千葉大学予防医学センターの中込敦士准教授らの研究チームは、対話型の「AIコンパニオン(注1)」の利用と、人々の主観的ウェルビーイング(注2)(人生満足度、幸福感、人生の目的、人生の意義)との関連を、日本全国のインターネットを利用している成人を対象とした大規模インターネット調査データで分析しました。その結果、AIコンパニオンの利用者は、全体として人生満足度、幸福感、人生の目的がわずかに高いことが示されました。一方で、要約・検索など“タスク目的”中心の一般的な生成AI(注3)(非AIコンパニオン)の利用は、主観的ウェルビーイングとの明確な関連がみられませんでした。
 さらに重要な点として、AIコンパニオンと主観的ウェルビーイングの「関連の強さ」は一様ではなく、孤独感が高い人ほど強いこと、そして友人とのつながりが中程度の人で関連が最も強い可能性が示されました。
 本研究は、AIが作業の効率化だけでなく、感情面・心理社会面の支え(デジタルな心理社会的支援)になり得る一方で、恩恵を受けやすい人・受けにくい人がいることを、全国規模データから示唆するものです。
 本研究成果は2026年1月7日(日本時間)に国際学術誌Technology in Societyに掲載されました。
 
■研究の背景
 生成AIは、文章作成、情報検索、学習支援、業務効率化など、日常生活や仕事を大きく変える可能性を持つ技術として急速に普及しています。一方で、近年は友達・相談相手として継続的に対話することを目的としたAIコンパニオンアプリも広がっています。しかし、こうしたAIコンパニオンが人の主観的ウェルビーイングにどのように関係するのか、また、どのような人により強い関連が現れるのかは十分に明らかになっていませんでした。
 そこで本研究では、AIコンパニオン利用と主観的ウェルビーイングの関連を検討するとともに、社会的つながり(家族・友人)や孤独感(注4)によって、その関連がどのように変化するか(効果の“出やすさ”が異なるか)を検証しました。
 
■研究の成果
 本研究は、2025年1月に実施された全国インターネット調査に参加した日本全国の成人(18歳~79歳、女性48.0%)14,721人のデータを用いて解析しました。対象者の内訳は、AIを利用していない人が11,502人(平均53.5歳、女性52.4%)、検索・要約など「実用目的」のAI利用者(非AIコンパニオン)が2,928人(平均46.3歳、女性32.1%)、会話や情緒的サポートを目的とする「AIコンパニオン」利用者が291人(平均41.3歳、女性33.0%)でした。
 解析の結果、AIコンパニオン利用者は非利用者と比べて、0~10点尺度で測定した主観的ウェルビーイングのうち、人生の満足度(0.28点, 95%信頼区間(注5)0.003-0.56, p=0.047(注6))、幸福感(0.28点, 95%信頼区間0.01-0.55, p=0.04)、人生の目的(0.46点, 95%信頼区間 0.17-0.75, p=0.002)が有意に高いことが分かりました。一方で、検索・要約などの「実用目的」を中心とする非AIコンパニオン利用では、いずれも統計学的に有意な関連は認められませんでした。
 さらに、「誰がAIコンパニオンのメリットを享受しやすいか」を検討したところ、効果の現れ方には個人差があることが示されました。まず孤独感が強い層ほど、AIコンパニオン利用と人生満足度、幸福感、人生の目的、人生の意義との正の関連がより強くなりやすい傾向が確認されました。これはAIコンパニオンが、孤独感を抱える人にとって「話し相手」や「情緒的サポート」として機能し、心理的な支えとなり得る可能性を示唆します。
 また友人とのつながりでは、AIコンパニオンと主観的ウェルビーイングとの関連が「友人関係が中程度」の人で最も強く現れ、非常に低い人・非常に高い人では弱まるという、おおむね逆U字型のパターンが示されました。友人とのつながりがある程度はあるが満たされていない層で、AIコンパニオンが補助的な支えとしてウェルビーイングを高める可能性があります。
 一方で、家族とのつながりの強弱では、AIコンパニオンと主観的ウェルビーイングとの関連に大きな変化は見られませんでした。
 以上より、AIコンパニオンは単なる利便性ツールにとどまらず、特に孤独感が高い人や友人関係が中程度の人において、感情面・心理社会面の支え(デジタルな心理社会的支援)となる可能性が示唆されました。ただし、本研究では以下の点は明らかになっておらず、今後の研究で検討する必要があります。
・  本研究は横断研究であり、因果関係については明らかにできません。
・  「AIコンパニオン」をアプリ利用で定義しており、一般的な生成AIを相談相手として使っているケース等は取りこぼし(誤分類)の可能性があります。
・  アプリ毎に効果の違いが予想されますが、本研究では区別できておりません。
・  AIコンパニオン利用者(291人)が相対的に少なく、特に交互作用(誰に効くか)の推定は不確実性が残ります。
 
■今後の展望
 本研究は、AIコンパニオンが特に孤独感に悩む人々や、対人関係が低すぎず高すぎない中程度の人にとって、ウェルビーイングを高める有効な手段となり得ることを示しました。
 今後は、AIとの過度な交流が現実の人間関係を損なわないような適切な設計指針の検討や、長期間の利用が心身にどのような影響を及ぼすのかを検証する縦断的な研究が求められます。デジタル技術を活用したメンタルヘルス支援や、孤独対策の新たな選択肢として、適切なAI活用社会の実現が期待されます。
 
■用語解説
注1)    AIコンパニオン:対話を通じて、友情・相談・情緒的サポートなど“関係性”を目的に設計された対話型AI(例:Replika、Character.AI、Anima AI、Cotomo など)。
注2)    ウェルビーイング:身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを指す。本研究では主観的ウェルビーイングである「人生の満足度」「幸福感」「人生の目的」「人生の意義」を評価した。
注3)    生成AI:文章、画像、音声などを自動生成する人工知能技術。ChatGPT や Microsoft Copilot、Google Gemini などが代表例。
注4)    社会的つながりと孤独感:社会的つながりとは、家族や友人とどれくらい関係があるかを表す概念で、連絡を取る人数や頻度、困ったときに頼れる相手がいるかといった「関係の量や構造」に近いもの。これに対して孤独感は、つながりが足りない、理解されていない、ひとりだと感じるといった「本人の主観的な感情」を指す。
注5)    95%信頼区間(95%CI):推定結果(効果の大きさ)が「この範囲にありそう」という幅。幅が狭いほど推定が安定、広いほど不確かさが大きい。
注6)    p値(p):「本当は差がない」と仮定したときに、今回の結果が偶然起きる確率。例えば、対話型AIコンパニオンを利用している人と利用していない人の間に主観的ウェルビーイングの差がないと仮定した場合に、今回観察された程度の差が偶然によって生じる確率を意味する。一般に p<0.05 だと「偶然とは考えにくい」と判断する目安。
 
■研究プロジェクトについて
 本研究は、全国規模のインターネット調査データJACSIS(The Japan COVID-19 and Society Internet Survey)、日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題および社会全般に関する健康格差評価研究)、及びそのサブスタディであるCONNECT Study (Community Networks and Nexus to Enhance Thriving Study)を用いて実施され、デジタル社会における健康・社会格差の解明を目的とした研究の一環として行われました。
 
■論文情報
タイトル:AI Companions and Subjective Well-Being: Moderation by Social Connectedness and Loneliness
著者:Atsushi Nakagomi, Yasuko Akutsu, Mika Yasuoka Jensen, Noriyuki Abe, Shiichi Ihara, Taisuke Teroh, Takahiro Tabuchi
雑誌:Technology in Society
DOI:10.1016/j.techsoc.2026.103229