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山梨県(知事:長崎幸太郎)は、火山防災ビジネスの創出、活性化を図り、火山を学ぶ人たちが活躍できるフィールドの拡充を目指し、日本初となる火山防災に特化したビジネスコンテスト『やまなし火山防災イノベーションピッチコンテスト』を実施し、採択企業に対してアセット(知見・フィールド)と活動資金の両面からサポート。その成果報告会を令和8年3月10日、新東京ビル(東京都千代田区)で開催しました。 |
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報告会では、サポートを受けた企業5社が支援した研究員と共に実証成果を発表しました。また、火山防災の研究者や昨年度採択され本年度も火山防災対策事業を進める企業、そして来年度設置予定の防災庁準備室職員によるトークセッションも開催。会場・オンラインを合わせ約70名が参加し、富士山を主なフィールドとした最新の実証結果や、今後の火山防災を含めた官民学によるトークセッションに熱心に耳を傾けました。 |
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実証成果を発表した企業の方々、伴走支援した富士山科学研究所の研究員、出席したゲスト |
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■やまなし火山防災イノベーションピッチコンテストとは |
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令和5年度の活動火山対策特別措置法の改正に伴い、国において火山防災の一元的な推進が開始されました。山梨県はこれを産業創出の機会のひとつと捉え、富士山火山防災に関する諸課題を民間企業との共創によって解決する取り組みを始めました。火山活動の観測、火山災害における住民や登山者への情報伝達、地域における火山防災マインドの醸成など、様々な課題解決にビジネスとして取り組みたい事業者に対して、山梨県富士山科学研究所(山梨県富士吉田市 所長:藤井敏嗣 東京大学名誉教授)の持つアセット(知見・フィールド)と活動資金を提供するものです。令和7年6月13日に開催したコンテストで5社を採択しました。 |
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■採択企業5社が実証成果を発表 |
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(1)株式会社RtoS 「VTOL機を活用した火山遠隔モニタリング」 |
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(本社:山梨県南巨摩郡身延町、代表者:川村 剛、URL:https://www.robot-to-society.com/ja/) |
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高標高・強風という富士山ならではの条件下で、エンジン型無人VTOL機(垂直離着陸機)がどこまで“現場で使えるか”を探る実証が行われました。発表では、上昇約12分で標高1,800mに到達、約5km²の撮影により、離れた安全地点から高精細映像をほぼリアルタイムで取得できたことが示されました。通信はLTEで概ね良好。一方で、上空の気流・風速や空気密度が挙動に与える影響、処理負荷・遅延など運用面の課題も率直に共有されました。 |
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研究員は、徹底した現場検証の姿勢を評価し、今後の全国的なフィールド展開に期待を示しました。 |
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株式会社RtoS 川村剛氏 |
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開発をサポートした富士山科学研究所 西澤達治研究員 |
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(2)株式会社ME-Lab Japan 「衛星コンステレーション時代を見据えたマルチバンドSAR検証」 |
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(本社:東京都港区、代表取締役:坂内 匠、URL:https://jp.melab.ai/) |
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衛星SARのL/C/Xバンドを比較し、季節・環境変化に強いLバンド、観測頻度の高いXバンドなど、それぞれの特性を整理。複数バンドを統合する“ピクセル単位時系列解析”を進め、火山体変動監視の精度向上を実証しました。 成果は欧州宇宙機関(ESA)の国際学会「FRINGE 2026」で発表予定であり、火山防災分野における衛星データ活用の高度化が期待されます。 |
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研究員は、火山でのSAR適用の難しさに触れつつ、Lバンドを中核に状況に応じてC・Xバンドを使い分ける実務的な運用が重要であると示し、ダッシュボード化やAPI化による自治体・インフラ事業者の意思決定支援への発展にも期待を示しました。 |
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株式会社ME-Lab Japan 坂内匠氏 |
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開発をサポートした富士山科学研究所 本多亮主任研究員(左) |
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(3)株式会社ユニパック 「富士山噴火から命と経済を守る 火山灰対策フィルター」 |
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(本社:埼玉県川口市、代表取締役:松江昭彦、URL:https://www.unipac.co.jp/) |
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“詰まる・落ちる・止まる”をどう抑えるか-。富士山火山灰を用いた模擬降灰試験では、捕集率98.7%、連続72時間で90Pa以下の圧力損失維持、風量低下は約1割というデータが示され、従来課題だった早期目詰まりに対して耐久性と通気の両立が確認されました。結果を踏まえ、病院・発電所・データセンター・変電所など重要インフラでの採用を想定し、富士山向けの「山梨モデル」として仕様化を進める方針が示されました。 |
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研究員は、火山灰の性状が地域によって異なる点を踏まえ、地域差に応じたカスタマイズが鍵であることを指摘し、首都圏を含む広域への展開可能性を指摘しました。 |
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株式会社ユニパック久松江昭彦氏 |
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開発をサポートした富士山科学研究所 佐藤明夫研究員(左) |
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(4)カディンチェ株式会社 「富士山3Dシミュレータ」 |
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(本社:東京都渋谷区、代表取締役:青木崇行、URL:https://www.kadinche.com/) |
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“見たい場所を、見たい視点で”を合言葉に、3D地形データ×シミュレーションの統合に挑んだ経過が丁寧に報告されました。噴火口の任意設定、自由視点での溶岩流・降灰の可視化を実装する一方、シミュレーションデータと地形データの時空間整合に苦労した点も率直に共有しました。防災教育・訓練での有効性が高く、ハザードマップの電子化や他火山への展開にも道が開けると結びました。 |
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研究員は、シミュレーションデータと3D地形の時空間整合を丁寧に詰めた点を評価し、富士山特有の現象を住民や行政が“見える形”で共有できる実践的なツールとして大きく前進したと述べました。 |
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カディンチェ株式会社 青木崇行氏(中央) |
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開発をサポートした富士山科学研究所 秋葉裕里研究員 |
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(5)株式会社はんぽさき 「チームで使う共有地図 LivMap」 |
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(本社:東京都港区、取締役社長:小林俊仁、URL:https://www.hampo.co/) |
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現場と本部を同じ地図の上で結ぶ運用を実証。誰が・どこで・何をしているかをリアルタイム共有し、無線・電話に頼らない連携を可能にしました。安価な価格設置、かつ災害時にのみ課金される休眠アカウント、PC版や組織横断の統合など、実装に必要な条件を揃えています。今後は重要更新のPUSH通知や“日常使いの浸透で、有事の操作定着を図ると説明がありました。 |
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研究部長は、火山・富士山の要素をアプリに組み込んだことで、登山者管理から救急・消防の動態把握まで、現場の課題を一枚の地図で統合できる点を評価し、有事に強い運用基盤として実効性が高いと述べました。 |
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株式会社はんぽさき 小林俊仁氏 |
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開発をサポートした富士山科学研究所 吉本充宏研究部長(中央) |
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5社による成果報告が一巡すると、会場全体にはそれぞれの実証の手触りが残り、質疑のたびに専門的視点が交錯する熱気が続いていました。企業側が語った現場での苦労や手応えに対し、研究員が技術的補足を加え、会場に参加した行政職員からも実務での活用を見据えた質問が飛び交うなど、富士山をめぐる火山防災の現在地が多層的に浮かび上がりました |
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■火山防災の将来像を深掘りするトークセッション |
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こうした流れを受けて、続くトークセッションには三つの立場-国・企業・研究所-の代表者が登壇しました。まず、国の立場からは 内閣官房防災庁設置準備室/内閣府政策統括官(防災担当)付アドバイザー・山田剛士氏 が登壇し、現在進む防災庁設置の議論や事前防災を軸とした国の方向性について紹介しました。 |
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企業側からは、火山防災研修ツーリズムに取り組む株式会社竹中工務店 レジリエンスソリューション推進室上席専任部長・五十嵐信哉氏が登壇し、企業が実際にBCPや事業継続上どのような課題と向き合っているのか、現場視点から語りました。 |
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そして研究サイドからは、富士山火山防災の旗振り役である富士山科学研究所 吉本充宏研究部長が加わり、産学官の連携がどのように技術開発と人材育成に結びつくのか、研究所としての視点を提示しました。 |
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これら三者の議論を束ねるモデレーターとして、昨年度に引き続き 有限責任監査法人トーマツ・大隈裕文氏が進行役を務め、会場の関心が高まる中で、火山防災の将来像を多角的に掘り下げていくセッションが始まりました。 |
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共創による技術開発の進展 |
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まず、五十嵐専任部長が、「火山は極めて高度な専門性を要する分野であり、企業単独では到達しにくい知見を研究所が補完してくれることで、実装の速度と精度が確実に上がる」と述べ、産学官の協働によって技術開発が大きく前進した手応えを語りました。 |
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吉本部長は、「研究者側もビジネス視点を取り込み、成果を社会に届ける“実装志向”が必要である」とし、技術共同開発にあたっては、「役割分担・知財・データ連携といった“連携の設計”は早期に取り決めることが重要」と指摘しました。 |
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また、山田アドバイザーは、「国としても事前防災を柱とし、研究開発・人材育成・情報連携を束ねる仕組みづくりを進めていく」と今後の政策方向を示しました。 |
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火山防災を支える人材育成の重要性 |
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議論は人材育成にも広がり、山田アドバイザーが「防災庁の議論でも“事前防災と人材育成”は中心テーマであり、教育と研修をつなげて実務へ導く仕組みが重要だ」と述べ、国の視点から体系的な育成が必要であることを示しました。 |
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五十嵐専任部長も、「企業がBCPを具体化する上で、清掃体験やフィールドワークなど身体性を伴う学びが効果的であり、研修を通じて“現場で使える力”を養う必要がある」と述べ、企業内での教育の重要性を強調しました。 |
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さらに、吉本部長は、「研究所・企業・教育機関が連携し、学齢期から実務者コースまで切れ目なく育成する仕組みが必要。特に“子どもを入口に大人へ波及させる”教育アプローチは効果が大きい」と述べ、多段階の人材育成モデルの必要性を示しました。 |
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左:モデレーターを務めた大隈裕文氏 左から2人目:竹中工務店 五十嵐信哉氏 右から2人目:内閣府政策統括官付アドバイザー・山田剛士氏 右:山梨県富士山科学研究所 吉本充宏研究部長 |
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BCPとレジリエンス強化に向けた産業化と国際展開 |
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五十嵐専任部長は、「企業の関心は高い一方で、設備稼働の継続性や復旧判断の基準など“運用のリアル”は依然として課題。研修や情報交換を通じ、標準的な対策を産業として広げていく必要がある」と述べました。 |
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また、山田アドバイザーは、「事前防災と産業化を両輪として支援し、日本発の技術の国際展開にも道を開きたい」と述べ、特に継続的な情報交換ネットワークを運用していくことの重要性を示しました。 |
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継続実証と横展開を見据えた“場”づくり |
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セッションの最後に、モデレーター・大隈裕文氏が、「今後、継続的な実証の場を確保しながら、成果を他地域へ横展開し、企業・研究・行政の間で可視化と合意形成の仕組みを整えることが不可欠だ。今回の報告会自体がすでに“対話と実装のハブ”として機能し始めている」と総括しました。 |
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モデレーターを務めた大隈裕文氏(左) |
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■ 総括 |
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火山防災イノベーションピッチコンテスト成果報告会では、各ピッチコンテスト通過者の発表にあわせ、事業者とともに富士山科学研究所の研究員がステージに立ち、技術的補足や実証の意義を共有していたことが非常に印象的でした。研究者のみでも、企業のみでも解決が難しい火山防災の課題に対し、両者が一体となって取り組むことで、富士山科学研究所が有する高度な専門性と事業者の技術力・アイデアが結びつき、新たな可能性を創出する官民連携の姿が明確に示された報告会となりました。 |
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続くトークセッションでは、火山防災産業の将来を支える鍵は「人材育成」であることが改めて確認され、学齢期からの教育や、企業・行政・研究機関が連携した継続的な育成体系の重要性が示されました。こうした視点は、火山防災が専門領域にとどまらず、地域社会全体で取り組むべき課題であることを再認識させるものとなりました。 |
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県としては、今回のピッチコンテストを契機として、民間事業者との共創を一層推進し、火山防災分野における新たな産業の創出と人材育成に取り組むトップランナーとして、富士山火山防災対策を着実に前進させてまいります。 |
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