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三国湊共創プロジェクトでプレゼンテーションしたり、会場からに質問に答える発表者たち。会場には約80人が集まり、地元三国町はもちろんNTT西日本や住友林業、福井銀行、地元マスコミなどそうそうたるメンバーが傾聴、盛んに意見や感想を述べていた=2026年3月26日 |
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坂井市、NTT西日本、事業構想大学院3者連携で最終報告 |
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福井県坂井市三国町の風情な湊町やその周辺の観光振興や地域活性化に取り組む人材を養成する事業「三国湊共創プロジェクト研究」は活動最終日の3月26日、研究員12名による最終成果発表会が、同市三国町の市商工会三国支所で行われた。県内外から参加した男女12名の研究員は、昨年8月から20回の講義やワークショップを経て、自分なりに温めてきた三国湊のまちづくり活性化策をプレゼンテーションし、アイデアを凝らした発表が繰り広げられた。 |
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同プロジェクト研究は、坂井市とNTT西日本、事業構想大学院大学(本部・東京)の3者が7月に包括連携協定を結んだことをベースに、坂井市が主催し、事業構想大学院大学が運営して進められた。三国湊は江戸時代に栄華を誇った北前船寄港地で、九頭竜川河口に位置したことで太古から物流の拠点となり、その繁栄ぶりを風情漂う町並みなどに残す。また巨大な武者人形などが市街を練る「三国祭」も街の名物となっている。しかし、最近は少子高齢化から旧市街に空き家も増え、町並みを生かしながら、どう活性化していくかが大きな課題となっている。 |
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■12名の研究員名とそれぞれの最終発表のタイトル(敬称略) |
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[No.]:[氏名]:[所属団体・企業等]:[発表のタイトル] |
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1.倉橋 藍:福井市:オテシオ:古民家を舞台に、食でつなぐ人と地域 |
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2.藤本隼人:坂井市:ふくいヒトモノデザイン:Barえち鉄構想~移動時間を地域の前菜に変える~ |
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3.二瓶寛史:神奈川県:頂マーラータン:健康と美食のまち坂井市に、マーラータンという新しい発信を。 |
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4.松浦拓矢:福井市:天晴データネット:三国湊の循環型マネジメントモデル~地域の“OS”になるとい |
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う挑戦~ |
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5.岩田清史:愛知県:TOPPAN中部事業部:観光ブランディング構築 帆をおろす街「ほまち三国湊」ヘルスツーリズム事業 |
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6.新滝憲伸:福井市:NTTビジネスソリューションズ:何も飾らない、三国湊~良い景色と、良い温度。サウナで紡ぐ湊町~ |
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7.山本 譲:大阪府:Good Loser:三国湊 宿泊型イマーシブツアー導入計画 北前船の歴史を「傍観」から「感情の追体験」へ変える極上の滞在 |
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8.澤田久奈:あわら市:北陸マシナリ―:ママに、時間を贈る。「いつでも母の日」プロジェクト |
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9.二宮崎博:福井市:ぶちでざいん:ねこへのギフト文化 共体験×失敗ゼロ |
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10.高橋駿介:坂井市:ふへん:まちに自己投資する文化をつくる OOKI HOTELから始まる、関係 |
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資本ファンド構想 |
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⓫西川晃治:坂井市:西川工務店:町屋再生事業による地域資産循環モデルの構想 |
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⓬岩堀貴史:坂井市:UDCS:空き家を、まちの入口に変える。 |
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以上の中から、構想した事業をすでに具体的なカタチで実行に移し始めた1.と3.の2名の発表について、発表概要と、なぜこの構想に至ったのか、本人に対するインタビューで紹介する。 |
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「地の食で季節感を大事に。人と地域をつなぐオテシオ」 |
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―発表1.の倉橋藍さんにインタビュー |
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オテシオ主宰 フードディレクター、倉橋藍さんの発表要約 |
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「古民家を舞台に、食でつなぐ人と地域」 |
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三国湊の空き家古民家を改装し、私がオーナーとなって「ランチ営業&料理教室」の“食のアトリエ”「オテシオ」をつくる。事業はランチ、出張調理、料理教室のほかに、お客となる30~60代の女性や子育て世代、野菜農家など生産者、また三国湊への旅行者、観光客との「語らい」「企画会議」「ワークショップ」の場とすることで、食を通した人と地域との交流の場を目指す。第一段階(フェーズ)で、三国湊のMOFキッチンを借りリサーチ営業も行い、一定のファン獲得もできた。フェーズ2では空き家を購入し開業を目指す。目標は月商200万円。さらにフェーズ3では、三国の食文化を生かしたレシピや商品開発によるブランド確立、メディア発信などの事業を構想しております。
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―倉橋さんの発表は、単にランチ営業する飲食店ではなく、食と人を繋ぐ“食のアトリエ”のようなお店を三国湊の空き家を活用して出店するというものでした。このようなユニークな構想を考えたのも、倉橋さんの生き方が食との関わりが深いからですか? |
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倉橋 私は大阪生まれで福井の生まれではないのですが、夫と結婚して初めて福井に来て住んだのが若狭の小浜でした。そこで専門学校に通って調理師の免許を取りました。この福井の地に住み始めることで、それまでの仕事もやめたし、人生をリセットする感覚で、自分のやりたいことに挑戦する気持ちで調理師免許を取ったんです。でも、お店をやるとか、料理店に勤めたわけじゃなく、主婦しながら…なんだろ、福井市に移ってからも、イベントがあるとオリジナルなドリンクを作って売ってみたり、なんかゲリラ的な調理活動をやってました。変でしょ。で、オテシオという名前で、初めて |
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自ら作った料理をタブレットで見せながら、三国湊と人を食で結ぶ“アトリエ”「オテシオ」構想を話す倉橋藍さん |
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自分の料理を出したのが多分2016年。三国湊に雑貨店がオープンした際、ケータリングで料理をしつらえた時使ったのが最初でした。その後、あわら市の波松カフェで出すメニューを考案したり、福井駅前にあった「クマゴローカフェ」のキッチンをお借りして、週1回だけランチ営業を始めたり…毎回20食ほど出していました。それはそれで結構6年ほども続いたんですよ。…でも、自分も3児の母なので子育てでも忙しくて…だから自分の店は持ったことがないんです。けれど、これまで食や調理を通じて、いろんな人と出会い、それがまちづくりにも繋がっていたこともあったので、そんな経験が今回の発表の構想のベースになっているんだと思います。 |
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今年2月に、三国湊のシェアキッチンで試験的に出店し提供した料理。家庭ではここまで手をかけられないから「嬉しい」との声が。 |
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―「オテシオ」という名にはどんな思いが込められていますか? |
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倉橋 由来は2つあって、「手塩にかける」…一品一品を丁寧に、想いを込めてつくる、というのと、「おてしょう」…手塩皿のように、身近で愛おしい存在にーという意味からオテシオです。ただ、食べるだけではなく、「つくること」「知ること」「語ること」、そのすべてをひと皿にのせて、豊かな食の時間をつくる、というメッセージを込めています。 |
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福井の地に住んで感じるのですが、福井には食のカレンダーみたいなものがあると思っています。9月は底引き網漁解禁で甘えびやカレイなど多彩な魚が揚がる、11月は越前がに、夏の半夏生はサバの丸焼きを…水羊羹は本来夏のものなのに、冬場に必ず食卓に上がる。この時期にはこれを食べるという感覚が強い、つまり食から感じる季節感を大事にしている。オテシオで出すお料理も、そんな福井の旬の味を大事にしていきたい。 |
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―このユニークなお店を、なぜ三国湊でやりたいのですか? |
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倉橋 夫が三国出身ということもありますが、三国湊のまちは、他のまちと違いますよね。三国祭という大きな祭りがあるかもしれないけれど…まちに余白があるというか、面白い路地があったり…なんだろ…まちに色気を感じるんです。そういう不思議な魅力があるのが三国湊だと思っているので。あと、食でも、三国湊の周辺には北部丘陵地や三里浜など多彩な作物が採れますし、浜には「塩炒り」というメギスや小魚を使った独特の調理法なんかもある。 |
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まち歩きしてみ、「主観でいいから…生きた情報がほしい」 |
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―北陸新幹線の福井開業もあって、ここ最近、三国湊は空き家活用として、古民家ホテルや宿泊施設が増えているように見えます。三国湊のまちづくりに必要なものは何だと感じていますか? |
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倉橋 私が来た頃と比べると、古い町家が壊されて空き地が増えてきてしまったという印象があります。10年ほど前、旧森田銀行周辺に町家を活用した新しいお店が次々と誕生したあの頃、街全体がパッと明るくなるような活気には本当にワクワクしました。最近も宿泊施設などで活用されていることは素晴らしいと思います。まちの中に多様なお店の火が灯っている風景は、やっぱりこの場所にとって大切なことだと思うんです。 |
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共創プロジェクトのワークショップで三国のまち歩きをした時、立ち寄り先の情報のリストはあっても、いざ知らないお店の扉を開けるとなると |
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えちぜん鉄道三国駅前のMOFキッチンで「オテシオ」をお試し出店した倉橋さん(左)。オテシオの店を構えるために、三国湊エリアでいい感じの空き家を探している |
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思った以上に勇気が必要で。どこかまちとの距離を感じて、途方に暮れてしまったことがありました。観光ボランティアの人たちが教えてくれる、まちの歴史や見どころに加え、地元の人が「酒饅頭ならここが絶対おすすめだよ」とか、「おれはここから見る夕日が一番きれいだと思う」とか自分の主観でいいから、三国湊ならではの“生きた情報”を教えてくれると、訪れた人がもっとまちを好きになれるのかも知れません。地元の人とのそんな出会いがあることはとても大事な気がします。 |
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「自治体と連携し、麻辣湯とその土地の食のブランド化を」 |
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―発表3.の二瓶寛史さんにインタビュー |
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頂マーラータン・おうちでマーラータン株式会社取締役COO 二瓶寛史さんの発表要約 |
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「健康と美食のまち坂井市に、マーラータンという新しい発信を。」 |
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全国的にブームになっている中国・四川省生まれの春雨煮込みスープの「マーラータン(麻辣湯)」の三国湊バージョン商品を、えちぜん鉄道三国駅のカフェで実験的に売り出し始めた。坂井市は健康づくり宣言をしているほか、昨年は美食都市アワードにも選ばれており、私たちは単にマーラータンを出店するというだけでなく、新しい日本の食文化となる可能性のあるマーラータンを、地域おこしに結び付けられないかと考えている。
マーラータンは、健康によく医食同源の食べ物で、福井の土地に根付く出汁文化ともよくマッチする。加えて、温浴、入浴の後の「サ飯」にも位置付けできる。私たちは全国サ飯協会の設立を目指しており、新たなガストロノミーの体系化を図り、「温浴後の新しい食体験」を広げており、ぜひ坂井市でマーラータンによる「食体験」→「地域ブランド化」→「ウエルビーイングの地域モデル」として発展させていきたい。
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「マーラータンを、地域とつながった日本の食文化にしたい」と話す二瓶寛史さん |
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―マーラータンは、いま全国的なブームですが、北陸・福井の地とは縁のない「頂マーラータン」が、なぜ坂井市のこの共創プロジェクトに参加したのでしょうか? |
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二瓶 辛味が売りのマーラータンですが、私たち「頂マーラータン」は、日本人向け和風味のマーラータンを新名物として根づかせ、日本の食文化の新しい柱にしていきたいと本気で考えています。単にチェーン展開して店を増やすだけでなく、10年先も持続するブランドを作るため、文化を作ることを目指しています。SNSでバズらせたり、ネットで一時的なブームを作り出すことも可能ですが、一方で、バズるだけでは続かない、とも強く感じてきました。瞬間的に話題になることと、地域に根づいて長く愛されることは、やはり別です。 |
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だからこそ以前から、自治体と連携しながら、その土地の魅力と一緒にブランドを育てていくような形ができないかと考えていました。そんな中、ネット検索で様々な自治体との共創プロジェクトやコンテストで参加できそうなものを探していたところ、ちょうどこの坂井市の事業を見つけました。事業の主催者に、NTT西日本や事業構想大学院大学の存在があったことも、参加動機として大きかったかもしれません。 |
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坂井市は健康都市宣言もあり、美食アワード2025にも認定されていて、海の幸も山の幸も本当に豊かです。実際に調べ、話を聞く中で、医食同源という考え方を持つ私たちのマーラータンと、非常に相性がいいと感じました。もともとマーラータンは、中国・四川の船頭たちが体を温めるために河岸で食べていた火鍋がルーツのひとつ。そう考えると、寒い時期が長く、体を温める食文化と相性のいい北陸には、実はかなり合っていると思います。福井や坂井には魅力的な食材も豊富で、地産地消という観点でも、地域の食材を一皿にまとめて楽しめるマーラータンとは親和性もありま |
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えちぜん鉄道三国駅にあるカフェ「はぁとの葉っぱ」でメニューとして出されている三國湊マーラータン。1杯500円とワンコインで食べることができる。 |
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す。それに、福井には出汁文化がある。郷土料理のお雑煮のように、出汁のうまみを大事にする食の土台がある。そこに、私たちが大切にしている、和出汁にこだわった和製マーラータンはマッチするのではないかと思います。 |
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―最終発表の前に、実際に「三國湊マーラータン」として、えちぜん鉄道三国駅のカフェ「はぁとの葉ってぱ」で、マーラータン販売を始めました。12人でここまで行動したのは唯一と思いますが、なぜそこまで? |
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二瓶
一番大きいのは、「このプロジェクトはもう実際に動いています」と、最終発表で成果を基に伝える必要があると思ったから。今回の発表は、坂井市や関係者の皆さんに、頂マーラータンの可能性を見ていただけるとても貴重な機会でした。だからこそ、机上の構想だけで終わらせたくありませんでした。小さくてもいいので現地で実際に動かして、お客様がどう反応するのか、地域の中でどんな会話が生まれるのか、そこまで含めて発表し、関係者の皆様からのご意見をいただき、持続可能な形にしたいと考えていました。
実際の販売では、営業時間帯が短いこともあって、今のところ客足はそう伸びていませんが、時間を絞ったのも、カフェの女性オーナーさんに、なるべく負担をかけたくなかったから。本来の営業に支障が出ないこと、そして無理のない形で始めることを優先しました。 |
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プロジェクトは、発表して終わりでは意味がないと思っています。続いていくこと、残っていくことに価値があります。そう考えたときに、まず最初の小さな一歩を現地で踏み出すところまでは、必ずやろうと決めていました。なお、このマーラータンの売り上げの一部を地元の三国高等学校へ寄付させていただきます。小さい規模ですが、このような取り組みで大切なことは、成果を地域の未来へ投資していくことが大切であると考えています。 |
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三国湊に「ガストロノミーツーリズムの観光をつくれる」 |
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「店内のお客さんに三國湊マーラータンを出すオーナーの日置さん。「この味にハマるお客さんも多いですよ」といつも笑顔だ |
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―二瓶さんは最終発表だけでなく、昨年10月のワークショップも含め3回、東京から現地の三国湊を訪れていますが、三国湊が今後、観光地として育つ魅力や可能性を感じましたか? |
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二瓶 三国湊は、非常に魅力的なまちだと感じています。坂井市は地形が食と文化を必然的に産んでいる魅力的な構造があり、この地形がまさに注目されるべき大きな魅力ではないかと。これは今、注目されているガストロノミーツーリズムで人気なフランス、イタリア、スペインなどにも劣らない観光をつくれると思います。 |
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AI全時代で情報そのものが均一化される可能性があるなと感じる一方、現地でしか得られない体験価値、歴史や文化、食に触れて記憶に残る観光の価値が、より高まっていくと考えています。その意味で三国湊は、北前船交易の歴史や港町としての景観、地域に根ざした食文化、地形が食や文化を必然的に育んできた構造があり、非常に魅力的です。再編集し、ブランドとして一体化できれば、大きく伸びる可能性があると感じています。加えて、北陸新幹線の福井開通や、関西圏からのアクセス強化、周辺エリアを含めた観光機運の高まりもあり、今後さらに注目度が上がる地域だと思います。 |
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三国湊の空き家古民家を改装し、私がオーナーとなって「ランチ営業&料理教室」の“食のアトリエ”「オテシオ」をつくる。事業はランチ、出張調理、料理教室のほかに、お客となる30~60代の女性や子育て世代、野菜農家など生産者、また三国湊への旅行者、観光客との「語らい」「企画会議」「ワークショップ」の場とすることで、食を通した人と地域との交流の場を目指す。第一段階(フェーズ)で、三国湊のMOFキッチンを借りリサーチ営業も行い、一定のファン獲得もできた。フェーズ2では空き家を購入し開業を目指す。目標は月商200万円。さらにフェーズ3では、三国の食文化を生かしたレシピや商品開発によるブランド確立、メディア発信などの事業を構想しております。
全国的にブームになっている中国・四川省生まれの春雨煮込みスープの「マーラータン(麻辣湯)」の三国湊バージョン商品を、えちぜん鉄道三国駅のカフェで実験的に売り出し始めた。坂井市は健康づくり宣言をしているほか、昨年は美食都市アワードにも選ばれており、私たちは単にマーラータンを出店するというだけでなく、新しい日本の食文化となる可能性のあるマーラータンを、地域おこしに結び付けられないかと考えている。
マーラータンは、健康によく医食同源の食べ物で、福井の土地に根付く出汁文化ともよくマッチする。加えて、温浴、入浴の後の「サ飯」にも位置付けできる。私たちは全国サ飯協会の設立を目指しており、新たなガストロノミーの体系化を図り、「温浴後の新しい食体験」を広げており、ぜひ坂井市でマーラータンによる「食体験」→「地域ブランド化」→「ウエルビーイングの地域モデル」として発展させていきたい。