「積極的に支援するメンバーが多い」と感じる管理職ほど、やりがいを感じている
 企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山崎 淳 以下、当社)は、企業で働く管理職を対象に、「『管理職のメンバーに対するイメージ』とマネジメントの状態に関する調査」を実施しました。本研究では、管理職の適応感ややりがい、メンバーに対するイメージに着目し、それらの関係性を分析しました。
 分析の結果、管理職は成長感を感じている一方で、仕事の切迫感や疲弊感も同時に抱えており、管理職の状態はポジティブ・ネガティブ双方の要素の中でバランスが保たれている可能性があることが分かりました。
 また、管理職が抱くメンバーに対するイメージは全体として肯定的な傾向が強く、「『信頼できる』チーム・プレイヤーが多い」といった認識を持つ管理職が多いことが確認されています。一方で、主体的に組織を支えるフォロワーシップ行動をとるメンバーについては、必ずしも「多い」と認識しているわけではなく、評価は分かれる傾向が見られました。
 さらに分析を進めると、管理職のメンバーに対する認識は、管理職自身のマネジメントに対するやりがいや肯定的感情と関連していることが明らかになりました。特に、「積極的に支援するメンバーが多い」と認識している管理職ほど、メンバーとの関係構築や育成支援といったマネジメント行動に対してやりがいを感じている傾向が見られています。
 また、「積極的支援」を行うメンバーが多いと認識している場合には、建設的な批判行動をとるメンバーが多いという認識が管理職の成果実感につながる可能性も示唆されました。一方で、「積極的支援」を行うメンバーが少ないと認識されている場合には、建設的な批判であっても、そのような行動を取るメンバーが多いという認識が管理職のやりがいや肯定的感情を低下させる傾向が見られました。
これらの結果から、管理職のやりがいやマネジメントへの前向きな感情は、メンバーの行動そのものだけでなく、管理職がメンバーをどのように認識しているかによっても左右される可能性が示されています。企業が管理職のマネジメントを支援する上では、管理職個人の能力開発だけでなく、メンバー側のフォロワーシップ行動の促進や、管理職のメンバーに対する肯定的な認知を高めるチーム内での相互作用の質を高める取り組みも重要であると考えられます。
 本研究の結果が、今後の管理職支援やチームマネジメントのあり方を検討する上での基礎的な知見となれば幸いです。
【エグゼクティブサマリ】
管理職は、仕事の意義や役割を感じながらも、同時に切迫感や疲労感を抱えている(図表1、2)
管理職は、メンバー育成や目標設定などの基本的なマネジメント行動にやりがいを感じている一方、組織外部との連携などの革新につながる行動に対するやりがいに課題がある(図表3、4)
管理職は、メンバーを「信頼できる」「チーム・プレイヤー」など肯定的な存在と捉える傾向が強い(図表5)
管理職は、フォロワーシップを取るメンバーが「多い」とはとらえておらず、特に上司に対して建設的な批判を行うメンバーは相対的に少ないと認知 (図表6、7)
「積極的支援」を行うメンバーが多いと認識している管理職ほど、マネジメント行動や成果・適応感が高い傾向(図表7)
 
1.調査担当のコメント
 
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
 技術開発統括部 研究本部 研究主幹 
入江 崇介(いりえ しゅうすけ) 
 
 本調査では、管理職がメンバーをどのように認識しているかが、管理職自身のマネジメント行動や心理状態にどのように関連しているかについて調べました。
 
 その結果、管理職が「積極的に支援するメンバーが多い」と認識しているほど、メンバーへの育成支援、関係構築、権限委譲といったマネジメント行動に対するやりがいが高まる傾向が確認され、また、管理職としての成果実感やワーク・エンゲージメント、管理職としての適応感といったポジティブな心理状態についても、積極的支援を行うメンバーが多いと認識しているほど高まる傾向が見られました。 さらに、配慮的行動をとるメンバーを多いと感じることについても、管理職の対処感やエンゲージメント、適応感と正の関連が確認されています。一方で、前向きな批判的行動をとるメンバーが多いと感じることについては、その影響は一様ではなく、積極的支援を行うメンバーが多いと認識されている場合には、管理職の成果実感にポジティブな影響を与える傾向が見られました。しかし、積極的支援をとるメンバーが少ないと認識されている状況では、批判的行動をとるメンバーが多いと感じるほど、管理職のやりがいや対処感にネガティブな影響を与える傾向があります。
 これらの結果から、管理職の状態は、メンバーの行動そのものだけでなく、それをどのように認識しているかによっても左右される可能性が考えらえます。特に、メンバーを支援的な存在として捉える認識は、管理職のマネジメント行動や成果実感、適応感の高さと関連しており、管理職がポジティブな循環の中で役割を果たすうえで重要な要素である可能性があります。 近年、管理職の負担増加や担い手不足が指摘される中で、管理職個人の能力や努力だけに依存するのではなく、管理職とメンバーの相互作用に着目した組織づくりが求められています。本調査の結果は、メンバーの支援的行動や職場の関係性が、管理職のセルフコントロールやマネジメント行動を支える可能性を示唆するものです。今後、管理職が持続的に役割を果たしていくためには、メンバーと管理職の相互作用を踏まえた職場づくりや、メンバーのフォロワーシップを含めた組織マネジメントのあり方について検討していくことが重要であると考えられます。
 
2.調査の結果
管理職は、仕事の意義や役割を感じながらも、同時に切迫感や疲労感を抱えている
・「自分がやっている仕事は意味がないと感じる」「自分がやっているのはどうでもいい仕事だ」といった無意味感については、「あてはまらない」「ややあてはまらない」と回答した割合が約6割となり、多くの管理職が仕事の意義を否定していない。
・一方で、「『こんな仕事、もうやめたい』と思うことがある」「心身ともに疲れはてたと思うことがある」「仕事のために心にゆとりがなくなったと感じることがある」といった疲弊感に関する項目では、「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した割合が4~5割程度となっており、管理職の中には心理的・身体的な負荷を感じている人も一定数存在する。
⇒これらの結果から、管理職は仕事の意義や役割を感じながらも、同時に切迫感や疲労感を抱えている可能性が示唆される。
 
図表1:管理職としての成果を感じるも、キャリア展望は分かれる
Q. 以下の各項目について、あなたが考えたり感じたりしていることにあてはまる程度を選択してください。(それぞれひとつずつ)
図表2:仕事に意義がないとは感じていないが、疲弊感を感じている
Q. 以下の各項目について、あなたが考えたり感じたりしていることにあてはまる程度を選択してください。(それぞれひとつずつ)
 管理職は、メンバー育成や目標設定などの基本的なマネジメント行動にやりがいを感じている一方、組織外部との連携などの革新につながる行動に対するやりがいには課題がある
・管理職のマネジメント行動を見ると、「部下の優れた点や努力した点を積極的に褒める」「職務上の問題にすばやく手を打つ」「部下の業績や成果の達成に対して肯定的な評価を与える」といった行動について、やりがいを「感じている」「やや感じている」と回答した割合が7割以上となり、基本的なマネジメント行動に対するやりがいを感じている傾向が見られる。
・また、「自部署や部下の仕事経過や成果を把握する」「部下の適性を見極め、役割に割り当てる」「部下に業績相応にチャンスを与える」など、メンバー育成に関わる行動についても肯定的回答が多く、管理職が部下の育成や成果創出に一定程度やりがいを感じている様子がうかがえる。
・一方で、「経営トップ層から協力や支援を得る」「企業内外で幅広い人脈を作り出す」「他社の動向や消費者ニーズなどの外部動向情報を収集する」といった組織外部との連携などに関する行動については、肯定的回答と否定的回答の差が小さく、やりがいの実感は相対的に低い傾向が見られる。
・また、「部下に重要な決定を任せる」といった権限委譲に関する行動についても、肯定的回答の割合が比較的低く、部下への意思決定の委任は十分にやりがいを感じられていない可能性が示唆される。
⇒管理職はメンバー育成や業務管理といった日常的なマネジメント行動にはやりがいを感じる一方で、組織外部との連携や権限委譲など、革新につながるマネジメント行動についてはやりがいを感じられていない可能性がある。
 
図表3:管理職の仕事の多くについて、やりがいを感じている
Q. 以下の各項目について、あなたがやりがいを感じる程度を選択してください。(それぞれひとつずつ)
 
 
図表4:相対的にやりがいを感じている人の割合が低い、革新につながる行動
Q. 以下の各項目について、あなたがやりがいを感じる程度を選択してください。(それぞれひとつずつ)
 
管理職は、メンバーを「信頼できる」「チーム・プレイヤー」など肯定的な存在と捉える傾向が強い
・管理職がメンバーに対して抱いているイメージを見ると、「信頼できる」「よく働く」「忠実」「チーム・プレイヤー」といった項目で、「多い」「やや多い」と回答した割合が7割以上となり、メンバーを肯定的に捉える傾向が強いことが確認された。
・また、「社交的」「満足している」「活気がある」「生産的」といった項目についても肯定的回答が過半数を占めており、管理職はメンバーを概ね前向きな存在として認識している。
・一方で、「傲慢」「怒りっぽい」「無礼」といった否定的なイメージについては、「少ない」「やや少ない」と回答した割合が高く、ネガティブな印象は比較的弱い結果となった。
⇒管理職はメンバーを概ね信頼できる存在として認識していることがうかがえる。
 
図表5:肯定的なイメージの部下は多く、否定的なイメージの部下は少ないと認知
Q. 特定の部下ではなく、これまでマネジメントしてきた部下全員を思い浮かべて回答をしてください。以下の各項目で表されていることは、あなたの部下のどの程度の人にあてはまるかを選択してください。(それぞれひとつずつ)
 
管理職は、フォロワーシップを取るメンバーが「多い」とはとらえておらず、特に上司に対して建設的な批判を行うメンバーは相対的に少ないと認知
・管理職からは、メンバーが「上司の出す要求や目的を理解し、それに見合うように一生懸命働く」「最高のアイデアや成果をもたらすため精力的に働く」「グループやプロジェクトのリーダーでなくとも貢献するために進んで分担以上のことを行う」などの積極的支援行動を行っているかについて、「多い」「やや多い」と回答した割合が5割弱~6割強となり、上司の仕事や組織目標の達成に貢献しようとする姿勢をメンバーが持っていると認知していることが分かる。
・一方で、「下の立場からは言えない意見を拾って上司に伝える」「自分の評価が下がることになっても正しいと思う意見を主張する」「職場環境を改善するために上司の行為を批判する」といった批判的行動については、肯定的回答が3割程度にとどまり、上司に対して異議を唱える行動は相対的に少ないと認知している傾向が見られる。
・さらに、「上司の反対をものともせず自分の提案を通そうとする」などの行動では肯定的回答が2割弱程度にとどまり、上司に対して強く主張する行動は限定的であると認知していることが確認された。
・また、「上司と本音で理解し合うために飲食などに行く」「上司に声をかけて早く帰ってもらう」などの配慮的行動についても肯定的回答は比較的低く、上司との関係性づくりに関する行動はばらつきが見られる結果となった。
⇒これらの結果から、メンバーは上司に対して積極的に貢献する行動は一定程度とっているものの、上司の意思決定に異議を唱える行動や関係性構築に関わる行動については、広く実施されているわけではないと管理職は認知している可能性が示唆される。
 
図表6:「積極的支援」を行うメンバーを相対的に多く、「批判的行動」を行うメンバーを相対的に少ないと認知
Q. 特定の部下ではなく、これまでマネジメントしてきた部下全員を思い浮かべて回答をしてください。以下の各項目で表されていることは、あなたの部下のどの程度の人にあてはまるかを選択してください。(それぞれひとつずつ)
「積極的支援」を行うメンバーが多いと認識している管理職ほど、マネジメント行動や成果・適応感が高い傾向
・分析の結果、管理職が「積極的に支援するメンバーが多い」と認識しているほど、メンバーとの関係構築、育成支援、権限委譲などのマネジメント行動が高い傾向が確認された。
・また、管理職の成果実感や管理職適応感、ワーク・エンゲージメントといったポジティブな状態についても、積極的支援を行うメンバーを多いと認識するほど高い傾向が示されている。
・メンバーの批判的行動は、メンバーからの積極的支援の認識が高い場合には、管理職の成果実感にポジティブな影響を与える傾向が見られた。
⇒本研究では、管理職がメンバーの行動をどのように認識しているかが、管理職自身のマネジメント行動のやりがいや心理状態と関連していることが確認された。特に、積極的支援をとるメンバーが多いと認識されている場合には、管理職のマネジメント行動に対するやりがいや成果実感、適応感が高くなる傾向が示唆された。
  
図表7:「積極的支援」を行うメンバーが多いと感じるほど、対メンバー行動へのやりがいを感じる傾向
3.調査概要
「管理職のメンバーに対するイメージとマネジメントの状態に関する調査」
※コモンメソッドバイアス:同じ測定手法を用いて複数の変数を測定した際に、真の関連性以上に相関関係が高く出てしまうこと
 
リクルートマネジメントソリューションズについて
ブランドスローガンに「個と組織を生かす」を掲げ、クライアントの経営・人事課題の解決と、事業・ 戦略推進する、リクルートグループのプロフェッショナルファームです。日本における業界のリーディングカンパニーとして、1963年の創業以来、領域の広さと知見の深さを強みに、人と組織のさまざまな課題に向き合い続けています。
●事業領域:人材採用、人材開発、組織開発、制度構築
●ソリューション手法:アセスメント、トレーニング、コンサルティング、HRアナリティクス
また、社内に専門機関である「組織行動研究所」「測定技術研究所」を有し、理論と実践を元にした研究・開発・情報発信を行っております。
※WEBサイト:https://www.recruit-ms.co.jp

⇒これらの結果から、管理職は仕事の意義や役割を感じながらも、同時に切迫感や疲労感を抱えている可能性が示唆される。

⇒管理職はメンバー育成や業務管理といった日常的なマネジメント行動にはやりがいを感じる一方で、組織外部との連携や権限委譲など、革新につながるマネジメント行動についてはやりがいを感じられていない可能性がある。

⇒管理職はメンバーを概ね信頼できる存在として認識していることがうかがえる。

⇒これらの結果から、メンバーは上司に対して積極的に貢献する行動は一定程度とっているものの、上司の意思決定に異議を唱える行動や関係性構築に関わる行動については、広く実施されているわけではないと管理職は認知している可能性が示唆される。

⇒本研究では、管理職がメンバーの行動をどのように認識しているかが、管理職自身のマネジメント行動のやりがいや心理状態と関連していることが確認された。特に、積極的支援をとるメンバーが多いと認識されている場合には、管理職のマネジメント行動に対するやりがいや成果実感、適応感が高くなる傾向が示唆された。