~点群データ解析による減肉の定量的把握・可視化、および劣化予測モデルの適用可能性を確認~
NEWS RELEASE
2026年3月24日
NTTドコモソリューションズ株式会社
京都府流域下水道事務所
株式会社テムザック
 
 
NTTドコモソリューションズ株式会社(本社 東京都港区、以下、NTTドコモソリューションズ)は、京都府流域下水道事務所(所在地 京都府長岡京市)および株式会社テムザック(本店 京都府京都市、以下、テムザック)と共同で、2025年4月から12月に、京都府内の流域下水道管路を対象とした点検業務の高度化に向けた調査・検証(以下、本検証)を行いました。本検証では、テムザック開発の下水道管内走行用多脚式ロボットにLiDARを搭載して取得した下水道管内データに対して、NTTドコモソリューションズ開発の新設時の管壁形状を推定し、現状の管壁形状と差分解析を行うAI(特許出願中)を適用しました。 その結果、本検証の対象とした下水道管の一部区間において、腐食劣化に伴う減肉の深さおよび範囲の定量的な把握・可視化に成功しました。また、京都府の保有する過去の管路点検データを用い、既存の劣化予測モデルについて下水道分野への適用可能性を分析しました。その結果、劣化が進行しやすい区間や劣化の要因などについて、下水道管理者が経験則として感じていた傾向と一部整合する分析結果が得られました。
下水道の標準耐用年数は50年とされていますが、全国約50万kmに及ぶ下水道管路のうち、2022年時点で約7%が耐用年数を超えており、2043年にその割合は約42%になる見込みです。※1これらの下水道管路の点検・更新が自治体の財政と技術面での課題となっています。また、近年、下水道の老朽化に起因する道路陥没事故が相次いでいることを受け、国土交通省は下水道点検のガイドライン改正を進め、点検・調査の対象や頻度の増加、定量的な評価項目の追加等を検討しています。 このガイドライン改正により点検・調査の対象や頻度が増加する中で、下水道管理者には多くの管路について修繕等優先順位を適切に判断することが求められる状況となっています。しかし、従来の目視や画像による点検では、腐食の有無やひび割れなどの表面状態は確認できる一方、腐食の深さや範囲を定量的に把握できないため、修繕の緊急性や優先順位の判断が困難でした。
こうした背景から、NTTドコモソリューションズと、京都府流域下水道事務所、テムザックは本検証を実施しました。
 
【本検証の概要と成果】
■実施時期
2025年4月~2025年12月
 
■目的
京都府内の流域下水道を対象とした減肉の定量評価および管路の劣化予測
 
■3者の役割
NTTドコモソリューションズ:AIやデータ分析技術を用いて減肉の定量把握を実現する技術の検討、蓄積された点検データを用いた劣化予測や劣化要因分析の実施、本検証の企画・実行
京都府流域下水道事務所:広域的な幹線管路を管理により蓄積された知見を活かした対象管路の選定、検証フィールド・蓄積された点検データの提供、本検証の成果評価
テムザック:高い走破性を持つ多脚式ロボット「SPD-X」の開発実績を活かした下水道管渠内でのデータ収集、運用に向けた課題の抽出
■実施内容と成果
1. 下水道管の減肉定量把握
下水道管路の劣化状態把握で特に重要となるのが、腐食による「減肉」の早期把握です。下水道管内では硫化水素などにより、コンクリートが化学的に反応・劣化して管壁の厚みが失われる「減肉」が起こります。この現象は外観からは把握しづらく、劣化部分の深さや範囲の把握を誤ると、管の破損や道路陥没といった重大事故につながる恐れがあります。このような背景から、本検証では下水道管内の点群データから減肉の定量把握が可能か確認を行いました。 具体的には、まず多脚式ロボットに取り付けたLiDARにより管内の点群データを取得しました。取得したデータをもとに、新設時の管壁形状をAIにより推定するとともに、差分解析を行うNTTドコモソリューションズ独自技術(特許出願中)を適用しました。その結果、新設時と現状の差分を算出し、差分を腐食に伴う減肉と定義することで、本検証の対象とした下水道管の一部区間において、減肉の深さおよび範囲の定量的な把握に成功しました。
 
<主な成果>
・点群データから新設時の管壁形状を推定、差分解析により新設時と現状との差分を確認
・誤差1cm程度の精度で形状推定が可能なことを確認
・減肉の深さ・範囲を定量的に把握可能であることを確認
<将来的に期待される実業務での活用例>
・減肉量・管厚の定量測定作業の効率化
・減肉の深さ・範囲の定量把握による、修繕箇所判断の高度化
・減肉進行のモニタリングと進行度合いをふまえた予防保全の実施
図1 減肉定量把握の概要
2. 下水道管路への劣化予測モデルの適用
京都府が保有する過去の管路点検データをもとに、NTTドコモソリューションズが道路・橋梁分野で展開している混合マルコフ劣化予測ハザードモデル※2の下水道分野への適用に向けた分析を行いました。具体的には劣化が進みやすい区間の推定、期待寿命の算出、劣化に影響を与えると考えられる要因の分析を行い、周辺にカーブが存在する管路の期待寿命が短い傾向にあることなど、下水道管理者が経験則として感じていた傾向と一部整合する分析結果が得られました。
 
<主な成果>
・過去点検データより、検証フィールドにおいて劣化が進行しやすい区間を推定
・期待寿命の算出により、将来的な健全度の変化傾向を推定
・管路のカーブ※3が劣化に影響しうることを、データ分析により示唆
<将来的に期待される実業務での活用例>
・劣化速度の傾向をふまえた点検箇所の優先度付け
・将来的な劣化予測に基づく修繕・更新計画の最適化
・長期的な維持管理戦略の高度化
 
図2 劣化予測結果(管路のカーブからの距離と期待寿命の関係性)
本検証では、多脚式ロボットに搭載したLiDARにより取得した点群データを用いた減肉の定量的な把握と、過去の管路点検データに基づく劣化予測モデルを用いたデータ分析を実施しました。これらの結果の妥当性や適用範囲を評価するためには、今後さらなる検証が必要となります。
NTTドコモソリューションズは本検証で得られた知見をもとに検証を継続し、NTTグループをはじめとするパートナーと連携して自治体や下水道点検に携わる事業者への展開にむけて取り組みます。
 
 
※1 出典:国土交通省HP 下水道の維持管理
※2 「混合マルコフ劣化予測ハザードモデル」は、大阪大学大学院工学研究科の貝戸清之教授らが階層ベイズ推計手法をもとに開発した、社会インフラの健全度の推移を確率論的手法を用いて推定するモデルです。NTTドコモソリューションズと大阪大学大学院工学研究科は、共同研究として「混合マルコフ劣化予測ハザードモデル」の社会インフラ維持管理への活用を検討しており、本検証では下水道管の特性を考慮した劣化予測を行っています。
※3 本分析では、管路の進行方向が大きく変わる箇所を「カーブ」と定義し、具体的には隣接する管路区間同士のなす角が150度未満となる箇所をカーブと定義しています。