鈴廣かまぼこ株式会社(神奈川県小田原市 社長:鈴木智博 以下「鈴廣」)は、鈴廣ヒト臨床試験倫理審査委員会の承認(厚生労働省研究倫理審査委員会報告システム委員会番号23000158、承認番号2025-001)を得て、すり身由来魚肉タンパク質摂取による集中力および知的作業効率に及ぼす影響を明らかにすることを目的としてランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験を実施しました。その結果、すり身由来魚肉タンパク質の摂取により、集中力および知的作業効率の向上を確認しました。これらの研究結果を2026年3月27日に開催された「令和8年 日本水産学会 春季大会」で発表いたしました。(発表題目:「すり身由来魚肉タンパク質摂取による集中力および知的作業効率に及ぼす影響」)
研究の背景と目的
魚肉タンパク質を豊富に含むかまぼこやすり身、魚肉ペプチドは単純な栄養素として消化性必須アミノ酸スコア(DIAAS)が高い,1,2)、という優れた栄養特性を持つことに加えて様々な健康機能性を有しています。これまで弊社魚肉たんぱく研究所では、魚肉タンパク質の健康機能に着目し、血圧上昇抑制作用3)やアスリートのパフォーマンス向上4)などの研究成果を発表してきました。特に、魚肉ペプチドは抗酸化活性の高いジペプチドが含有されておりヒト臨床試験において疲労効果5)が認められています。
身体的な疲労以外に脳疲労も酸化ストレスによって引き起こされることが知られているため、抗酸化活性の高い素材で脳疲労を軽減することで集中力が高まるのではないかと仮説を立てました。そこで本研究では、すり身由来魚肉タンパク質摂取による集中力および知的作業効率に及ぼす影響を明らかにすることを目的としてランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験を実施しました。
 
1) 植木暢彦.魚肉タンパク質と魚肉ペプチドでスポーツに適した体に.アクアネット 25, 27-32, 2022.
2) 植木暢彦.魚肉タンパク質の健康機能性と低・未利用資源の活用.日本調理科学会誌 59, 1-7, 2026.
3) 植木暢彦.相模湾産魚類の水溶性筋肉タンパク質の血圧上昇抑制作用.フードケミカル 376, 41-44, 2016
4) 植木暢彦.第11章 魚タンパク質摂取によるアスリートの運動パフォーマンス向上.渡部終五監修.魚肉タンパク質の技術と市場.シーエムシー出版 105-115, 2025.
5) Sakai H. et al., Effects of fish meat-derived peptides on fatigue. Jpn. Pharmacol. Ther. 48, 1393-1399, 2020.
集中力および知的作業効率の向上を確認
19-29歳(平均24.3歳)の健常な男女19名を対象とし、魚タンパク質源として魚肉ペプチドまたは同カロリーのプラセボ(デキストリン)を経口摂取し、経時的に各指標の変化を比較しました。主観的な体感はVAS(Visual Analog Scale)法で数値化し、知的作業効率は内田クレペリン検査用紙を用いた2つの数字の連続加算による処理数および正答率を指標としました。
 
結果として、魚肉ペプチドの摂取により、集中力および知的作業効率が有意に向上しました。魚肉ペプチド摂取60分後において、プラセボ摂取時と比較して有意に主観的な集中力が高まり(図1)、疲労感が低減しました(図2)。知的作業量は魚肉ペプチド摂取45分後以降において摂取前値よりも有意に増加しました(図3)。また、魚肉ペプチド摂取45および105分後の知的作業量および正答率は、プラセボ摂取時よりも有意に高い値を示しました(図4)。以上の結果から、魚肉ペプチド摂取により計算能力などの知的作業効率が高まることが示唆されました。魚肉ペプチド中に含まれる抗酸化活性の高い成分が脳疲労を軽減し、パフォーマンスの維持・向上に寄与している可能性が考えられます。
 
 
 
 
魚肉ペプチドについて
魚肉ペプチドは、かまぼこの原料と同じ魚のすり身を酵素で分解するというシンプルな製法で作られます。ペプチドとは、タンパク質が分解されてできるもので、アミノ酸がいくつかつながった状態のこと。分解が進んでいるため、通常の食事からタンパク質を摂取するよりも、アミノ酸を素早く、効率的に体内へ取り込めることが特長です。近年の研究では、運動後の疲労回復を助ける効果も認められ4)、日常の健康維持やアクティブなライフスタイルを支える成分として注目されています。さらに今回の研究結果からは、集中力および知的作業効率の向上が示唆され、受験期や試合前の活用にも期待が高まっています。
意義と今後の展開
今回の研究により、すり身由来魚肉タンパク質の新たな可能性が示されました。魚肉は高タンパク質低脂質という特徴を持っていますが、かまぼこやちくわなどの魚肉練り製品の原料となるすり身は、魚肉を水でさらす工程を経ることで、もともと少なかった脂質がさらに除去されるため、水分以外の組成で約95%がタンパク質と非常に高純度なタンパク質源です。本研究の結果は、これまで嗜好品や従来のタンパク質源として親しまれてきた魚肉練り製品が、QOL(生活の質)の向上を目的とした社会実装に適する素材であることを示唆しており、今後の応用展開が期待されます。
■ 鈴廣かまぼこについて
小田原でかまぼこを作り続けて160年。創業以来、小田原かまぼこの伝統を受け継ぎ守り続けています。大切にしてきた職人技を独自研究施設の最先端科学で解明・立証し、さらなる高い品質と技術の伝承・発展を進めています。
現在は魚肉たんぱくの魅力を世に伝えるため「お魚たんぱくで世界を健やかに」というミッションステートメントを掲げ、かまぼこ製造技術を活かした新しい商品づくりと魚肉たんぱく市場の開発に取り組んでいます。
https://www.kamaboko.com/