~研究施設ではない企業の日常空間での『生物研究の一般化』を実現。ネイチャーポジティブへの貢献に新たな一歩~
「環境移送技術(R)」を駆使し、自然の「可視化」と「価値化」を進める株式会社イノカ(本社:東京都文京区、代表取締役CEO:高倉葉太、以下「イノカ」)は、スズキ株式会社(本社:静岡県浜松市、代表取締役社長:鈴木 俊宏、以下「スズキ」)および食品工場や低温物流センターにおける冷却設備を中心とする「食」に特化したトータルエンジニアリング会社 フードテクノエンジニアリング株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:野田 憲司、以下「FTE」)の拠点内に設置した完全閉鎖の水槽環境において、海草「アマモ」(学名:Zostera marina)の開花に成功いたしました。研究施設ではない企業のエントランスにおける、人工環境下でのアマモの開花は日本初の事例となります。(イノカ調べ)
 
アマモは、高い炭素固定能力を持つ「ブルーカーボン」として、また多くの海洋生物の繁殖・育成を支える「海のゆりかご」として極めて重要な存在です。しかし、近年アマモは世界的に激減しています。従来、アマモの花枝形成や開花といった繁殖プロセスそのものを直接的なテーマとした研究は数少なく、そのメカニズムには未解明な点が多く残されていました。
今回のプロジェクトでは、スズキの横浜研究所に設置したイノカの生態圏エンジニア(※1)による精密な制御を行った水槽に加え、FTEにおいては社員の皆様が主体的に日常メンテナンスを担う環境下でも開花を実現しました。
これは、アマモの保全研究が特定のラボだけではなく、あらゆる企業の日常空間で実施可能であることを証明する成果です。
 
イノカは本実証を通じて、誰もが科学的データ収集の担い手となれる生物研究の一般化を加速させ、企業の経済活動と自然再生が両立するネイチャーポジティブ(自然再興)ビジネスの創出を強力に推進してまいります。
スズキ 横浜研究所のアマモ生態圏水槽
フードテクノエンジニアリングのアマモ生態圏水槽
※1生態圏エンジニアとは:水生生物の長期飼育や繁殖に関する卓越した技術・知見を持つ人々を指します。彼らの活動は趣味の領域を超えた「シチズンサイエンス(市民科学)」としての可能性を秘めており、イノカ独自の「環境移送技術」を支える核となっています。今回のアマモの開花においても、生態圏エンジニアが潜水調査を行い、アマモの分布や底質の状態を詳細に観察したことが、環境の設計に寄与しています。
 
■ ブルーカーボン生態系の重要性と現在の課題
ブルーカーボンとは、沿岸・海洋生態系によって大気中の二酸化炭素(CO2)が光合成により吸収され、隔離・貯留された炭素のことであり、海草・海藻藻場や干潟、マングローブ林などがその主な吸収源として「ブルーカーボン生態系」と呼ばれています。この生態系はCO2吸収源としての機能だけでなく、水質浄化や生物多様性の保全、水産資源の産卵・育成場所の提供、さらには波浪を緩和する防災・減災機能といった多角的な価値を有しているのが特徴です。
一方で藻場は、地球温暖化や沿岸開発、貧栄養などの影響により、現在も世界的に減少が続いています。例えば国内有数のアマモ場を有していた瀬戸内海では、1960年代から1990年代にかけて約7割もの藻場が消失するという深刻な課題に直面しています。(※2)
(※2)環境省せとうちネットより
 
近年のアマモ場再生事業では種子の播種が主な手法として採られていますが、アマモの生活環の中でも「花枝形成」や「開花」といった繁殖プロセスそのものをテーマとした研究は少なく、そのメカニズムには多くの未解明な点が残されています。

■ これまでの実績と今回の挑戦
イノカはこれまで、産地の異なるアマモを閉鎖環境下で同時に開花させる世界初の試験に成功するなど 、アマモのライフサイクル解明に向けた技術基盤を築いてきました。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000081.000047217.html
今回のプロジェクトは、アマモをはじめとした海洋生物の研究を日常へと開放し、誰もがネイチャーポジティブに貢献できる社会を創るための新たな挑戦です。

■ 研究の概要
本プロジェクトでは、現地の海水や底質を使用しない人工的な閉鎖環境の水槽内でアマモを飼育し、開花を実現しました。
 
1.スズキ:エントランス空間での「開花プロトコル」確立
多くの来客が行き交う研究所エントランスで、生態圏エンジニアが条件をコントロールすることで、開花を誘発する手順を確立しました。 
開花したアマモの雌蕊
開花したアマモの雄蕊
2.FTE:社員主体の「日常メンテナンス」を通じた結実の達成
イノカの生態圏エンジニアの遠隔サポートのもと、FTE社の社員の皆様が主体となって日常的な管理・観察を継続し、開花に加え結実まで到達しました。適切な技術基盤により、場所や人を問わず、あらゆる日常空間から生物研究に貢献できる可能性を示しています。
開花したアマモの雄蕊
結実したアマモの種

■ 本研究の意義
本プロジェクトの成果は、生物研究を研究所だけではなく企業をはじめとした民間施設の日常空間へと開放することで生物研究の一般化を可能にしたという点です。
あらゆる場所が環境保全の最前線となることでデータの母数が爆発的に増加し、未解明な生態への解像度が高まるだけでなく、社員が能動的に生態系を育む経験は企業の人的資本の強化やESG評価の向上にも直結します。
イノカは本実証を起点に、企業の経済活動が自然再生に寄与する「ネイチャーポジティブ・ビジネス」の社会実装を加速させ、地球全体の海を再生するプラットフォームを提供してまいります。
 
■ ネイチャーポジティブ(NP)ビジネスへの展望
イノカは本成果を起点に、経済活動と自然再生が循環する「ネイチャーポジティブ(NP)ビジネス」の社会実装を加速させます。オフィス水槽は単なる鑑賞を超えた戦略的なR&D拠点となり、保全活動のデータ化を通じてTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)等の情報開示を支える強力なエビデンスを提供します。また、FTE社の事例のように社員が生態系を直接育む当事者となる経験は、社内のESG意識を根本から変え、持続可能な経営を支える人的資本の強化に直結します。
 
関係者によるコメント
■ 株式会社イノカ 生態圏エンジニア 五十嵐 琢人 
本来、特定の研究施設で行われるべき生き物の飼育研究が、企業の日常空間で当たり前に行われている光景を目にし、深く感動しています。社員の皆様が日々生き物と向き合い、その変化を観察し続けること自体が貴重なデータとなり、学術的にも価値のある研究へと昇華されると確信しています。私たちはこれからも人と自然が共に栄える未来を創っていきたいと考えています。
 
■ スズキ株式会社 横浜研究所 次世代技術開発部 柳田 章 氏
海と陸が接する沿岸域におけるアマモの減少は、生物多様性の観点からも重要な課題です。今回のアマモ開花は、ネイチャーポジティブの実現に向け、企業として自然とどのように向き合うかを考える一つのきっかけになったと受け止めています。
また、ブルーカーボンのように自然環境が気候変動対策とも関わる領域があることを、社員一人ひとりが実感する機会にもなりました。今後は、こうした経験や知見を大切にしながら、地域や社会と連携し、持続可能な自然環境の保全に向けて、企業としてどのような関わり方ができるかを考えていきたいと考えています。
 
■ フードテクノエンジニアリング株式会社 代表取締役社長 野田憲司 氏
当初は社員に環境課題を知ってもらうきっかけになればと始めた取り組みが、アマモの開花という社会的に意義のある成果に繋がり、大きな喜びを感じています。一人ひとりが生き物への興味を深めることで、私たちが持つエンジニアリングの技術を、新たな形で環境保全に活かせる確信が得られました。今後も自社のアセットと自然への探求心を掛け合わせ、能動的な環境保全活動を力強く推進してまいります。
会社概要
■ 株式会社イノカ
2019年創業の自然環境の総合的プロフェッショナル集団です。サンゴやマングローブ、海藻などの海洋生物から、ゲンゴロウやメダカなどの淡水生物まで、水圏の生態専門家を中心に、大学教授をはじめとする自然科学の研究者、そして環境ビジネスの専門家が在籍しています。「人類の選択肢を増やし、人も自然も栄える世界をつくる。」というミッションを掲げ、産官学と連携し、共に持続可能な豊かな地球を目指し、自然関連の新規事業創出を行っています。
 
■ スズキ株式会社
スズキは「小・少・軽・短・美」をものづくりの理念とし、お客様のニーズにお応えする価値ある製品・サービスづくりや地球環境にやさしい製品づくりに取り組んでいます。また、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けた「スズキクリーンオーシャンプロジェクト」をはじめ、自然環境や生態系の保全にも取り組み、事業活動を通じた環境負荷低減と持続可能な社会の実現に貢献しています。
URL: https://www.suzuki.co.jp/

■ フードテクノエンジニアリング株式会社
食品工場や低温物流センターにおける冷却設備を中心とする「食」に特化したトータルエンジニアリング会社として設計・施工・運営・アフターサービスまで、一貫して行っております。「自分で考え、自ら行動する」をモットーに、常に挑戦し、お客様の要望に応え、オンリーワンの技術で社会・地球環境に貢献いたします。
URL: https://foodtechno-eng.co.jp/