講演いただきました。キム氏は韓国肥満学会(KSSO: Korean Society for the Study of Obesity)理事でもあり、2018年から続く自助グループの活動を経て2022年にヘルシー・トゥギャザー・ソーシャル・コーポレーティブを設立しました。
ポイント
韓国における肥満の有病割合は38.4%に達し、とりわけ20~30代の高度肥満症(BMI≥35)は2012年から2021年の間に約3倍にまで拡大しており、若年層の肥満症を個人の問題ではなく社会的課題として捉え、対処する必要性が高まっている。
減量後の体重の再増加は、満腹感を持続させ食欲を抑えるホルモンであるGLP-1低下による結果であり、個人の意志や生活習慣に起因した問題ではない。こうした生理学的メカニズムに対して、薬物療法は食への強迫観念(food noise)を低減することで生活習慣改善が継続可能になる。
肥満症患者・当事者に対するスティグマは受診を遅らせるなど悪影響を招き、とりわけ医療者によるスティグマは診療の質の低下につながる。
肥満の予防と肥満症の治療を明確に分離する二本立てのアプローチへの転換が急務である。同時に、当事者の実体験を政策立案・学術研究・専門職教育のプロセスに組み込むことが、持続可能な肥満症対策の鍵となる。
 
詳細を見る
【開催概要】
■日時:2026年3月3日(火) 17:00-18:15
■形式:オンライン(Zoomウェビナー)
■言語:日本語、英語(同時通訳あり)
■参加費:無料
■主催:日本医療政策機構(HGPI)
【登壇者プロフィール】
キム ユヒュン(ヘルシー・トゥギャザー・ソーシャル・コーポレーティブ(肥満症の当事者団体)代表/家庭医/韓国肥満学会理事)
韓国における非営利の肥満症の当事者団体であるヘルシー・トゥギャザー・ソーシャル・コーポレーティブ創設者および代表として、肥満症に関するアドボカシー活動を行う患者リーダー。幼少期から肥満・肥満症とともに生きてきた経験を持ち、医学的専門知識と共感力に基づいて、肥満・肥満症とともに生きる人々の心身をサポートするという使命を追求している。 オンライン・オフラインでのピアグループの組成や、教育コンテンツの制作、医療従事者向けに肥満症へのスティグマに対する気づきを啓発する専門的なトレーニングを提供している他、肥満症治療の改善を目指した政策提言活動にも取り組む。ソウル市のチャウム健診センターサムソン支店で家庭医としての診療を続けながら、すべての人が尊厳を持ち、支え合い、健やかに生きられる社会の実現を目指す。
■日本医療政策機構とは: https://hgpi.org/
日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)は、2004年に設立された非営利、独立、超党派の民間の医療政策シンクタンクです。市民主体の医療政策を実現すべく、独立したシンクタンクとして、幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供してきました。特定の政党、団体の立場にとらわれず、独立性を堅持し、フェアで健やかな社会を実現するために、将来を見据えた幅広い観点から、新しいアイデアや価値観を提供しています。 設立以来、女性の健康、がん対策、認知症、薬剤耐性、再生医療、グローバルヘルスなど、当時は十分に議論されていなかったテーマをいち早く政策課題として提示し、法制度や国家戦略の形成、国際的な政策議論に反映されるなど、具体的な政策の前進に寄与してきました。こうした継続的な取り組みは、国内外の政策関係者や国際機関からも一定の評価を受けており、日本発の医療政策シンクタンクとして国際的な対話の場に参加し続けています。
日本国内はもとより、世界に向けても有効な医療政策の選択肢を提示し、地球規模の健康・医療課題を解決すべく、これからも皆様とともに活動を続けていきます。
 
詳細を見る

韓国における肥満の有病割合は38.4%に達し、とりわけ20~30代の高度肥満症(BMI≥35)は2012年から2021年の間に約3倍にまで拡大しており、若年層の肥満症を個人の問題ではなく社会的課題として捉え、対処する必要性が高まっている。

減量後の体重の再増加は、満腹感を持続させ食欲を抑えるホルモンであるGLP-1低下による結果であり、個人の意志や生活習慣に起因した問題ではない。こうした生理学的メカニズムに対して、薬物療法は食への強迫観念(food noise)を低減することで生活習慣改善が継続可能になる。

肥満症患者・当事者に対するスティグマは受診を遅らせるなど悪影響を招き、とりわけ医療者によるスティグマは診療の質の低下につながる。

肥満の予防と肥満症の治療を明確に分離する二本立てのアプローチへの転換が急務である。同時に、当事者の実体験を政策立案・学術研究・専門職教育のプロセスに組み込むことが、持続可能な肥満症対策の鍵となる。