社会的養護のもとにある子どもの「質の高い意見表明権」を全国一律に保障するため、3つの重点施策を提言します。
NPO法人全国子どもアドボカシー協議会(所在地:福岡県福岡市城南区、理事長:相澤 仁、中村みどり)は、大分大学権利擁護教育研究センター協力のもと、2025年度の「子どもの意見表明等支援(子どもアドボカシー)事業」に関する全国実態調査(2026年3月発表)の結果を公表しました。実施自治体は全対象の82.9%に達し、制度の普及が進む一方で、アドボケイト(意見表明等支援員)を支える指導者(スーパーバイザー:SVR)の配置は6割に留まり、支援の質における地域格差が深刻化しています。当協議会は、この調査結果を重く受け止め、「SV体制の国費による標準化」などを提言し、その内容を公開します。
私たちの提言(全文)
当協議会は、すべての子どもがどこに住んでいても質の高いアドボカシーを受けられる社会を目指し、本調査で明らかになった現場の課題に基づき、以下の3項目を提言します。
1.
スーパービジョン(SV)経費の国庫補助の標準化と義務化
アドボケイトの専門性と安全性を担保するSV体制の構築を、自治体の努力義務に留めず、標準的な公的予算として全額補助の対象とすること。
2.
家庭的養護(里親・ファミリーホーム)への展開に向けた調整予算の拡充
施設訪問とは異なる高度な調整工数が必要な里親家庭等へのアドボカシーを推進するため、実費だけでなく「コーディネート人件費」を適切に算定すること。
3.
アドボケイトの専門職化に向けた適正な報酬基準の策定
移動・記録・研修などの「見えない労働」を適切に評価し、職種や地域による格差のない適正な報酬基準を国として提示すること。
調査概要
目的
意見表明等支援事業(児童福祉法第6条の3第17項)の実施状況および事業実施自治体の概要を明らかにし、今後の事業推進に資する基礎資料とする。
調査対象
児童相談所設置自治体82自治体。本調査の回答は、自治体で独自に実施または個人に委託している場合は自治体に対して依頼し、民間団体へ委託している場合は、自治体を通じて民間団体に依頼した。なお、回答者の所属・役職は、自治体の場合は子ども家庭支援部局等の事業担当者(課長級~主事等)、民間団体・NPO・法人・大学等の場合は代表者等の事業責任者とした。
実施方法
Googleフォームによる回答またはPDFのメール提出
実施期間
2025年11月~2026年2月
回答率
84.1%(82自治体中69自治体)
実施主体
NPO法人全国子どもアドボカシー協議会
分析方法および留意点
統計解析はMicrosoft Excelを用いた記述統計を中心に実施した。また、本調査は回答自治体および委託団体からの自己申告データに基づくものであり、未回答や記載内容のばらつきが含まれるため、結果の解釈には一定の留意が必要である。
2025年度 調査結果
■調査結果のポイント
事業の急速な普及と民間委託の主流化
児童相談所設置自治体82カ所のうち、事業を実施しているのは82.9%(68自治体)に達しました。実施形態は「民間団体へ委託」が72.1%(49自治体)と最多であり、官民連携による推進が主流となっています。
指導体制(SV)の現状と課題
アドボケイトの質を担保するスーパーバイザー(SVR)の配置率は60.3%に留まっています。さらに、回答データの詳細分析の結果、SVR未配置の自治体では半数以上(52.2%)が「継続研修を実施できていない」状況にあり、支援の質の「地域格差」が懸念されます。
里親家庭への高い壁
一時保護所(実施率84.4%)や児童養護施設(58.5%)での活動に対し、里親家庭への訪問実績がある自治体はわずか6.0%(153家庭)に留まり、構造的な調整予算の不足が浮き彫りとなりました。
財源の制約
自治体別の事業費は、約7割(66.7%)が1,000万円未満で運用されています 。自由記述では「予算不足のため訪問回数を十分に取れない」といった、現場の切実な声が多数寄せられました。
▶調査結果レポート(全文):
https://prtimes.jp/a/?f=d106655-31-4e95fb45cf4427f0f6aa4aaeffa4f46b.pdf
■調査結果詳細(調査結果レポートより一部抜粋)
「意見表明等支援事業」の実施状況
児童相談所設置自治体82自治体のうち、本調査に回答したのは84.1%(69自治体)、未回答は15.9%(13自治体)であった。そのうち「意見表明等支援事業」を実施している自治体は98.6%(68自治体)、未実施は1.4%(1自治体)であった。以上より、児童相談所設置自治体82自治体のうち82.9%(68自治体)が「意見表明等支援事業」を実施していることが明らかになった。
図1−1 児童相談所設置自治体における意見表明等支援事業の実施状況
意見表明等支援員の活動場所
意見表明等支援員の活動場所で最も多かったのは、一時保護所(66件、97.1%) であり、次いで、児童養護施設(56件、82.4%) が高い割合を占めた。
実施率については、一時保護所147カ所のうち、124か所(84.4%)で活動が実施されている。一方で、里親家庭の総数は2,458家庭であり、このうち活動が実施されているのは153家庭(6.0%)にとどまる。
SVRの配置
SVRの配置状況は、「配置している」が35件(60.3%)、「配置していない」が23件(39.7%)であった。SVRは約6割の自治体で配置されている一方、約4割では配置されておらず、配置状況にはばらつきがみられる。
図3−1 意見表明等支援事業における自治体別事業費
運営財源 事業費
意見表明等支援事業を実施する68自治体のうち、事業費に回答した45自治体を対象とする。自治体別事業費の中央値は671.5万円、平均は832.8万円であった。事業費は0円から4,015.8万円まで幅があり、自治体間で大きな差がみられる。金額区分別にみると、1,000万円未満:30自治体(66.7%)、1,000万円以上2,000万円未満:12自治体(26.7%)、2,000万円以上:3自治体(6.7%)となっており、全体の約7割が1,000万円未満の事業で占められている。一方で、少数ではあるが高額事業(2,000万円以上)も存在し、これらが全体の総額を押し上げている可能性がある。
調査結果総括
本調査により、意見表明等支援事業は全国的に急速に普及していることが明らかとなりました。児童相談所設置自治体のうち82.9%(82自治体中68自治体)が事業を実施しており、制度としての導入は全国的に進展しています。
一方で、実施内容や運用体制には自治体間で大きな差がみられました。活動は一時保護所や児童養護施設を中心に展開されている一方で、里親家庭やファミリーホーム等の家庭養護領域においては実装が限定的であり、対象領域に偏りがあることが確認されました。
また、事業の運用においては、財源の制約、人材の確保不足、訪問頻度や実施体制のばらつき、日程調整の困難さなど、複合的な課題が存在しています。特に、支援員やスーパーバイザーの確保、活動範囲の拡大に伴う運営負担の増加は、今後の事業継続・発展に影響を与える要因であると考えられます。
以上より、本事業は制度としての普及段階から、実施内容や運用体制の充実を図る段階へ移行しつつあることが示唆されます。
全国子どもアドボカシー協議会で実施している、「子どもの意見表明等支援(子どもアドボカシー)事業」普及のための取り組み
当協議会では、子どもアドボカシー事業の取り組みが進んでいない地域においても、社会的養護を受けている子どもも、等しく意見表明権を行使できる基盤をつくることを目的として、子どもアドボケイト(意見表明等支援員)を養成する講座や、子どもアドボカシー事業の導入/導入して間もない自治体・民間団体などを対象に、事業の準備や実施に関するご相談にお答えする「子どもアドボカシースタートアップサポート」を実施。また、意見表明等支援(子どもアドボカシー)事業の実践者や関係者向けに、養成・研修のためのテキスト「こどもアドボカシー活動の手引き」を公開しています。
 
【こどもアドボカシー活動の手引き】https://www.child-advocacy.org/activities/15617
【子どもアドボカシースタートアップサポート】https://www.child-advocacy.org/activities/15079
【子どもアドボケイト(意見表明等支援員)養成講座】
基礎講座:https://www.child-advocacy.org/activities/17081
NPO法人全国子どもアドボカシー協議会について
全国子どもアドボカシー協議会は、「子どもの声を大切にし、ともに生き育ちあう社会の実現」を理念に2022年3月に設立し、全国各地の子どもアドボカシー事業に関する事例報告を交えて各地の課題や活動の進捗について意見交換を行う「交流会」の実施や、子どもアドボカシーの最前線の事例や実践を学び、議論する「全国セミナー」を開催するなど、各地の子どもアドボカシーを実践する団体・個人の皆さまと連携しながら活動を進めております。団体内には、社会的養護を経験した理事を含めた「子ども・若者委員会」を設け、1日で子どもアドボカシーのキホンを学ぶ「1dayセミナー」を企画・実施するなど、子ども・若者参画を中心とした「子どもアドボカシー(意見表明等支援)」活動を全国へ拡げております。
 
【組織概要】
組織名:NPO法人全国子どもアドボカシー協議会

役員:理事長 相澤 仁、中村みどり 他理事13名

事業内容:
(1)子ども・若者によるアドボカシー事業
(2) 子どもアドボカシー活動を推進する団体・個人の交流・研鑽事業
(3)独立アドボケイトなど人材養成及びプログラム開発事業
(4) 子どもアドボカシーに関わる調査研究及び提言事業
(5) 子どもアドボカシーに関わる情報提供及び広報事業
(6) その他この法人の目的を達成するために必要な事業

設立: 2022年3月27日

HP:https://www.child-advocacy.org/