親しみやすい料理をおいしく、おしゃれな店内で──オーナー小野大樹氏のロマンと野望
大泉と東久留米の「POT」、吉祥寺の「sinensis」で株式会社5Cの小野代表が得た「クラシック中華」の成功則を、若者が集う街・池袋に持ち込んだのが、3月8日にオープンした「文山包」です。手包み小籠包を目玉に、酢豚、角煮、海老マヨ、麻婆豆腐、よだれ鶏といった親しみやすい中華メニューを、しゃれた空間で提供します。お店に込めた小野氏の思いと戦略、そして目標について教えてもらいました。【文:高岡洋詞/写真:山口ベン】
 池袋駅の東口から徒歩5分ほど。駅前の喧騒を抜け、山手線の線路に沿って駅前公園と歓楽街にはさまれた通りを歩いていくと、豊島区の市街地再開発事業として話題の高層オフィスビル(2028年完成予定)の建設現場の向かいに、シックなたたずまいの文山包(ぶんさんぽう)が現れます。
 
 オープンは2026年3月7日。台湾を代表する銘茶のひとつと言われる文山包種に由来する名前を持つ中華レストランです。小野大樹代表率いる株式会社5C(社名はChinese=中華、Craft=職人、Creative=創造、Culture=文化、Change=変化の頭文字から)にとっては、2024年12月、吉祥寺にオープンしたsinensis(シネンシス)に次ぐ通算4軒めの店舗になります。
 
「これまでの店で一番広くて、投資金額も一番デカくて、街の規模も最大。毎回、背水の陣の勝負ですけど、今回も……って感じですね」とはりきる中華のイノベーター小野氏に、お店に込めた思いと戦略を聞きました。
落ち着いた店内。奥に進むにつれ照明が暖かくなる
少し奥まったグループ向けの半個室的な席もある
ターゲットは、ずばり若者
 
 sinensisを成功させ(小野氏いわく「吉祥寺でたぶん一番流行っている中華」)、その勢いを駆っての池袋進出です。「街のサイズが大きいところで勝負する、というのが自分の中では絶対だったので、池袋、新宿、渋谷、立川あたりで物件を探しました。最終的に池袋に出店することになったのはたまたまですけど、僕にとっては吉祥寺と同じく学生時代によく遊んでいた街なので、抵抗はほとんどなかったですね」
 
 店頭に鎮座した強力な蒸し器で提供する作りたての小籠包をメインに、海老マヨ、角煮、麻婆豆腐、酢豚、よだれ鶏といった、POTやsinensisと同様の「クラシック中華」を提供。落ち着いた内装、調度もsinensisを思い出させますが、文山包のターゲットはずばり若者なのだとか。
 
「サンシャイン通りにアニメイト、ハレザ池袋もあって、池袋は若い子が多い街です。彼らに中華を楽しんでもらいたいんですね。若者が行く外食というとやっぱりピザ、パスタ、パンケーキ……みたいな感じで、中華はまず上位には来ないですよね。大学生ぐらいの子たちが “今日、中華食べに行こうよ” と言う世界観を作っていきたいんです」
 
 小野氏はsinensisの開店時にお話をうかがったときも、若者が中華に入ってこないことを危惧していました。その現状へのチャレンジとして、親しみやすいメニューをちょっぴり隠れ家感のあるおしゃれな空間で提供する、という文山包のアイデアを生み出したと言えるでしょう。
前菜盛り合わせ(左上から反時計回りにうふまよ、蜜汁チャーシュー、塩キクラゲのレモン和え、よだれ鶏)
中華の入り口になりたい
 
「若い子が中華に来て、いきなりツブ貝のアオサ炒めやアオリイカの金針菜炒めは食べないですよね(笑)。やっぱり親しみのあるものを選ぶと思うんです。餃子、酢豚、角煮、海老マヨ、海老チリ。そういったわかりやすいものをちゃんとおいしく提供するということをやっていかないと、裾野が広がらないなと思って。うちをリピートしてくれて、次はよだれ鶏を食べてみようとか、香港式炒飯や激辛塩煮込みを食べてみようとか、ネクストステップに進んでもらえればうれしいですね。中華の入り口になりたいんです」
 
 そう聞くと、おいしさと楽しさで若者たちの人気を集める小籠包をフィーチャーした業態にも納得がいきます。豚肉を始めとした季節の具材を使い、オーダーが入ってから手包みして蒸し上げ、アツアツのできたてを提供しています。
手包小籠包 -文山包仕立て-
実は面倒な小籠包、でもやるんだよ
 
「実を言うと小籠包ってすごく面倒なんですよ。包むのは難しいし、皮が破けたら商品にならないし、ゼラチンがうまくいかないとスープが出ない。そのわりに単価は安いので、 “点心はお金にならない” というのが定説なんです。でも、その難しさを乗り越えていくことが会社の強みになると思って、 “いや、やるんだよ” と言いながらやっています(笑)。ジョーズ シャンハイ ニューヨークの元料理長が友達にいるので、そこからもらったレシピをもとに、オペレーションを工夫して価格を抑えました。ジョーズ シャンハイで食べたら1万円ぐらいするけれど、うちなら5000円で食べられる。そこにバリューを感じてもらえたらうれしいですね」
海老のマヨネーズソース
香港式角煮
上海式黒酢酢豚
毛沢東唐揚げ
よだれ牛肉ご飯
山椒チーズケーキ
 そんな小籠包とクラシック中華を、若者だけでなく大人も快適に過ごせる店内で、リーズナブルな「池袋価格」でいただく。「ふだんチェーン店に行っている学生さんたちがここに切り替えると、ちょっと特別な気分になってくれると思います。僕が学生時代に女の子を誘うならこういうところに行きたいな、みたいな感じを再現してもいますね」。sinensisのときの「こんな中華料理屋があったらいいのにな」もそうですが、自分が使いたいから作る、というのは、言わばものづくりの基本でしょう。
 
「いろんな会社を経営しているので、いろんなターゲットに向けていろんな事業をやっていく中で、今回は 若者の章” ですね」と言う小野氏。近い将来にはまた別の業態に挑戦する予定もあるそうですが、「どんな店をやるときにも、“これ、おいしいよね” という価値観には信念を持って、一切ぶらさないつもりです」と頼もしく断言してくれました。
小野オーナーとスタッフのみなさん
 
●文山包(ぶんさんぽう)
住所 東京都豊島区東池袋1-35-8 1F
電話番号 070-6523-9845
営業時間  11:30-15:00(L.O. 14:00)/17:30-22:30(L.O. 料理21:30 ドリンク22:30)
年末年始休
公式SNS https://www.instagram.com/bunzanpou_ikb/
食べログ https://tabelog.com/tokyo/A1305/A130501/13319029/

大泉と東久留米の「POT」、吉祥寺の「sinensis」で株式会社5Cの小野代表が得た「クラシック中華」の成功則を、若者が集う街・池袋に持ち込んだのが、3月8日にオープンした「文山包」です。手包み小籠包を目玉に、酢豚、角煮、海老マヨ、麻婆豆腐、よだれ鶏といった親しみやすい中華メニューを、しゃれた空間で提供します。お店に込めた小野氏の思いと戦略、そして目標について教えてもらいました。【文:高岡洋詞/写真:山口ベン】

「これまでの店で一番広くて、投資金額も一番デカくて、街の規模も最大。毎回、背水の陣の勝負ですけど、今回も……って感じですね」

「街のサイズが大きいところで勝負する、というのが自分の中では絶対だったので、池袋、新宿、渋谷、立川あたりで物件を探しました。最終的に池袋に出店することになったのはたまたまですけど、僕にとっては吉祥寺と同じく学生時代によく遊んでいた街なので、抵抗はほとんどなかったですね」

「サンシャイン通りにアニメイト、ハレザ池袋もあって、池袋は若い子が多い街です。彼らに中華を楽しんでもらいたいんですね。若者が行く外食というとやっぱりピザ、パスタ、パンケーキ……みたいな感じで、中華はまず上位には来ないですよね。大学生ぐらいの子たちが “今日、中華食べに行こうよ” と言う世界観を作っていきたいんです」

「若い子が中華に来て、いきなりツブ貝のアオサ炒めやアオリイカの金針菜炒めは食べないですよね(笑)。やっぱり親しみのあるものを選ぶと思うんです。餃子、酢豚、角煮、海老マヨ、海老チリ。そういったわかりやすいものをちゃんとおいしく提供するということをやっていかないと、裾野が広がらないなと思って。うちをリピートしてくれて、次はよだれ鶏を食べてみようとか、香港式炒飯や激辛塩煮込みを食べてみようとか、ネクストステップに進んでもらえればうれしいですね。中華の入り口になりたいんです」

「実を言うと小籠包ってすごく面倒なんですよ。包むのは難しいし、皮が破けたら商品にならないし、ゼラチンがうまくいかないとスープが出ない。そのわりに単価は安いので、 “点心はお金にならない” というのが定説なんです。でも、その難しさを乗り越えていくことが会社の強みになると思って、 “いや、やるんだよ” と言いながらやっています(笑)。ジョーズ シャンハイ ニューヨークの元料理長が友達にいるので、そこからもらったレシピをもとに、オペレーションを工夫して価格を抑えました。ジョーズ シャンハイで食べたら1万円ぐらいするけれど、うちなら5000円で食べられる。そこにバリューを感じてもらえたらうれしいですね」

「ふだんチェーン店に行っている学生さんたちがここに切り替えると、ちょっと特別な気分になってくれると思います。僕が学生時代に女の子を誘うならこういうところに行きたいな、みたいな感じを再現してもいますね」