株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年4月7日、自社ウェブサイトに研究解説「プベルル酸と誘導された経緯 有識者会議が見逃した理由
——開示行政文書が示す専門性の欠如と唯一の警告——」を公開した。
 

 

▼対象記事URL

 

https://kunsei.com/archives/671

プベルル酸と誘導された経緯(調査報告)

有識者会議が見逃した理由

——開示行政文書が示す専門性の欠如と唯一の警告——

1 本報告の目的

調査報告①(令和8年4月6日付)において、小林製薬技術担当者・梶田恵介氏の記者会見発言から、令和6年3月28日の有識者会議への報告が完全同定未完了の段階でなされたものであることを確認した。

本報告では、情報公開請求により入手した同有識者会議議事要旨(開示文書)に基づき、なぜ有識者会議がこの報告を見抜けなかったかを記録する。

 

2 有識者会議の構成——出席者と発言状況

議事要旨(開示文書)に記載された出席者は以下のとおりである。

 

(1)発言が議事録に記録された委員・参考人

氏名 所属・役職 専門分野
◎曽根 博仁(座長) 新潟大学大学院 血液・内分泌・代謝内科学 教授 糖尿病・代謝内科
加藤 将夫 金沢大学 医薬保健研究域 薬学系 分子薬物治療学 教授 薬理学
神村 裕子 日本医師会 労働衛生・産業医
佐藤 加代子 東京家政大学 栄養学部 栄養学科 教授 栄養学
西崎 泰弘 東海大学医学部付属病院 内科
南學 正臣(参考人) 東京大学大学院 器官病態内科学講座 教授 腎臓内科
山縣 邦弘(参考人) 筑波大学 医学医療系 腎臓内科学 教授 腎臓内科
伊藤 美千穂(参考人) 国立医薬品食品衛生研究所 生薬部長 生薬(天然薬物)
杉本 直樹(参考人) 国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部長 食品添加物

 

(2)議事録に発言が記録されていない委員

以下の委員については、議事録上に発言の記録がない。

●     上原 万里子(東京農業大学 副学長)

●     徳重 克年(東京女子医科大学 消化器内科 主任教授)

●     西森 康夫(にしもり薬局)

●     塚本 和久(帝京大学 医学部 内科学講座 教授)

●     阿部 理一郎(新潟大学大学院 皮膚科学分野 教授)

 

以上は開示文書(議事録)から確認できる事実である。

 

(3)発言が記録された委員の専門分野と不在の専門性

発言が記録された委員・参考人の専門分野を確認したところ、以下の専門分野を持つ者は存在しなかった。

●     有機化合物の構造決定・化合物同定の分析化学(NMR・LC/MS・異性体排除)

●     食品科学・醸造学・麹菌学・発酵微生物学

●     機能性表示食品制度の法規制・食薬区分・薬機法

 

なお、伊藤美千穂参考人(生薬部長)は出席者の中で分析化学に最も近い立場にあったが、その発言内容については次節で述べる。

 

3 唯一の専門的警告——伊藤美千穂参考人の発言(議事録記録)

開示された議事録には、伊藤美千穂参考人による以下の発言が記録されている。

 

「今、衛研のほうにはまだサンプルが何も届いておりませんので、衛研のほうで分析はスタートできておりません」

「成分Xだけではなくて…網羅的に広く見える方法を使いまして分析を行う予定にいたしております」

「アオカビがPuberulic acidを作る能力は相対的に低いです。そんなにたくさん作れるものではないという文献の情報がございます」

「このXという成分だけに注力するというのはちょっと危ないのではないかという感触を持っております」

 

伊藤参考人は次の二点を明確に指摘した。

●     NIHSに検体が届いておらず、NIHSによる独立した分析は3月28日時点で開始されていない

●     プベルル酸のみへの注力は「危ない」——網羅的分析が必要

 

この発言は議事録に記録されているが、会議の結論には反映されなかった。

 

4 事務局(非技官)による方針主導

議事録において、原因究明の方針に関する発言を繰り返したのは技術系職員ではなく行政職である近藤食品基準審査課長(事務局)であった。

 

「国が主体となって国立医薬品食品衛生研究所という専門組織もございますので、そういったところでしっかりと原因究明を進めていきたい」

「国立医薬品食品衛生研究所、それから、小林製薬さんからのデータなども見ながら進めたいと思っております」

 

「小林製薬さんからのデータなども見ながら」という表現は、被調査企業提供データへの依存を前提とした方針であることを示している。

 

5 NIHSへのサンプル未到着が意味すること

伊藤参考人が「サンプルが何も届いていない」と述べた3月28日の時点では、NIHSによる独立した分析は開始されていなかった。

有識者会議の場に存在したのは、被調査企業である小林製薬自身が実施した分析結果のみであった。独立機関がこれを検証した記録は存在しなかった。

この事実は、大阪市保健所が食品衛生法第28条に基づく収去を実施していなかったことを自認した行政文書(大大保8562号)、およびNIHSが同定根拠文書の不存在を認めた開示文書(衛研発第0306002号)と整合する。

 

6 結論

確認された事実 根拠文書
化合物同定の分析化学専門家が発言委員中に不在だった 議事要旨・議事録(発言記録)
出席委員の約半数は発言が議事録に記録されていない 議事録(発言記録)
NIHSは3月28日時点でサンプル未受領・分析未開始だった 議事録(伊藤参考人発言)
プベルル酸への注力に対する専門的警告が結論に反映されなかった 議事録(伊藤参考人発言)
原因究明の方針を主導したのは技官ではなく行政職の課長だった 議事録(近藤課長発言)
大阪市保健所は収去を実施していなかった 大大保8562号
NIHSはPA同定根拠文書の不存在を認めた 衛研発第0306002号

 

調査報告①と②を総合すると、以下の構造が開示文書と公開記録から確認される。

 

小林製薬が完全同定未完了の状態でプベルル酸のみを有識者会議に報告した。化合物同定の専門的発言がなされなかった有識者会議と、独立した分析を開始していなかったNIHS、収去を実施していなかった大阪市保健所、行政職主導の事務局がこれを見抜けなかった。唯一の専門的警告(伊藤参考人)は結論に反映されず、翌日厚労省がプベルル酸を原因物質として公表し、225社が公表された。

 

これらは当社の推測ではなく、情報公開請求により入手した行政文書および公開された記者会見記録に基づく事実の記述である。

 

【本件に関するお問い合わせ】

株式会社薫製倶楽部 代表取締役 森 雅昭(薬剤師)

〒701-0303 岡山県都窪郡早島町前潟611-1 TEL:086-483-0602 E-Mail:sales@kunsei.co.jp

 

【関連プレスリリース】

▶ ① 東京科学大学のプベルル酸研究に科学的疑義申立(2026/3/10)

▶ ② 2024年紅麹事件、大阪市保健所が収去していないことを確認(2026/3/12)

▶ ③ プベルル酸の根拠不明 研究解説①(2026/3/13)

▶ ④ プベルル酸の根拠不明 研究解説②(2026/3/16)

▶ ⑤ プベルル酸の根拠不明 研究解説③(2026/3/17)

▶ ⑥ 「プベルル酸」の使用根拠について主要報道機関10社へ疑義照会(2026/3/18)

▶ ⑦ 刑事告発状の提出について(2026/3/19)

▶ ⑧ 動物実験を実施したのは小林製薬だった(前編)(2026/3/19)

▶ ⑨ 小林製薬の動物実験写真が行政発表資料にそのまま使用されていた(2026/3/19)

▶ ⑩ 動物実験を実施したのは小林製薬だった(後編)(2026/3/23)

▶ ⑪ 小林製薬公表資料に基づくPK試験データの整理(2026/3/24)

▶ ⑫ 国立医薬品食品衛生研究所長を刑事告発(2026/3/25)

▶ ⑬ コカ・コーラが示す食薬区分の本質 研究解説⑩(2026/3/27)

▶ ⑭ 厚労省健康・生活衛生局長を刑事告発(2026/3/30)

▶ ⑮ 【決定的証拠】小林製薬の標準品で小林製薬の検体を試験した(2026/3/31)

▶ ⑯ 「収去記録の特定に60日」——存在しないから探せない(2026/4/1)

▶ ⑰ 大阪市保健所は最大の被害者である(2026/4/2)

▶ ⑱ 「収去なき断定」の全体像(2026/4/3)

▶ ⑲ 小林製薬紅麹コレステヘルプa(G970)——医薬品文献を根拠とした機能性表示食品、消費者庁に行政不服審査請求(2026/4/3)

▶ ⑳ 厚生労働省が公文書で「判断放棄」を確認——米国が2001年に解決した問題を日本は25年後も回避(2026/4/3)

▶ ㉑ プベルル酸と誘導された経緯(調査報告①)「不完全同定」での断定報告(2026/4/6)

▶ ㉒ プベルル酸と誘導された経緯(調査報告②)——有識者会議が見逃した理由(2026/4/7)