埼玉県茶業研究所では、デジタル技術の開発と実証に取り組んでいます。 この度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(以下、農研機構)農業環境研究部門との共同研究により、茶園の最低温度をピンポイントで予測し(*)、その予測結果を多くの県内茶生産者が日常的に使用しているLINE TMアプリで確認でき るシステムを独自開発しました。生産者への導入を加速し、適切な防霜対策と収量や品質の安定に繋げます。
* 茶園の最低温度予測 気温の低下により新芽が凍結し、組織が損傷を受けることを「凍霜害」(とうそうがい)と言い ます。凍霜害防止のため防霜ファン(霜害対策用送風機)で冷気を攪拌しますが、このファンの運 用に資するよう茶園の勾配などを踏まえた精緻な気温予測を行うものです。
農研機構は、茶園の「局所的な冷え込み」をとらえるため、数メートル四方の細かさで最低温度を予測する手法を開発し、埼玉県茶業研究所は、この手法をLINE(TM)アプリ上で利用できるシステムとして実装しました。この技術により、天気予報に基づく従来の画一的な栽培管理とは異なり、各々の生産者が自分の圃場の最低温度に合わせて最適な管理が可能となります。
既存の技術を使用して数メートル四方の細かさで最低温度を予測するためには、夜間の放射冷却の強さを現地圃場で実測する必要があり、生産者が使用するには大きなハードルがありました。本技術では、配信されている気象データ(農研機構メッシュ農業気象データ)のみから放射冷却の強さを推定可能とし、生産者が日常的に利用している LINE TMアプリの操作のみで最低温度の予測を可能としました。
茶園は地形や周囲の環境により、一般的な気温と大きく異なる場合があります。この違いを反映し、茶園で起こりやすい「冷え込み」に特化して開発したものです。そのため、本技術は気象業務法に基づく気象予報とは異なります。
特に懸念される農業気象災害「凍霜害」(とうそうがい)を予測し、防霜ファン(霜害対策用送風機)の温度設定の確認や電源の確認を事前に徹底することで、現場対応の遅れを防ぎます。また、本手法は標高データとメッシュ農業気象データが提供されている日本国内どこでも適用可能であるため、他の茶産地や果樹産地への拡大が期待 されます。
当面は埼玉県内の茶生産者限定で実証を行います。該当者は申請不要で、アカウントを友だち登録すると利用できます。登録方法は埼玉県茶業研究所までお問合せくだ さい。
・システムの開発・運用に関すること:埼玉県農林部茶業研究所
・最低温度予測技術の開発に関すること:農研機構・農業環境研究部門
研究担当 気候変動適応策研究領域 研究員