取引先から理不尽な要求を受けた人の93%が、自らも別の取引先に強い要求をしていた
カスハラの被害を受けた人が、気づかないうちに加害者になっている--。
リスクコミュニケーションの専門機関である一般社団法人日本リスクコミュニケーション協会(所在地:東京都港区、代表理事:大杉春子、略称:RCIJ)が企業間取引(B2B)の現場で働くビジネスパーソン407名を対象に行った調査で、「連鎖構造」が明らかになりました。
一方、被害経験がない人の加害率は40.8%。この50ポイント以上の差が、B2Bカスハラの「連鎖性」を示唆しています。
 
※B2Bカスハラとは:本調査では、企業間取引において、契約範囲を超える要求、極端な短納期要求、威圧的・侮辱的言動、過度な値引き・無償対応の要請、など、取引関係の力関係を背景にした理不尽な要求行為を「B2Bカスハラ」と定義しています。
調査結果サマリ―
本調査から、以下の5つの特徴が明らかになりました。
1| 被害と加害の連鎖
被害経験者の93%が加害経験あり。非被害者の2倍以上の差。
 
2| 基準の麻痺
受けた行為をそのまま別の取引先に行う「感覚のズレ」が多数確認。
 
3|加害の実態
「過度な値引き要求」・「短納期」・「威圧的言動」が三大カスハラ行為。
 
4| 40代に集中
中間管理職層が加害経験最多。「組織の板挟み」が背景に。
 
5|法規制への諦め
「法律だけでは根本解決しない」と答えた人が全体の77.4%。50代では実に81%が法律に期待しないと回答。
 
調査結果
1| 【被害と加害の連鎖】
 被害経験者の93.1%が自らも強い要求、非被害経験者と比べ2倍以上の差   
  
B2Bカスハラ被害経験の有無×自身の理不尽な要求の加害経験割合

取引先から理不尽な要求(B2Bカスハラ)を受けた経験がある人のうち、「93.1%」が自らも取引先に対して強い要求(加害)をした経験があると回答しました。
一方で、被害経験がない人の加害率は40.8%にとどまっており、この結果から、B2Bカスハラは、被害が別の取引先への要求として伝播する「連鎖構造」を持つ可能性が示唆されました。
 
2|【基準の麻痺】
   受けたカスハラ行為を別の取引先にしてしまう同種加害の傾向
自身が受けた理不尽な要求を、別の取引先にも行ってしまった経験の割合
「B2Bカスハラの被害経験と加害経験の関連を分析した結果、自身が受けた被害と同じ行為を別の取引先に行う『同種加害』の傾向が顕著に確認されました。
 
特に以下の行為で強い連鎖性が見られます。
 ・威圧的・侮辱的言動: 被害者の49.2%が、加害も経験
 ・極端な短納期要求: 被害者の45.6%が、加害も経験
 ・過度な値引き: 被害者の44.6%が、加害も経験
 ・契約外の追加作業: 被害者の39.0%が、加害も経験
 
これらの結果は、自身が受けた不当な要求が『ビジネスにおける正当な基準』として内面化されている可能性を示唆しています。
 
3|【加害の実態】
   30代・40代に多い「短納期要求」と「コスト転嫁」
取引先に行った理不尽な要求件数と年代別の加害割合
 
取引先に対して行ってしまった理不尽な要求の内容は、全世代では、「威圧的・侮辱的言動」が最も多く回答されました。
年代別に見ると、特に30代で、「過度な値引き/無償対応の要請」40代では「極端な短納期要求」が他の年代と比べてその割合が突出しています。
 
4|【加害理由】
  カスハラ基準が麻痺してしまう40代中間管理職
  加害の理由は「組織の板挟み」
では、なぜ彼らは取引先に強い要求をしてしまうのでしょうか。
加害の理由を年代別に分析したところ、要求経験がもっとも多い40代では
 ・上司・会社からのプレッシャー
 ・自社利益・納期確保
が突出していました。
取引先に理不尽な要求をしてしまった理由(年代別)複数回答
これは、組織目標のプレッシャーが取引先への要求として転嫁される構造を示している可能性があります。
 
5|【法規制への諦め】
  20代では25%以上が法改正で状況改善に期待
  一方で現場を知る50代は「法律では変わらない」と諦めが8割越え
法制化でB2Bカスハラはなくなると思うか(年代別)(n=207)
「近年の法制化でB2Bカスハラはなくなると思うか?」と尋ねたところ、
全体の77.4%が「法律だけではなくならない/根本解決しない」と回答しました。
さらに年代別に見ると、経験の浅い20代(73.9%)に比べ、現場の力関係を知り尽くした50代は「81.0%」が諦めを感じており、世代が上がるほど法制化の効果に期待していない実態が浮き彫りになりました。
法律の枠組みだけでは、企業間の力関係や目標達成へのプレッシャーという根本原因は解消できないという、現場のリアルな声が示されています。
 
■ 専門家の提言(一般社団法人日本リスクコミュニケーション協会 代表理事 大杉春子)
今回の調査結果が示すのは、B2Bカスハラは「悪い人」が引き起こすものではないということです。
普通に働いているビジネスパーソンが、組織の重圧に押されるうちに、気づかないまま加害者になっていく--これは個人の資質や感情の問題ではなく、組織全体が抱える「構造的な病理」です。
過剰な要求が「ビジネスでは当たり前」として刷り込まれ、連鎖していくメカニズムが働いている以上、2026年の法制化に向けて企業がすべきことは、単にルールを作ることではありません。
大切なのは、上司と部下の間で、そして取引先との間で、「無理なものは無理」と健全に言える心理的安全性を育てること。そして、関係性を壊さずに問題を解決できる「正しいリスクコミュニケーション体制」を構築することです。
この調査が、職場と取引関係をより健全にするための第一歩になれば幸いです。
【調査概要】
■ 調査概要
・調査名:「B2B取引における理不尽な要求(カスハラ)に関する実態調査」
・調査対象:法人営業・企画など対企業取引業務に携わるビジネスパーソン
・有効回答数:407名
・調査期間:2026年3月 調査主体:一般社団法人日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)
 
■ 「2026年度版 カスタマーハラスメント対応ガイドライン」を無料公開中
RCIJでは「2026年度版 カスタマーハラスメント対応ガイドライン」を無料で公開しています。
多くの企業が直面している「策定の指針不足」や「参照モデルの欠如」といった課題を解消するため、最新の国際基準(ISO 45003/ILO条約)を参考に、法的防衛策と統合した実務マニュアルとなっています。
●詳細・申込はこちら
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000061037.html
※ダウンロード無料。個人情報の取り扱いはRCIJプライバシーポリシーに準拠します。
■ 無料オンラインセミナー「カスハラの現場で活かす心理学」開催
本調査でも浮き彫りになった「なぜカスハラは連鎖するのか」「組織としてどう対応すべきか」という問題。今回RCIJでは、社会心理学の第一人者である関西大学の池内裕美教授を迎え、無料オンラインセミナーを開催いたします。
・タイトル:『カスハラの現場で活かす心理学 ~効果的な対応と組織体制づくりに向けて~』
・日時:2026年3月13日(金)16:00~17:00  @zoom
・登壇者:関西大学 社会学部教授(社会心理学) 池内 裕美 氏
・モデレーター:久井直人(RCIJ理事)
●申込はこちら
https://us06web.zoom.us/webinar/register/WN_NwVDcU_OQ1K1aNu7RQq3_g
 
日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)について
RCIJは日本において唯一、コミュニケーション戦略(戦略広報)におけるリスク管理に特化したカリキュラムを展開している専門機関です。各業界の第一線で活躍する専門家が結集し、リスク管理から危機管理広報まで包括的に網羅したプログラムを提供しています。
設立:2020年7月6日
事業内容:リスクコミュニケーション技能認定講座の提供、セミナー開催等
代表理事:大杉春子
▶協会公式HP:https://www.rcij.org/about
▶資格講座URL:https://www.rcij.org/qualify
▶協会Xアカウント:https://x.com/rcijofficial
▶世間で話題になった炎上案件をプロの目線でわかりやすく解説!週1回10分でRCを学ぶ音声番組
「RCIJPODCAST『炎上の正解』」:spotify / Amazonpodcast / Youtubeにて配信中