世界文化社は、日本陸上界を牽引するトップアスリート、田中希実選手による初めての著書『希(ねが)わくばの詩(うた)』(2026年 3月26日 発売) を記念して、2026年3月26日(木)にトーク&書籍お渡し会を、ジュンク堂書店 池袋本店で開催。そのトークイベントの様子をレポートします。
『希(ねが)わくばの詩(うた)』とは
世界陸上までの253日間、トップアスリートの“思考の記録”
世界陸上を経て明らかになった手記の存在。そこに描かれていたのは2025年1月の全国女子駅伝から9月の東京世界陸上までの253日間、自身の内面と対峙し続けたありのままの姿でした。本書に綴られた苦悩や希望。それはアスリートという枠を超え、現代を生きるすべての人々の心に響く、普遍的なメッセージでもあります。 類い希な表現力を持つ彼女が、自らのために書き留めていた「魂の叫び」を、強い覚悟を持って世の中に送り出します。
https://books.sekaibunka.com/book/b10159630.html
田中希実さんトークイベントの内容を一部抜粋
1.このタイミングで、本を出版しようと思ったのは(自ら原稿をまとめたのは)どうしてですか?
世界陸上まで、昨年はかなり多くのレースに出ました。その中で自分の考えを日記のようにスマホのメモ機能に色々書いていて、それが多岐にわたる文章で、気付いたら本1冊分くらいになっていました。これは、むしろ世間に出さない方がいいなと思っていたのですが。 昨年の5月くらいに出版のお話をいただき、その時点では、まだ本のことを考える余裕はなかったのですが、改めて10月にお話をいただき、世界陸上も終わり一段落ついたので、「この機を逃したら、自分の色々と考えたこともなかったことになっちゃうんじゃないかな」と思ったので、まずは本を出してみて考えようと思いました。自分の文章が世間に出ていくというのは、また一つ世間とつながる部分でもあるし、「世間とつながりを持ちたい」という気持ちが元々大きかったのだと思います。
2.気持ちの切り替え方について、書くことは日常や競技のなかでどんな意味を持つのか、教えていただけますか?(参加者からの質問より)
 
小学校3年生になったくらいから毎日日記をつけていて。ずっと継続的に”書く”ことはしてきていたので、”走る”ことと同じくらい、もしかしたら走ることよりもっと早くに、自分から意識的に始めた作業が”書く”ことだったかなと思います。なので、自分の中で走ることより自然な作業で、今も書くことで考えがまとまってきたり、書きながらどんどん言葉が出てきて、「自分はこんな風に感じてたんだ」と自分でも分かっていなかった自分に気づいたりすることがあるので、そういう部分で”気持ちを切り替える”といいますか、自分の中の自分に気づけるように書いています。
 
3.本の中で苦しむ場面が多く描かれています。世界陸上の場面では、「今シーズン何があっても足を止めなかったからこそ味わえる思い」という文がありますが、苦しんでもなお、前に向かって進み続けられるのはどうしてなのでしょう?モチベーションの保ち方は?(参加者からの質問より)
「自分が自分であることをやめたくない」という気持ちが一番大きいのかなと思います。競技を続ける上では、他者や世間とのつながりが、かけがえのないものではあるのですが、その中でも「自分を失ってはいけない」部分は絶対あると思うので。
最近は、試合にモチベーション高くいけることがあまりなく、なので、保てていないに近いです。ここ一年くらい、経験が重なりすぎてきたからか、無意識的な部分なのか、本当にそうなのか分からないですが、「レース前にして負けることが分かってしまっている」という状態が続いています。 「負けたらどうしよう」どころじゃなく、「負けるって分かっていてもいく」というのは本当にモチベーションがすごく難しい。でも今回のポーランドのレース(世界室内)は、帰ったら本を出せるという部分もあったのか、最後まで久しぶりに向き合うことができました。
本の中では、逃避的な思考といいますか、負けることが分かっているから寝るしかないだったり、現実を直視したくないって逃げている場面が多いかなと思います。 でも攻めの姿勢で、自分は最後まで気持ちの面では”戦い抜いた”と思える取り組みは何だろうと考えることによって、自分はやっぱり自分であり続けたいし、負ける自分も含めて考えることによって、また次が見えてくるかなと。目の前のことを考えると憂鬱になりますが、それでも、その先に希望を見出したいから向かっていくしかないのかなと思っています。
装画・橘 春香さんより田中希実さんへ装画の原画をプレゼント
イベントでは、額装された装画の原画を展示。サプライズで橘 春香さんより、田中希実さんへ原画がプレゼントされました。
橘さん(以下、橘):ご出版おめでとうございます。素晴らしい本が世に出て、今日は最高の日ですね。
田中さん(以下、田中):本当に夢みたいで。今、どうしようって思いながらパニック状態でした。橘さんからすごく素敵なコメントもいただいていて。
:田中さんのことを<野生の息吹の女神>と表現したのですが、初めて田中さんを見た時に、人間を超えている神様と、野生的なエネルギーとの両方を持っていると釘付けになりました。小さい頃、純粋に走っていたのんちゃんが大地を踏むと、そこから緑が芽吹いて、お花が咲いて、生きとし生けるものたちが皆、その後ろをぶわーっと嬉々としてついて行く。のんちゃんが走ること自体が、あらゆる命への讃歌だなと著書を拝読して感じました。
田中:ありがとうございます。私の文章は、抽象的だったり、自分でもよく分からないまま書いたりしてる部分があったりするのですが、それを絵という形で伝えてくださって。私自身、心の奥底ではこういう風に走りたいと思っていたのですが、改めて、こういう風に走ろうと思いました。
書籍概要
『希(ねが)わくばの詩(うた)』
著者:田中希実
■発売日:2026年3月26日(木)
■定価 :1,870円(税込)
■判型 :四六判・224ページ
■発行:株式会社世界文化社
https://books.sekaibunka.com/book/b10159630.html
https://amzn.asia/d/0iAGhXC4
著者・田中希実さん「まえがき」より
言葉にできない思いを言葉にしようと躍起になるうちに、言葉にできない感覚の集積である走りは、はるかかなたに逃げ去ってしまっています。私はそろそろ言葉という荷を下ろして、人間という面も剝ぎ、命そのままとなって追いかけようと思うのです。こういった考えから、走りながら書き散らかして来た軌跡を皆さんにお目にかけることを決意した次第です。リアルタイムで書いてきた取り留めのない言葉の前後に、エッセイのような様式の文で、その言葉が生まれた背景や心情などを補足しています。それでも今私が読み返してさえ理解不能な言葉の数々です。
 こんな言葉の連なりで皆さんと繫がれるなどとは到底思いませんが、またいつか、胸を張って、走りで皆さんに何か伝えると言えるようになった暁には、捕まえた走りに言葉を載せて戻って来れたら、これ以上の幸福はありません。  
                         (『希わくばの詩』「まえがき」より)
 
装画・橘 春香さんよりコメント
初めて希実さんの走るお姿をメディアで拝見した時、心に突き刺さる強烈な印象を受けました。まるで<野生の息吹の女神>のよう。それ以来大好きになった希実さんの初のご著書の装画を書かせていただけることになり、夢のようです。
幼い日、はやく本を読みたくて、走って帰っていたのんちゃん。のんちゃんが踏んだ大地からは緑が芽生え、花が咲く。嬉々としてその後を追い、走る動物たち。<野生の息吹の女神>であるのんちゃんは、この美しい青い地球を、走ることを通して守る。のんちゃんが走ることは、あまねく命への讃歌。そんなイメージで装画を描きました。
人間界で走ることは、時としてとても孤独なのですね。でもその赤裸々な感情を『希わくばの詩』として発表してくださったことで、自らの生きる力が体の内側からむくむくと湧いてくる、そんな体験をする読者がたくさん生まれることでしょう。

世界文化社は、日本陸上界を牽引するトップアスリート、田中希実選手による初めての著書『希(ねが)わくばの詩(うた)』(2026年 3月26日 発売) を記念して、2026年3月26日(木)にトーク&書籍お渡し会を、ジュンク堂書店 池袋本店で開催。そのトークイベントの様子をレポートします。

3.本の中で苦しむ場面が多く描かれています。世界陸上の場面では、「今シーズン何があっても足を止めなかったからこそ味わえる思い」という文がありますが、苦しんでもなお、前に向かって進み続けられるのはどうしてなのでしょう?モチベーションの保ち方は?(参加者からの質問より)

私はそろそろ言葉という荷を下ろして、人間という面も剝ぎ、命そのままとなって追いかけようと思うのです。