世界30ヵ国で企業のイノベーションと成長を加速させるデジタルエンジニアリングコンサルティングを展開するAKKODiSの日本法人で、現場変革の力とデジタル技術により企業の生産性向上とAIトランスフォーメーションの実現を支援するAKKODiSコンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:川崎 健一郎、「以下、AKKODiS」)は、2月4日、「民間宇宙ビジネスの新時代 ― 宇宙ビジネスと法制度・小型SAR衛星・民間ロケットから探る産業成長戦略」と題したイベントを開催しました。
宇宙ビジネスと法制度、小型SAR衛星開発、民間ロケット開発という異なる立場の専門家が登壇し、法制度・衛星データ・ハードウェアという三つの軸から、宇宙ビジネスの“現在地”を俯瞰し、成長を阻む構造課題を共有するとともに、「日本の宇宙ビジネスを持続的に成長させるため」の戦略的視座を考察しました。
 
イベント冒頭ではAKKODiS People Development本部キャリア開発推進部 マスターインストラクターであり、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)の部品技術ロードマップ各委員を務める谷本 琢磨(工学博士)より、国内外の宇宙産業の概要と動きについて説明。その後GVA法律事務所弁護士の本間由 美子氏、インターステラテクノロジズ株式会社代表取締役の中山 聡氏、株式会社QPS研究所代表取締役社長 CEOの大西 俊輔氏の3名の講演が行われました。
■宇宙ビジネスと法制度
“宇宙は特別ではない”時代へ ― 日本の宇宙ビジネス法制度の現在地
本間 由美子氏(弁護士法人GVA法律事務所 弁護士)
本間氏は、宇宙産業の急拡大に対し、法制度がどのように進化してきたのかを解説しました。
一般的に「宇宙法」という呼称が使用されますが、宇宙活動に関係する国際条約・国内法・行政運用を含む総称であり、法律上では「宇宙」の定義も明確には定められていません。もともと宇宙開発は国家主導の活動を前提に制度設計されてきました。そのため、現在のように民間企業中心の宇宙活動には適応していません。また、国連の宇宙関連条約は国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)において全会一致の合意が原則となっており、新たな条約策定は困難な状況にあります。 そうした状況下で、近年は法的拘束力が限定的な「ソフトロー」が活用されています。宇宙条約の原則として、宇宙の平和利用や活動の自由、国家が民間活動について国際責任を負う点が示され、これを受け各国は国内法整備を進めています。

日本でも宇宙基本法をはじめ、宇宙活動法や宇宙資源法など、民間の宇宙開発を前提とした法整備が段階的に整備されてきています。宇宙活動法の見直し方針としては、人工衛星中心の制度から、宇宙輸送全体を対象とする制度への転換にあります。活動の多様化に合わせて規制対象や基準を明確化するとともに、有人飛行や再使用ロケットは安全確保を前提に段階的に対応し、民間事業者が参入しやすい制度へ更新する方針です。
 
 
「約50年間新たな宇宙条約が制定されていないなか、日本は先進的な法整備を通じて国際的な規範形成に関与しており、宇宙ビジネスにおいてはルールを理解するだけでなく、ルールメイキングに主体的に関わることが期待される分野です。」と、本間氏は講演を締めくくりました。
■民間ロケット
自動車産業との連携で加速する 民間ロケット × 通信衛星の垂直統合ビジネス
中山 聡氏(インターステラテクノロジズ株式会社 代表取締役 President)
中山氏は、インターステラテクノロジズ株式会社(以下、IST)が2025年1月に発表したトヨタグループのウーブン・バイ・トヨタ株式会社との資本業務提携や同年8月にトヨタ自動車も含めた3社でのモノづくりにおける業務提携を締結したことに触れ、自動車産業のアセットを活用することで、ロケットを一点モノの生産から、高頻度打上げに耐えうる工業製品へと構造変革すべく挑戦していることを語りました。
 
既に、開発の現場ではトヨタ式「カイゼン」が活かされ、リードタイム短縮や品質の安定化に向けた手応えを感じています。異業種連携により、従来の宇宙産業の常識を見直し、開発スピードと競争力を高めています。
中山氏は「量産思想と工程最適化によって、ロケットも製造業の延長線上に置くことができる」と、強調しました。
 
事業面では、小型衛星専用の宇宙輸送サービスを提供する2段式ロケット「ZERO」の初号機に7機の民間衛星の搭載が決定しました。海外顧客も含まれていますが、グローバル展開に対応できる体制を整えているのが特長です。また、ZEROを打ち上げる発射場LC1は、北海道大樹町の設備の上に、ISTが打上げに必要な設備を整備しており、地域と一体となった宇宙輸送基盤の構築を目指しています。

中山氏は「ロケット開発の要は、設計を自社で握ること」だと説明しました。 製造などの一部工程は外注しても、設計を手放さないことで改良や判断を自ら行うことができ、低コスト化や打上げ高頻度化といったロケットの競争力強化につながると語ります。約250名のエンジニアが初号機の打上げに集中し、個人最適ではなく全体を重視する文化が育まれていると言います。また、設計責任を自社が担うことでサプライヤーと対等な技術議論を行っており、脆弱な日本のサプライチェーンを政府支援や自動車産業との連携を通じて強化していく考えが示されました。
 
■小型SAR衛星
九州発・宇宙ビジネスの現在 ― QPS研究所が描く持続可能な成長戦略
大西 俊輔氏(株式会社QPS研究所 代表取締役社長 CEO)
リモートで講演をされた大西氏は、小型SAR衛星「QPS-SAR」による社会実装の最前線について紹介しました。
SAR衛星は観測に電波を用いるため、昼夜・天候を問わず地表を観測することが可能です。同社は独自の展開式大型アンテナ(特許取得)により、高精細に観測できる小型のSAR衛星の開発に成功し、2019年に初号機を打ち上げました。2028年5月までに衛星24基、そして最終的には36基による衛星コンステレーションを構築し、ほぼ世界中を準リアルタイムで観測することを目指しています。
 
 
データ活用面では、衛星の基数を増やしながら、これまで官公庁向けの提供が中心だったSAR衛星データを、今後は海外や民間市場へも広げ、本格展開していく方針です。防災、インフラ監視、地盤変動検知など応用分野は拡大していますが、大西氏は「データから価値を抽出できる人財と基盤が不足している」と指摘します。重要なのは「早くデータを届け、ユーザーが欲しい情報に加工すること」であり、「民間のパートナーと連携し、ユーザー視点での価値提供を重視している」と説明しました。

また、SARデータは他のデータと組み合わせることで、さらなる付加価値を生み出すことができると同社では考えており、地上IoTなどと組み合わせたソリューション展開を進めています。台湾の台風被害や国内の水害対策など、防災・インフラ分野での実証を通じ、需要を着実に拡大し、衛星データを社会インフラとして定着させていく考えが示されました。
 
 
同社では宇宙分野未経験者も積極的に受け入れ、衛星設計・製造・運用・データ提供までを一貫して経験できる環境を強みとしています。こうした実践の場を通じて人財を育成し、「次世代や子どもたちにも宇宙産業の可能性を伝えながら、九州発のイノベーションとして日本の宇宙産業発展に貢献していきたい」と大西氏は講演を締めくくりました。
■パネルディスカッション
最後のパネルディスカッションでは、宇宙ビジネスへの民間参入の拡大と産業基盤形成について活発な議論が交わされました。
民間企業参入による新たな宇宙市場の広がり
前半の法制度に関する講演で示された通り、宇宙活動法をはじめとするルール整備が進んだことで、民間企業が責任を持って事業に取り組める環境が整いつつあります。制度整備は単なる規制ではなく、参入障壁を下げ、企業が挑戦しやすくなるための基盤であるとの認識が共有されました。
民間企業の参入により、より新たな技術へ挑戦でき、スピード感をもって開発が進められるようになっており「今こそ、スタートアップをうまく使ってほしい」と、インターステラテクノロジズの中山氏から熱いメッセージが発信されました。
 
宇宙データの活用とインフラの実現
QPS研究所の大西氏は、「SARの画像は、ある時点・ある地点の状況を捉えることはできるが、そのデータをユーザーが本当に求めている情報とどう結びつけるかが、今後の大きな課題」と指摘しました。現時点では、データ価値の整理は、まだ発展段階にあります。そのため同社では、ユーザー視点での解釈や活用のために、分野ごとの知見を持つパートナー企業と連携しながら、データの意味づけと社会実装を進めています。
また、法務の観点からは、衛星データ活用におけるビジネス環境について言及がありました。これまでデータ提供は、無償利用が前提となるケースが多く見られましたが、今後は政府によるデータの買い取りや企業同士の取引を前提としたビジネスモデルの確立が重要という見解が示されました。
 
宇宙産業を支える人財に求めること
衛星事業に携わる人財においては、学生時代に専門性を極め、この分野は誰にも負けないという軸を持っていることが大事である、という大西氏の話に中山氏も共感しました。それに加え、中山氏は「私の場合、“ロケットが好き”という気持ちは、技術に対する愛着ではなく、チームでまとめ上げてお客様へサービスを届ける、ということがやりがいになっている。エンジニアは目の前のモノづくりに没頭するのではなく、最終的にサービスを届けるお客様を見るという視点をもつことが必要」と、共に働く人財へのこだわりを語りました。
 
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会場参加とオンライン参加を合わせ約130名と、宇宙ビジネスに対する興味関心の高さをうかがわせるイベントとなりました。
会場やオンライン参加者からも多くの質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。