メドキュレーション株式会社(本社:静岡県、代表:柴垣知広)は、2026年4月1日、April Dreamの取り組みとして、私たちが実現したい未来として「骨盤内がんに対するカテーテル治療 "NIPP" を、必要とするすべての患者さんが選べる社会」を発信いたします。
この記事では、NIPPという治療法のこと、この治療を届けようとしている人たちのこと、そして私たちがこれから進もうとしている道のりについてお伝えします。
子宮がん、膀胱がん、直腸がんなどの骨盤内がんは、日本において毎年約11万人が新たに診断され、3万人以上の患者さんが命を落としています。
進行や再発の状況によっては治療選択肢が限られ、患者さんにとって身体的・経済的・心理的な負担が大きい領域でもあります。
NIPP(閉鎖循環下骨盤内非均衡灌流療法)は、骨盤内のがんに対するカテーテル治療です。
両足の付け根から直径3~4mmの細い管(カテーテル)を挿入し、バルーンで骨盤内の血流を一時的に隔離。高濃度の抗がん剤を骨盤内に限定して届けた後、薬剤を体外へ回収します。
臨床研究では、骨盤内の薬剤濃度が通常の全身化学療法と比べて15~25倍以上に達したという報告があります(※文献1)。薬剤を投与後に回収する設計のため、全身への漏出が抑えられ、副作用の軽減が期待されています。
1回の治療での入院期間は約5日間。約1ヶ月の間隔をおいて通常2回の治療で完了します。標準治療後の再発・進行例など、治療の選択肢が限られた患者さんにも適応できる場合があるとされています。(※治療効果・実績については解説サイトをご参照ください:http://nipp.gr.jp/)
メドキュレーションの発起人、技術責任者・小野澤志郎医師がNIPPと出会ったのは、医師になって1週目のことでした。
師匠である村田智医師(現帝京大学ちば医療センター放射線科教授)の治療を目の当たりにした瞬間、「この治療法は世界に出さなければならない」と強く思ったといいます。以来25年間、小野澤医師はカテーテル治療の最前線でNIPPの研究と臨床を続けてきました。
しかし、保険適用外使用の規制が厳格化され、NIPPは保険診療として実施できなくなります。自費診療では1回あたり数百万円。多くの患者さんにとって、手の届かない治療になってしまいました。
2015年には先進医療Bに認定され、治験の道が開けたかに見えましたが、連携企業の事情で中止に。その後、公的研究資金への申請を6回以上重ねましたが、いずれも不採択。
「もう、諦めようか」。そう妻に打ち明けたとき、返ってきたのはこんな言葉でした。
「この治療のためにどれだけ時間を費やしてきたの? ここで止めるのは、一緒に過ごせるはずだった家族との時間を無駄にすることだよ」
小野澤医師は涙が止まらなかったといいます。もう絶対に諦めない──そう心に決め、2024年、さまざまな方々の尽力により自費治療の再開にこぎつけました。
「私が諦めたら何人の患者さんが不幸になるのか」。そんな思いから、夜中に飛び起きた日もあったといいます。
代表取締役の柴垣知広がNIPPと出会ったのは、2024年の夏でした。
柴垣の原点は、大学時代のインドにあります。人生で大きな挫折を経験し、心の傷を癒そうと旅に出たインドで、偶然マザーテレサの施設「マザーハウス」を訪れました。そこで、余命わずかのおじいさんの食事介助をしたとき、口にご飯を運ぶと、おじいさんの目からぽろっと涙がこぼれた──。
「人の役に立つっていいな」。その瞬間に芽生えた気持ちが、医療業界に進む原点になりました。
その後、外資系医療機器メーカーで20年以上にわたり、日本市場に合った製品の導入や安全使用の普及に携わってきました。小野澤医師とは、約20年前、営業先で出会って以来の縁でした。
2024年夏。キャリアに悩んでいた柴垣が小野澤医師を食事に誘ったところ、NIPPの話を聞かされ、「ベンチャー企業を立ち上げるから社長やってくれない?」と声をかけられました。
柴垣は二つ返事で引き受けました。NIPPが実現した未来しか見えなかった。そして何より、「患者さんの近くで、患者さんのために動ける」──あのインドでの原点に戻れる気がしたからです。
■ 想いに賛同するメンバーが集結しメドキュレーション社設立
2024年12月、メドキュレーション株式会社が設立されました。
医学、マーケティング、ファイナンス、プロモーション。異なる分野のプロフェッショナルが、NIPPを社会に届けるというひとつの目標のもとに集まっています。
NIPPは現在、自費診療で1回あたり400~500万円。この経済的な壁が、治療を必要とする多くの患者さんの「選べない理由」になっています。
私たちは2030年の保険適用を目指し、医師主導治験の準備、NIPP専用医療機器の開発、PMDAとの連携による薬事承認プロセスの推進、多施設共同研究の体制構築を進めています。
設立から間もない会社ですが、すでに動き始めています。2025年12月には医療機器特化型アクセラレーションプログラム「MedTech Angels Season5」に採択。CAMPFIREでのクラウドファンディングでは1,129人の方から約1,460万円の支援が集まり、クラウドファンディングアワード2025にて社会貢献部門の賞を受賞。日本IVR学会では2020年から毎年NIPPに関するシンポジウムが開催され、学術面での議論も着実に積み重ねられています。
医療機器メーカーや製薬会社にNIPPの話をすると、「この治療、ぜひ実現させたい」と目の輝きが変わる方が多いと柴垣社長は感じています。日本発の治療法を、世界に届けられる可能性を持つ取り組み。一社では成し遂げられない挑戦だからこそ、医療機関、関連企業、研究者、そして社会との連携が不可欠です。
がんにかかったとき、「NIPPがある」と知ることができること。
住んでいる場所や経済状況にかかわらず、その治療を選べること。
日本で生まれたこの医療技術が、いつか国境を越えて広く社会へ届くこと。
小野澤医師が医師1年目に誓った「世界に出さなければならない」という想いから25年。仲間が集まり、1,129人の支援者が背中を押してくれました。
がんにかかったとき、「NIPPがあってよかった」と思える未来を──。
私たちはその夢の実現に向けて、一歩ずつ、しかし着実に進んでいきます。
※臨床研究結果は限られた症例数に基づくものであり、治療効果を保証するものではありません。